編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

不都合な事実

 東京電力と原発に関して今週号は二つのテーマが掲載された。一つは福島第一原発事故に由来すると考えられる甲状腺がんの問題。もう一つは、東電の姿勢を厳しく批判してきた泉田裕彦新潟県知事と『新潟日報』をめぐる騒動だ。

 詳しくは今週号をお読みいただきたいが、いずれも不都合な事実を隠蔽したい大きな力を感じる。一方で大震災から5年以上が経ち、過酷な原発や震災に対して内省する初心も緩んでいまいか。

 さて、先週末は津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市を日帰りし、「明日の石巻を考える会」が主催する会に参加した。これは市の裏側を暴露する『病める「海のまち」闇』の出版記念集会で、著者の高須基仁氏と相澤雄一郎・『河北新報』元編集局長らと3人で登壇し、石巻市の政治状況を中心に議論をした。参加住民からは、復旧・復興事業をめぐる官製談合や市長と有力者の癒着を痛烈に指摘する声も出た。隠そうとする側の事実を掘り起こし、足元で何が起きているのかを伝える難しさをあらためて痛感した。