編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

文化新聞『土曜日』

 84年前の7月4日、反ファシズムの文化新聞『土曜日』が創刊された。編集兼発行名義人は、大部屋俳優の斎藤雷太郎さんだった。昨年末、ヘウレーカから出版された口伝を今週号で取りあげている。

 斎藤さんについては、「憲法寄席」の主催者で本誌読者でもある高橋省二さんからあるお芝居の台本を見せて貰ったことから関心を抱いた。「冬の蕾 斎藤雷太郎と新聞『土曜日』を生きた人々」だ。グループ演劇工房の木内稔さんが演出し、2001年には上演されている。

 近現代史研究者の井上史さんは、作品をみてはいないが、木内さんが関係者に熱心に取材されたことはご存じだった。治安維持法下でいかに人々が志を抱きながら生きていたかが鮮やかに描写されている。画質は悪いがビデオがあるそうなので、いつか見せて貰おうと思っている。

 井上さんによると斎藤雷太郎さんに取材をしたドキュメンタリーもあるという。制作者の青柳正さんを探して調査されているので報告を待ちたいと思う。

疑問にこたえる

〈元「慰安婦」を支援する“日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯”(「正義連」)の不正問題をなぜ、取りあげないのか〉という問い合わせを読者から複数いただいていた。〈自分たちに都合の悪いニュースだから扱わないのか〉とも。

 もちろんそんなことはない。5月22日号のアンテナ欄で1頁を使って第一報は載せている。ただ、韓国内での出来事でもあり、自分たちで自由に取材ができないために、慎重に事態の推移をみてきたことは事実だ。

 今週号でようやく、韓国在住の研究者、吉方べきさんの執筆記事を載せることができた。ナヌムの家の支援金問題は、提携している韓国の『時事イン』の記事を転載した。

 戦後補償に関わる問題になると、国内でお目にかかるのは首をかしげたくなる記事ばかりだ。そんな中、一連の報道に胸を痛め、事態をどう考えたらいいのか、困惑している方も多いと思う。吉方さんの記事は、その疑問に十分にこたえる内容になっていると思う。

目から鱗

「アベノマスク」受注でにわかに注目された福島市のユースビオ。その社長宅が契約当時競売中だったことがジャーナリスト・三宅勝久さんの取材で明らかになった。

 厚生労働省との巨額の契約が成立。ユースビオに入金後、競売は取り下げられたという。そもそもユースビオは「役員は社長1人。実績不明、看板も電話番号の届けもない」会社。なぜそこにタイミングよくアベノマスクの仕事が舞い込んだのだろう。謎は深まるばかりだ。詳しくは今週号のアンテナ欄をご覧下さい。

 持続化給付金事業の委託や外注事業をめぐる疑惑は、先週号に引き続いて片岡伸行さんの「追及!政権腐敗」シリーズで取りあげている。あまりにお粗末で怒りを通り越してあきれるばかりだ。なぜこんなひどいことがまかり通っていたのか、今週号、佐々木実さんの「経済私考」を読むと理解できる。また、公的サービスを「民」に委ねることについてずっと言われ続けてきたこと、ある通念に、佐々木さんは疑問をはさむ。”目から鱗”だった。

編集部へのエール

 一時期、都内でも朝夕の空気が新鮮に感じられたが、人混みや往来が戻るにつれ、そういった感覚もなくなりつつある。

 だが、行き帰り、自転車通勤の人を以前より多く見かけるようになった。区で貸し出す自転車を利用する人も多い。この動きは一時的なもの? それとも定着するのか、私には想像もつかない。

 コロナ禍で各地にある金曜日の読者会も開催がままならない。だが、可能な形で継続されている会もある。週刊金曜日を応援する会・神奈川の厳しい5月15号への感想、北多摩(東京20区)読者会の変革の意欲に満ちたアピール文(5月22日号に抜粋を掲載)などなど、部内でも問題意識を共有させてもらっている。

 6月4日には、オンラインでの読者会に参加させてもらった。室蘭、東京から東濃へ!、関門・北九州など各読者会の方と繋がった。みなさん各地で現場を持って活動されていて話題が尽きない。読者に阿ることなく「正々堂々と」──編集部へのエールとしてしかと受けとめたい。

時間をかけて

 ピカピカの小学1年生と保護者が何組も手をつないで向こうから歩いてくる。そうか、きょうは入学式。小雨の降る中、校門前では先生が待機し、児童らが間隔をおいて入場できるように取り計らっていた。

 学校が再開すればしたで、コロナウイルスの感染回避のために毎日の生活で気をつけなければいけないことがあってたいへんだ。第2波、第3波の心配もある。

 東京都立高校の場合、夏休みと冬休みが極端に短くなるようだ。それもどうかな、と思う。かりに栄養が不足している期間があったからといって、いきなり多量の栄養を与えられても摂取できるものではない。勉強も同じだ。

 コロナ禍でストレスもたまっているだろうし、不安もある。無理は禁物だ。短期間で解消するのではなく、時間をかけて通常生活にもどれるといい。

「9月入学」をこの機会に、という話もあるが、無理がある。政治家のポイント稼ぎのために現場が犠牲になるのは言語道断と思っていたら「来年度導入断念」。よかった。

許しませんぞ

 緊急事態宣言が解除された東京。わが町で一番人気のイタリア料理店の前に、工事の車が横付けされていた。角材が運び込まれている。宣言が出る少し前から休業を余儀なくされていた。改装開店をめざすのか、それとも……。

