編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

読者会に思う

 今号の「読者会から」欄でも報告されているが、2月25日に開催された北大阪読者会with youの定例会に、社長兼発行人の植村隆とともに参加してきた。阪急京都線茨木市駅のすぐ近くが会場だ。この日は8人のメンバーが参加した。私が参加するということで、前半はメンバーから寄せられた質問に私が答える形で進んだ。質問は事前に寄せられていたので、答えはあらかじめ作っていったが、私の答えに対してさらに質問がきたりして、活気ある議論が展開できた。後半はいつものように、参加者全員が直近の数冊で感じたことなどを語り合った。本来ならこちらに多くの時間を割くのだろうが、この日は私や発行人がしゃべり過ぎたため、少し時間が足りなかったかもしれない。

 読者会に参加するといつも感じることだが、みなさん、本当に本誌のことを真剣に考えてくださっている。時には厳しい言葉もあるが、元気づけられる。何より直接会って話すのがいい。「読者会から」欄を読むと、いろんな顔が浮かんでくる。(文聖姫)

女子サッカー北朝鮮戦観戦記

 2月28日に東京・代々木の国立競技場で行なわれたサッカーの試合を見に行った。パリ五輪女子サッカーアジア最終予選、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)対日本の第2戦だ。24日にサウジアラビアで行なわれた第1戦はドローだったので、この日の試合で勝った方が出場権を獲得できる。私は北朝鮮の応援席に座った。チームカラーの赤のTシャツやトレーナー、セーターを着た人たちとともに「イギョラ(勝て)!」と書かれたビニール製の応援棒を叩きながら、声援を送った。

 試合は2対1で日本が勝利したが、互角の戦いだった。贔屓目ではなく、北朝鮮の方が実力的には勝っていたと思う。チャンスを着実にものにした日本に勝利の女神が微笑んだ。いい試合を見させてくれた両チームの選手たちに拍手を送りたい。よかったのは、試合結果を伝えるニュースに北朝鮮チームにも好意的なコメントが多く寄せられていたことだ。スポーツは時に政治を動かす。冷え切った日朝関係の雪解けのきっかけになればうれしい。(文聖姫)

「日本語わかりますか」

 先々週末、ガザで医療支援を続ける医師の猫塚義夫さんにインタビューするため、札幌に行った際の話。ホテルでチェックインしようとしたら、パスポートを見せてほしいという。私は、特別永住者なのでパスポートは持ち歩いていないと言ったら、じゃあ在留カードを見せてくれ、と。で、特別永住者証明書を見せた。さらに、ホテルの設備を説明された時の“とどめの一言”。「日本語わかりますか」

 親切心かもしれないが、「ああ、またか」というある種、あきらめムードになった。こんな思いをするのは、子どもの頃から数えて何度目だろう。敗戦後から数えると、在日コリアンは80年近く存在し続けているのに、いまだに知らない人がいる。名前をみて、「中国人? 韓国人?」と聞いてくる人も。韓国人と答えると「日本語お上手ですね」。これも定番の反応だ。「私は在日コリアン2世で、日本で生まれ育ったから、むしろ日本語の方が得意なんです」という説明もこれまた定番。だから何だと言われれば、それまでなんだが。(文聖姫)

ウクライナ侵攻2年

 ロシアがウクライナに侵攻してから明日で2年が経つ。今号では「終わりの見えないウクライナ戦争」を特集した。筆者の一人、丸山美和さんはポーランド在住の大学教員でジャーナリスト。先日、一時帰国中の丸山さんが弊社を訪ねてきた。彼女が持参したたくさんのおみやげの中には珈琲豆もあった。この豆には深い意味がある。ウクライナ南部黒海沿岸の都市ミコライフ在住の女性が、輸入した豆を自宅で焙煎しネットで販売しているのだという。「ミコライフはかなり危険な地域」と丸山さん。それでも彼女の夢は自分のカフェを持つことだという。ゆったりした気分で珈琲を飲めることの幸せを噛みしめた。

 特集のもう一人の筆者、『朝日新聞』論説委員の駒木明義さんも指摘するとおり、停戦の見通しは立たない。国外に逃れた人々も少なくないが、国に残って戦う兵士だけでなく、戦禍の中で日常生活を送る人々も大勢いる。でも、その日常生活は私などが決して想像できない、常に危険と隣り合わせのものだ。(文聖姫)

魔の2月

 今週は年に数回ある魔の週。校了日が月曜日と金曜日の二度あったからだ。

 普段の校了日は月曜日だけだが、11日(月曜日)が休日なので、2月16日号の校了日が前倒しされて、9日(金曜日)となったわけだ。さらに、来週も金曜日が校了日となる。23日(金曜日)が休日なので、23日号の校了日が、これまた前倒しされて16日(金曜日)になった。というわけで、この「編集長後記」も今週は2回書いた。ちなみにこの原稿を書いている今日は2月9日だ。

 読者のみなさんにとってはなんのことやら、と思われるだろうが、まぁ、とにかくしっちゃかめっちゃかな日々が続いたと思っていただければ。この号がみなさんのお手元に届く頃には、だいぶ落ち着いているはずだ。

 ということで、まだ2月が20日も残っているのに、もう月末の号を作っている。ついこの前、新年を迎えたと思ったのに、あっという間だ。なんだか慌ただしい2月も過ぎれば3月。春ももうそこまで来ている。(文聖姫)

