編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

身近な問題から

 この週末、中央アジア出身で、日本にしばらく滞在している女性と話す機会があった。おしゃべりな彼女が特に熱をいれて話したのが、日本の女性の職場での服装規定の問題だ。

 ネットやSNSで最近話題になっている眼鏡着用禁止を知り、驚いたようだ。「ダテ眼鏡じゃないんだから。私は眼鏡がないと何もできない」と訴える。実際コンタクトレンズは条件があわないと使えない。さらにハイヒール着用を強制しているところもある。

 これは、このページ「金曜日から」で宮本が書いているように、石川優実さんが#Ku Tooで異議申し立てをし、社会問題化した。「日本は先進国で民主的な国のはずなのに、なぜ女性だけ?」。それは私も聞きたいところ。

 彼女の国でもジェンダー差別の問題があるという。「ジェンダー問題が今世界で最も重要」、と明快だ。なぜハイヒールのことがこれまで問題にされてこなかったのか、いまとなっては不思議だ。「身近な問題から勇気を出して」。賛成だ。

「一件落着」とはならない

「結果としてはよかった」
 英語民間検定試験導入延期の件である。現場は混乱の極みと想像する。子どもが通う高校ではどんな反応かきいたところ、教員は前述の意見を述べたというのでほっとした。だが、制度導入の際の議事録が非公開、さらに国語・数学の採点についても問題があるので、「一件落着」とはならない。各地の高校生が集会などで、文科大臣よりも本質を捉えた説得力のある意見を述べていたことが心強かった。

 11月1日号の記事「米国LA市警の訓練に携わる俳優が語る事件現場とメディア」について補足説明をしたい。当該の俳優が訓練で演ずる”犯人役”は、精神疾患があるという設定になっているが、精神疾患をもつ人も、健常者と同様の生活を送っており、ハンディキャップの有無にかかわらず人はだれでも犯罪を行なう可能性がある。さらにこれは訓練全体の一部にすぎず、訓練は現実をそのまま反映したものではない。編集部でそのむね注釈を付けるべきだった。みなさまにお詫び申し上げる。

忘れないために

 安倍内閣には驚かされることばかりだ。「天皇陛下万歳、万歳、万歳」の首相本人を筆頭に、「カニ、メロン、香典」の菅原一秀経産相、「身の丈」発言で格差容認の萩生田光一文科相(腹わたが煮えくりかえるじゃないか)。元閣僚で参院自民党幹事長の世耕弘成氏はツイッターへ投稿した大学教授をいきなり訴えた(こちらはしみじみ怖い)。トンデモ言動は1週間も間をおかずに発生するので、週刊誌では追いつけない(これは困る)。日本社会の劣化を考えれば驚くに値しないのかも。

 スペイン発のニュースを聞いた。国立慰霊施設に埋葬されていた独裁者フランコ総統の棺を掘り返し移送したというではないか。そこまでやるか……。いや、大事なことをいとも簡単に忘れる我々のほうが驚きの対象かも。忘れるから繰り返す。忘れないためには記録する。本誌も頑張って大事なことを伝えていく。

 お蔭さまで本誌は創刊26周年を迎えることができました。引き続きご愛読をよろしくお願いいたします。

恐ろしい

 台風19号の被害は長引きそうだ。被災された方々が暖かいところで安心して過ごせるように、一日も早い復旧・復興が待たれる。今週号で報告してくれた執筆者のなかには、支援に駆け回りながら原稿を送ってくれた方もいる。

 除染廃棄物の入ったフレコンバッグの流出と、それをめぐる行政の対応は杜撰極まりない。そもそも仮置き場に積まれたフレコンバッグが自然災害で被害を拡散することは、誰でも想像ができたこと。会見した小泉進次郎環境相には事態を打開する意思も能力も感じられない。どうする?

 先日会社にいらした方から、福島の山野に生えたキノコから何万ベクレルの値が出たことをきいたばかりだ。福島原発事故の影響は、大地に海に、いまも刻印されている。

 東電刑事訴訟の判決の酷さは、今回の特集で実感できた。福島原発事故のために救助されなかった人たちのことが、判決要旨にないという海渡雄一原告代理人の指摘にはたじろいだ。国家中枢には選別された事実しか残らないとしたら、恐ろしい。

台風19号

 台風19号は各地で猛威を振るった。亡くなられた方々にはお悔やみを申し上げ、被災された多くの方々には心からお見舞いを申し上げたい。政府は13日、漸く非常災害対策本部を設置した。人命救助を第一に最善を尽くしてほしい。今週号はアンテナで、来週号で詳しく報じたい。
 今回氾濫した千曲川と2017年3月に運用を開始した浅川ダムについて、ジャーナリストのまさのあつこさんが本誌07年3月30日号で警告を発していた。浅川と千曲川合流付近で起きる浸水被害はダム建設で防げないこと、長野五輪に先駆けて開通させる新幹線の車両基地とダム建設がバーターであったこと──。懸念された浸水は、決壊という最悪な事態により起きた。なぜ防げなかったか?
 イラストレーション、デザイン界に革新を起こし、映画監督でもあった和田誠さんの訃報が校了日ぎりぎりに届いた。『話の特集』で長年お付き合いのある矢崎泰久さんに11月8日号「話の特集番外編」で追悼していただきたいと考えています。

