編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

怒りが募る

鼻出しマスクで、先週末実施された大学入学共通テストの受験生が成績無効になったという。状況はわからないが、続報によるとその後、さらに残念な展開になってしまったようだ。別室での受験とかですめばよかったのだが。

 国会では新型コロナ対策として、新型インフルエンザ等対策特別措置法、感染症法などの改正案が審議される予定だが、強権的なものを感じている。感染者が入院することもかなわない現実があるのに、入院拒否で懲役刑や罰金? 十分な補償がなされたとはいえないのに、知事の命令に違反した事業者に過料?

 今週号でジャーナリストの永田政徳氏が書かれた「『選挙の顔』は菅首相でいくのか」を読むと、めらめらと怒りが募る。自らの利権者の利害を優先して感染を拡大させた人間にはおとがめなしで、市民には厳罰でのぞむなんてことが許されるのか、と。

 先日、来客があった。ノーマスクだったので(失礼ながら)ギョッ。会社のマスクを早速お渡し、つけていただいた。一件落着。

処方箋

 貧富の格差が拡がる。

 新型コロナウイルスの感染拡大でアマゾンは大幅増収。本誌先週号によるとCEOは毎日資産を約10億円増やしているという。また、保有資産10億ドル以上の世界の超富裕層はこの1年ほどで資産を200兆円増やし、あふれた資産が株価を上げ、富裕層がさらに豊かになっているという(『日本経済新聞』12月21日付)。

 別世界の話としか思えない。コロナ禍で職を失い、公助も受けられず、厳冬の中、寒さと空腹に耐える人たちがこの国にも多くいるのだから。

 元日の『毎日新聞』によると、日本の富裕層は、国内未承認の中国製の新型コロナワクチンを打ち始めているという。コロナ治療薬のアビガンも未承認だが、有力者の一部はコネで手に入れ、感染の早い段階で服薬しているという話を以前、関係者から聞いた。

 その効果やリスクはともかく、経済力で健康や命も左右されるという実態を思い知らされる。ワクチンも治療薬も必要だろうが、まず社会の不公平をただす処方箋を、政治に求めたい。

春の道

 年が明けて4日、東京の朝は清々しい。だが、新型コロナウイルスの感染拡大、経済の行き詰まり、貧困の深刻化……、これまで以上の困難が立ちはだかっているように見える。そんな不安を抱えたこの年末年始、口ずさみ慰めになったのが韓国の詩人・鄭浩承(チョン・ホスン)さんの「春の道」だ。

「道の終わるところにも道がある 道の終わるところにも道となる人がいる 自ら春の道になり果てしなく歩く人がいる 川の水は流れてやみ 鳥は飛び去り戻らず 天と地の間のすべての花びらが散っても 見よ 愛が終わったところでも 愛として残っている人がいる 自ら愛になり 限りなく春の道を歩いていく人がいる」

 昨年4月24日号本誌の「ヒラ社長が行く」で植村隆発行人が紹介している詩だ。それを本誌読者のAさんが墨で清書して、贈ってくれたので、会議室のボードに掲げていた。それを胸に刻みつけた。

 日々の雑誌づくりのなかで大切なものを読者の方とリレーをしながら繋いでいく喜びを、噛みしめる。

注目すべき判決

 冷え込みが厳しくなってきた。きょうは冬至。朝、自転車で通勤中、散歩中の保育園児に出くわした。前後を先生に見守られ、手をつなぎ、おしゃべりをしながら園児が通り過ぎる。その上を、街路樹の葉っぱがキラキラと光る。ハンドルを持つ手はかじかむけれど、温かい気分になる。

 今月16日、名古屋高裁金沢支部(蓮井俊治裁判長)で注目すべき判決があった。精神科病院で身体拘束された患者の死亡事故をめぐり、遺族が病院を経営する社会福祉法人に過失があるとして約8630万円の損害賠償を求めた民事裁判の控訴審判決だ。名古屋高裁金沢支部は原告敗訴の一審判決を覆し、身体拘束の違法性を認めて社会福祉法人に約3500万円の支払いを命じた。1月31日号本誌で詳細を報じた案件だ。

 判決が確定するかどうかはわからないが、医療関係者はこの判決を戒めとしてほしい。もう二度と同じことが起きてほしくない。

 今週号は年末年始合併号です。1月8日号でまた、お会いしましょう。

新型コロナのワクチン

 新型コロナの感染拡大がとまらない。私もつい先日PCR検査を受けた。身近なところに危険があることを認識。

 ワクチン接種が各国で始まっている。医療関係者向けの情報提供サイト「ケアネット」で会員医師1000人に新型コロナのワクチン接種に対するアンケートを実施し、その結果を11月に公表した。ワクチンが接種可能になった場合、接種したいという人が61・2%、したくない人が38・8%だった。

 インフルエンザワクチンについては89・9%の人が毎年接種と回答していることを考えると、新型コロナのワクチンについては慎重な人が多いという印象だ。

 東京五輪代表の新谷仁美選手は、ワクチン接種について「正直打ちたくないと思っている」「体調管理を大事にしている。今の対策をしっかりして臨みたい」と会見で発言している(『東京新聞』12月6日付)。