 並びにはコロナ禍の直前に閉店した和食屋。入り口には閉店を告げる紙が貼られたまま。そこから100メートル離れたカフェは今日から再開。ピカピカに磨かれたガラスに光が反射してまぶしい

 賑わいが戻ってきたのは嬉しい。だが、東京五輪の延期合意の3月24日まで、小池百合子都知事が感染拡大阻止にむけて何をやったのか、やっていないのか、覚えておきたい。

 一方、独自の休業再要請指標「大阪モデル」をつくり人気をあげた吉村洋文大阪府知事。だが、ここにきて山中伸弥京都大学教授に、基準を政治的に緩めたと批判を受けた。何より大切なのは事実の把握のはず。権力者が都合で歪めるなんて、許しませんぞ(あっちもこっちも、もう)。

歴史に残る珍答弁

 もりまさこ歌
「専制、専制、それは専制」
#週明けの強行採決に反対します(buuさん)。

 こういうツイートが検察庁法改正案の今国会での採決見送りを引き出したとすれば感慨深いものがある(ただ廃案ではないから安心は禁物!)。

「逃げた」発言に象徴される森雅子法務大臣のこの間の迷走ぶりはすごかった。私は死刑制度に反対の立場だが、法相といえば死刑執行の命令を下す立場にある。

 その人間が「口頭決裁した。口頭でも正式な決裁だ」と発言したというのはいまだ信じがたい。「日本政治史上に残すべき珍答弁」(三宅勝久氏、本誌13頁)に違いない(どれほど追い込まれたか!)。

 だが、その森法相の答弁よりも、法案批判をした俳優の小泉今日子さんのツイートへの批判のほうが、世間的には激しかったように思う(所詮そういうもの?訳わからん)。

 最後に一言付け加えると、“ド昭和”の替え歌なら、本号で刷新した投書欄も負けてない。密かなブームのようだ(by担当部員)。

怒りの可視化

 いよいよ市民の怒りが可視化されてきたということか。

「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートが、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさん(後に削除)、俳優の浅野忠信さんらも巻き込んで世界トレンド入り。しかも途中で意味不明のツイート数減少で情報操作? との疑いも出て、火に油を注いだ。

 本誌では、官邸に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の任期延長について「政権腐敗を暴かせない究極の指揮権発動」(海渡雄一、2月14日号)とまず批判。そして今度の検察官の定年を段階的に65歳に引き上げる検察庁法改正案については、「後付けの理屈が破綻したから法律に明記して正当化しようという企み」(望月衣塑子、5月1・8日号)と喝破した。

 それにしても、日本で4月に開催予定だった国連犯罪防止刑事司法会議がコロナ感染拡大のために延期になってよかったね。法務省は「日本における法の支配の浸透」などを「国内外にアピール」する場としているからだ。一連の事態、どう説明する?

安倍首相にこそ

「赤ペンのインクがなくなった」。でも、角の文房具店は閉まっているんだっけ。文庫本を求めようとしたが、一部の書店しか開いていない。いまは非常時だということを思い起こす。この生活は当分つづきそう。

 緊急事態宣言下で迎える憲法記念日。今年は憲法の大切さを特に身近に感じる日になりそうだ。メディアの使命もひしひしと感ずる。

 今週号は合併号。来週は刊行はありません。取りあげたいことはたくさんある。沖縄の普天間基地から発がん性が疑われる有機フッ素化合物を含む泡消火剤が漏出した事件のこと、予定されていたNHK「バリバラ桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~第1部」の再放送が差し替えになったことなど。

 後者は弊誌連載陣の松崎菊也さんと石倉直樹さんも出演していて、「桜を見る会」をめぐる安倍晋三首相の説明不足をチクッとする場面には笑った。いずれの世論調査でも首相の説明に満足している人は少なかったものね。小さな声も丁寧に紹介するこの番組、安倍首相にこそみてほしい。

溜息

雨脚が強くなってきた。ここのところ、雨天と晴天が交互にやってくる。月曜日の今日はあいにくの雨。雨ガッパを着込み、自転車で会社に向かう。ちょっと気持ちがすさむなあ。私の場合、多少濡れようが、持参したタオルで拭えばいい。だけど……。

 最前線で患者の治療にあたる医療従事者のマスクも防護服も足りていないという。その防護服の代わりに「雨ガッパ送って下さい」と、どこぞの市長が呼びかけたというニュースが頭をよぎるのだ。

 この1月から政府は何をやってきたのだろう。旗色が悪くなってきたいま、市民を懐柔するための策を講じ始めたようにみえる(無論いいことはどんどんやって下さい。マイナンバー活用はなしね)。

 現在、1日の感染者が1桁台と伝えられる韓国の報告を取りあげてほしいという意見をいただいた。私も知りたい。今回の総選挙に与党が圧勝したのは、コロナ対策が効を奏したことも一因という。

 民度のことは言っても仕方ない。溜息が漏れるだけ。