編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

「働き方改革」と犠牲者

「うそあべあそう、うそあべあそう」。秘伝の回文(!)を思わず口にする。

 愛媛県が参院予算委員会に出してきた記録で、安倍晋三首相の衆院予算委員会での答弁に虚偽の疑いが出てきた。嘘で嘘を塗り固めても、いつかボロが出てくる。といっても麻生太郎財務大臣の「セクハラ罪はない」に象徴されるように違法行為と認定されなければ責任回避をする方々だ。過去の成功体験から、印象操作で逃げ切れると踏んでいるのだろう。

 愛媛県の中村時広知事、よくは存じませんが、ふつうの良心と公正な感覚をもっていれば、ここは争うところだろう。野党には国会の場で安倍首相を詰めてもらいたい。

 今週号の政治コラムでは、佐藤甲一さんが野党にエールをこめて批判を展開。的確だ。

 政府は姑息に「働き方改革」を進めてる場合じゃない。自民と公明、維新、希望が修正で大筋合意という。データの嘘がボロボロ出ているにもかかわらず。こちらはいのちと安全に関わる話だ。これ以上犠牲者を出してどうする?

安倍外交の結末

 地球30・21周にあたる「地球儀を俯瞰する」安倍外交が世界の平和と繁栄に貢献したかどうか、いよいよ結果があらわになりつつある。ついでに“国益”の追求が実現しているかどうかも。

 首相官邸HPの「訪問先マップ」の勇ましさといったら、驚くばかりだ。ときどき地球を取り巻く宇宙の星がキラリと瞬いたり。ここにはないが、GW中にイスラエルを訪れ、ネタニヤフ首相と靴の形をした容器に入ったチョコレートデザートをいただく安倍夫妻の姿に唖然。靴のデザートもさることながら、よりによってこの時期に、イスラエル? 米国のイラン核合意離脱は南北緊張緩和への努力に水を差した。

 おまけに米国は、「日本を含めたアジア、欧州、中東の同盟国など」に対イラン制裁強化への同調を呼びかけたというではないか。「こんどこそ日本は米国・イスラエルとイランの戦争に巻き込まれる」と元外交官の天木直人氏は心配する。「××な大将、敵より怖い」。このフレーズを頻発してしまう。

問われているのは

 今週号が出るころには、中韓日の首脳会談も終わっている。事態は刻々と変化しているうえに、黄金週間の休みもあって、正直、誌面を組むのが難しい時期だった。だが、物事の本質は変わらない。

 安倍首相が圧力一辺倒で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係改善のため、ほとんどなんの方策も講じてこなかったということ。そして何よりも、近隣アジア諸国との関係を軽んじ、対米関係を最優先してきたこと。安倍外交失敗のツケを払う時期が来たということだ。

 李克強首相の来日前に習近平国家主席と安倍首相は初の電話会談を行なった。「まさに日中関係の改善が進んでいるということ」という首相官邸HPのコメントを見てのけぞった。中国や北朝鮮に対する国内感情をとことん悪化させ、それを自らの政策の追い風としてきた安倍首相、関係改善を志向しているわけがない。成り行きでしょうが。もちろん結果がよければそれでいい。だが、問われているのは戦争回避への意思、その一点ではないか。