和歌山読者会

 2月3日、和歌山に読者会が発足した。発行人・社長の植村隆と共に、第1回の会に参加した。驚いた。なんと参加者は県外の人と私たち2人を含め29人。編集長になってから、できるだけ各地の読者会にお邪魔するようにしているが、これまで参加した中では最高の人数だ。

 会やその後の懇親会で、たくさんの人と話した。本誌への期待をひしひしと感じた。課題となる話も聞いた。ある方は、「ちょっと難しい。もう少しわかりやすく」。「一つのテーマをもっと深掘りしてほしい」という意見もいただいた。どちらも実践していかなければならない。わかりやすい内容で、かつ一つの問題を深掘りすること。

「いつも本誌の読者会欄を読みながら、和歌山にもできたらええなーと思っていたから、とてもうれしかった」という元教員の方もいた。いろいろと大変なことも多い毎日だが、読者から力をもらった。『週刊金曜日』がみなさんをつなげる一つのツールになってくれれば、こんなにうれしいことはない。(文聖姫)

復興支援

 あっという間に2月だ。今年は元日に能登半島地震が起き、1月2日には被災地に向かうため羽田空港の滑走路で待機していた海上保安庁の飛行機と日航機が衝突する事故が起きた。お祝いの雰囲気は完全に吹っ飛んだ。能登半島ではいまだに安否不明者がおり、テレビ画面では倒壊したままの家屋が映し出される。被災している方々の大変さを、私はメディアを通してしか知ることができない。少しでも助けになればと、ささやかながら寄付をした。

 一方で、前に向かって進もうとする人々の姿に感動を覚える。あるテレビ番組で、被災地の現場をルポしていた。寒ブリ漁が最盛期ということだが、金沢経由で全国に発送されるという。家族と離れて被災地に残るカキの養殖業を営む若い男性、復興に少しでも役立てればと、やはり家族と離れて被災地に残る大工……。能登産の食材を購入したり、こういう時だからこそぜひ金沢の旅行を楽しんでほしい、それが復興支援につながる、というリポーターの言葉が心に響いた。(文聖姫)

ラジオに出たい

 本欄でもお伝えしたとおり、1月18日にFMクマガヤの番組「Dr.ゴールドのキラキラ元氣の処方箋」にゲストとして出演した。『週刊金曜日』について1時間たっぷり話してきた。楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまった感じだ。

 パーソナリティーの根岸智子さんがうまくリードしてくださったおかげで、本誌の成り立ちから内容、編集委員制度や読者会、サポーターズ制度などについて、リラックスして話すことができた。Dr.ゴールドこと、ゆうあい内科・脳神経クリニックの金三雄院長も隣で付け足してくださったこともあって、リスナーの方々に本誌のことを知っていただけるよい機会になったと思う。お二人をはじめFMクマガヤのみなさんに感謝。

 番組の後半では、リスナーの方々から感想や質問などがメールで続々届いた。リスナーのみなさんと直接つながれているようで、うれしかった。

 またどこかのラジオ番組に出られるといいな~と、密かに野望をめぐらしている(笑)。(文聖姫)

福田玲三さん

 年末の12月22日、東京南部読者会に参加しました。会のメンバー、福田玲三さんが100歳を迎えたので、懇親会が開かれたのです。読者会メンバーらによる福田さんへの質疑応答という形式で進みましたが、記憶力もすごく、理路整然とした受け答えに感嘆しました。私には『週刊金曜日』への注文も。本誌12月22日・1月5日合併号の金時鐘さんインタビューのタイトルに「約600万人が虐殺されたユダヤ人の国が、なぜあれほどむごいことができるのでしょう」とあるのに、「その回答がない」。羊頭狗肉だというわけです。確かにそうです。反省しました。

 福田さんはウォーキング用ポールを持ちながらですが、階段の上り下りも御自身でされていました。近くの中国料理店で開かれた2次会にも参加。本誌編集委員と松元ヒロさん、発行人、編集長らが書いた「おめでとう色紙」が手渡されました。

 長生きの秘訣は「歩くこと」。夜もよく眠れるし、ごはんもおいしいそうです。見習わねば。(文聖姫)

新しい年に思う

 元日ののどかな雰囲気を一変させてしまった能登半島地震。5日現在、石川県でなくなった方は92人にのぼる。謹んでお悔やみ申し上げる。突然家族を失った悲しみはいかばかりか。5日午前の段階で、石川県の安否不明者は242人にのぼるとされる。日ごとに被害が増えていることに胸が痛む。また、被災された方々にお見舞い申し上げる。今後寒さも増すなか、避難生活が長引くと、疲れも増していくだろう。被災者のためにできることをしたい。

 こんな時に万博などやっている場合なのか。即刻中止すべきだろう。そんなお金があるなら、まずは被災地の復興に使うべきだ。自民党の裏金問題もすっかり報じられなくなった。だが、決してうやむやにしてはならない。今年も『週刊金曜日』が報じるべき問題はたくさんあると改めて感じる。

 私事ですが、1月18日(木)21~22時、FMクマガヤの「Dr.ゴールドのキラキラ元氣の処方箋」に出演します。『週刊金曜日』のことなど話す予定です。(文聖姫)