編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

シン・ゴジラ

 ここから先はネタバレするので、『シン・ゴジラ』をまだ観ていない人は読まないほうがよいかも。

『シン・ゴジラ』を観て、「福島第一原発観光地化計画」を思い出した。この映画は原発事故を描いている。これはわかりやすい。ゴジラはイチエフでもある。そしてイチエフ=ゴジラとぼくたちは、理不尽だが一緒に未来を生きることになる。

「観光地化計画」は、福島を避けず忘れずというダークツーリズムのアイディアだった。だが『シン・ゴジラ』ではエンタメの力を借り、2時間の「旅」により事故と放射能の苛酷さを思い出させる。事故の経験は映画に触れるものに刻まれる。映画を観なくともゴジラゆえ拡散情報が勝手にあふれてもいる。

 誇大表現をすれば今年、核は8月の、福島原発は3月限定の季語ではなくなった。時代時代の社会問題を取り入れるのは、ドラマの素直な作り方だ。監督らにどこまで問題意識があるのかは知らないが、破壊シーンの特撮は東京都現代美術館で観た「巨神兵 東京に現わる」を思い出した。