関西電力の闇

 関西電力幹部らによる金品授受問題の闇は深い。衆院本会議で7日、立民の枝野幸男代表が調査を求めたことに対し、安倍晋三首相は「第三者委員会での解明」で躱した。

 本誌によく企画の提案をしてくれるNさんから連絡があった。彼は原発から歴史問題まで解説する「おしえて!ゲンさん!」というサイトを開いている。そこに原発交付金の現状を伝える「原発の経済効果」をアップしたところ、閲覧者が増えているというのだ。市民の関心は高い。

 本誌では、東電刑事裁判の判決をめぐる検証も控えている。そこにこんな大きな疑惑が出て、正直頭を抱えた。だがこの問題、呆れはするが、驚かない。原発とカネは切っても切れない関係だからだ。原発を作って動かすということには構造的に不正義が必要、と思うからだ。

 ただ、死人に口なし、責任を死者に覆い被せて、関電幹部が被害者であるかのように報ずる動きも見られるが、そのような動きには与しない。巨額のカネの出所を考えれば当然だ。被害者は私たちだ。

やわらかな感性

「凄い試合!」。ラグビーワールドカップ2019日本大会の様子は編集部内でも話題になっている。

 私はラジオやネットで結果を知るだけだが、9月28日には日本チームがアイルランドに歴史的勝利を収めたという。個人的には松島幸太朗選手の活躍が気になる。安倍晋三首相によるツイッターでの祝福メッセージには引いてしまったが。

 最近『軍馬と楕円球』(中野慶=著、かもがわ出版)という小説を読んだ。高校のラグビー部員、吉沢鉄朗が主将に退部を告げる場面から始まる。そして、戦争に徴発され、数奇な運命を辿った馬の歴史を調査する話へと続く。現代の高校生の部活動と戦争というのは結びつきそうもないテーマに感じられるかもしれないが、予想外の展開と知られざる歴史的事実に好奇心を刺激され、一気に読んだ。

 若い人は私が考える以上にやわらかな感性をもって、多様な現実を生きているのかもしれない。いや、いくつになっても、自分で枠をはめずに好奇心を持ち続ければ……。

演劇大賞に明治大学

 台風15号で被災された方々は依然困難な状況にあるという。ブルーシートを留める土嚢上げなど大変な作業がつづく。安全・健康面に十分に注意したい。

 連休が続く9月も残り1週間。22日は都内で行なわれた演劇インターカレッジ、大学生演劇選手権の決勝本戦を観る機会があった。15分の制限時間を7チームがオリジナル脚本で競う。

「演劇大賞」受賞は『ひがいしゃのかい』を演じた明治大学のワラスメントボーイズ。よく練りあげられた台本、それぞれのキャラが立つ熱演で会場は爆笑の渦に。被害がヒステリックに語られる分断された社会に、最後には信頼が取り戻される展開は見事。演劇の醍醐味を味わわせて貰った。

 ただ、作品の中には、周りの若い観客が笑っているのに私はついていけないジョークも。トホホ。

 23日はコンサート・自由な風の歌14合唱団の練習に参加。今年は10月6日(日)14時、都内・杉並公会堂大ホールで開催します。崔善愛編集委員も出演されます。よろしかったどうぞ。

議論より救援

 台風15号の影響で被災された多くの皆様にお見舞いを申し上げます。東京電力の発表によるといまだ6万4800軒が停電しているという。自然災害の怖さをまたしても見せつけられた。エアコンが使えず熱中症で亡くなられた方もいた。

 守れる命を守ることに政府や自治体は全力を挙げてほしい。私どももメディアに関わる者として、被害の状況にもっと敏感であるべきだったと申し訳なく思う。

 この事態に及んでも豪雨災害への対策は迅速かつ適切だったと会見する菅義偉官房長官には唖然とするばかりだ。上西充子法政大学教授は、「豪雨」といいきっているところが、強風による被害が出た今回の台風をずらした「ご飯論法」ではないか、とツイッターで見立てを述べていらした。

 いずれにしても政府は組閣を延ばして対策にあたるべきだった。新聞の「首相動静」をみても危機感はない。安倍晋三首相が必要性を説く緊急事態条項に説得力がないことがまたしても実証されたわけだ。としてもまずは議論より救援だ。

日韓関係

「こういうズルいのがいちばん許せんさ」

 週末、実家に帰って87歳の母と会話をしていて驚いた。韓国の曺国法務大臣(その時は候補者)の子どもの有名大学への不正入学疑惑を罵る言葉を聞いたからだ。先週号の「金曜日から」で渡辺が言っていたのはこういうことだったのか、と納得。

 11時間に及ぶ記者との質疑などすっとんで、追及を逃れて逃げ回る日本の与党政治家と重ねているようにも思える。どうして韓国の一閣僚のことばかりテレビのワイドショーは騒ぎ立てるのか。消費税増税前の混乱や、日露首脳会談の“成果”を吟味することも大切だと思うのだけど。

 家に戻り、韓国のBTS、SEVENTEENらがお気に入りの高校3年の子どもに、その界隈で今回の日韓関係悪化がどう受け止められているかきいた。

「ここしばらくは韓国に行けないね、とか話が出たけど」。ふーん、静観か。ちょっと寂しいけど。あ、でも受験が待ってる君たちが行けるわけないよね、とイヤミが口をついて出そうになるのを私は抑えた。