 正しい情報提供をうけ、あくまでも個人が判断をすべきというのはいうまでもない。ワクチン以前に政府の対策全般が疑問だらけだから、正直不安だ。

元保護者の愚痴

 今年度はコロナ禍による経済的理由から、大学などを休学、中退する学生が大幅に増えることが懸念されている。就職率も記録的に悪い数字になりそうだ。

 もし、ストレートに進学したとするならば、今年度卒業する大学生は小学校卒業の年に3・11を体験、卒業式もままならなかった試練の学年だ。この学年に限らず、行政、大学などは可能な範囲で学生に手を差し伸べてほしい。もっともコロナ以前に、おやっと思うこともある。

 地方の国立大学のケース。卒業までに必要な科目でありながら、毎年希望者多数でくじ引きが行なわれている講座があること。講座を増やせばいいだけの話だが、財政的な問題なのだろう。

 くじ運が悪いと4年で卒業できないことも。理学部の卒論研究で、使える予算が1人あたり5000円。これでは試薬ひとつ購入できない。指導教員が自分の研究費用から捻出するらしい。もともとそんなものなのか。授業料は私たちの世代に比すると何倍にもなっているのに。あ、これは元保護者の愚痴でした。

まだ手作業

 新型コロナ対策の最前線で闘っておられる東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦先生の研究室に入るには、研究棟のエレベータから降りてまず靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。さらに研究室前で別のスリッパに履き替える。靴の裏がウイルス感染のリスクになるとは聞いたが、なるほど……。

 インタビューはホワイトボードを背にした先生が、時々図を描いて説明してくれた。1月の段階からは比べものにならないくらい新しい知見が得られていることがわかってきた。ただ、専門外の私たちには難しいので時々「ひらたい言葉で」とお願いをした。

 その日は20人ほどの急なPCR検査が入ったとおっしゃっていた。インタビューのあと、昼ご飯を食べる余裕もなく、防護服を着て検査設備がある部屋に向かわれた。

 印象に残っていたのは、日本の検査の様子を諸外国の研究者がテレビでみて、みな一様に驚くという話だ。「まだ手作業でやっているのか」と。政府の判断力が鈍ると現場は大変だ。

あきれるばかり

 安倍晋三前首相の「桜」疑惑について、東京地検特捜部が前首相の公設第一秘書らから任意での事情聴取をし、政治資金規正法違反などの有無を調べていることが報道された。2013~19年の「桜を見る会」前夜祭の費用を、前首相側が負担をしていたのではないかという疑いがかかる。本誌今週号でも取り上げた。

 前首相は、数々の案件で疑惑を生み、説明責任を果たさぬまま辞任してしまった。

「ようやく?」という言葉が浮かんでしまうが、慎重に調べを進めているのなら、それは結構なことだ。菅政権の日本学術会議の任命拒否問題の陰で報道が少なくなったが、疑惑が消えたわけではない。

 安倍前首相は、「慰安婦」報道をめぐり本誌発行人・植村隆が櫻井よしこ氏を相手に起こした名誉毀損訴訟の上告を最高裁が11月18日、棄却したことをうけ、事実に基づかないことをフェイスブックに書き込んだ。

 呆れるばかりだ。裁判については今週号アンテナ欄で取りあげているので、詳しくはそちらを見てほしい。

第3波

 新型コロナは第3波が心配されるほど感染者が増えている。政府のGo Toトラベル、Go Toイートなどの事業がうらめしい。参議院宮城選挙区選出の桜井充議員が新型コロナに感染したという(先頃、国民民主党から自民会派入り)。お見舞いを申し上げたい。11月13日にPCR検査で陽性が判明してから3日間のことをメルマガ「ドクター桜井の日本診療」に書かれていた。そう、桜井議員は医師。入院を希望してもベッドの空きがなく、レントゲン検査や酸素飽和度検査すらできず自宅療養せざるを得なかったことなどを「非常に不安」「医療崩壊と言えるような状況」と綴る。痛み止めを服用し、吸入ステロイドのオルベスコを使用して症状が軽くなったという。これは医師だからできること。

 菅義偉首相とバッハIOC会長が16日会談した。この状況下で五輪はないだろう。大企業を向いた政府のコロナ対策を是正し、命を守るための政策に方向転換できるよう、桜井議員には回復後、力を尽くして貰いたい。

期待と懸念

 米大統領選は週末に事態が進展したので、特集を急遽差し替えて今週号に組み込んだ。

 トランプ大統領が現地時間4日未明にホワイトハウスで勝利宣言を行なうのを中継で見たときは、あまりの意味不明さに絶句した。米国だけでなく世界の人たちが注目する中、事実に基づかないことを米国大統領が堂々と述べているのだから。

 同7日のバイデン、ハリス両氏の勝利宣言にはそういう意味でも安堵した。ハリス氏の演説では、ジェンダーや肌の色にとらわれない人間の普遍的な価値がひとときでも確認できて、晴れやかな気分になれた。

 バイデン・ハリスで何が変わるのか、変わらないのか。まずはコロナ対策がしっかりと講じられることを期待する。米国の状況は特にひどい。

 懸念すべきこともある。『沖縄タイムス』によると「国防長官にはオバマ前政権で国防次官を務めたミシェル・フロノイ氏など、主要ポストに辺野古推進派の名前が取り沙汰され」ているという。

 まずは今週号を無事お届けできますように。