編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

良識の府

 れいわ新選組の舩後靖彦さんが当選確実を決めた時、開票センターでは割れんばかりの拍手が起こった。私もその場に居合わせた。舩後さんは人工呼吸器を装着したALSの患者さん。立候補の決意の説明のなか、「命がけですから」という言葉が出た。

 その前日、応援演説を務めた同じALSの海老原宏美さんも「命がけ」という言葉を使っていた。海老原さんは〈日本はALSの患者が人工呼吸器を着けて生きていける世界でも恵まれた国。その状況を、自分たちは時に社会の批判を浴びながら、命がけで勝ち取ってきた〉と話された。

 参院では3年前の厚労委員会で、ALSの岡部宏生さんが参考人として口文字で発言された。「コミュニケーションに時間がかかり、議論が深まらない」(『朝日新聞』)と衆院では見送られたが、参院の提案で実現した経緯がある。

 今回当選した、やはり重度の障がいをもつ木村英子さんと舩後さんは、知れば知るほど「良識の府」に相応しい議員だ。その主張にじっくり耳を傾けたい。

あかりちゃん

 この週末、参院選の不在者投票に行ってきた。総務省の調べでは今回の期日前投票は3年前とほぼ同ペースという。これから終盤戦がどうなるか。

 最近は全国にいる各候補者の演説をツイッターで比較して見られるのがいい。私は応援演説に注目。大阪では岡野八代さん、香山リカさんの真摯な言葉に惹きつけられた。小林節さん、島田雅彦さんの熱い支持も驚きだった。

 一方、自民の杉田水脈議員が応援演説に立ったのは私のよく知るアノ議員だった。さらに三ツ矢憲生議員が三重選挙区の女性候補者の応援演説で「(候補者の)一番大きな功績は子どもをつくったこと」と語ったというのは報道の通り。もうこの手の発言には驚かない。ただ、こういう議員には政治の場から退場いただきたいと願うばかりだ。

 米国ではFIFA女子W杯で優勝した同国チームの凱旋パレードで、「多様性」を訴えるミーガン・ラピーノー選手のスピーチが話題になった。その映像を使った@oshieteakariの投票呼びかけは秀逸だ。

参院選

 今も多くの人が繰り返しその映像を見ている6月10日参院決算委員会での小池晃議員(共産党)と安倍晋三首相のやりとり。年金の財源をめぐり、小池議員から裏付けのある代替案が示されたにもかかわらず、安倍首相は切って捨てたばかりか、「ちなみに民主党政権下の3年間は(経済成長が)1回もプラスになっていない」とトンチンカンな付け足しをし、「民主党じゃないですから、私は」「無意味な反論をしないでくださいよ」と小池議員からいなされていた。

 自民党が下野した時代の「悪夢の民主党」が安倍首相はお気に入り。参院選のまっただ中、今度は立憲民主党の枝野幸男代表のことを「民主党の枝野さん」と故意に言い間違いをして聴衆から笑いをとっているという。党名が「ころころ変わっ」ていることを揶揄しているようだ。その幼児性、驚くばかりではないか。寒気がする。参院選は政権交代選挙ではないが、この政権にレッドカードを突きつけるのは私たちしかいないことを肝に銘じたい。

ドタバタ

 九州地方が大雨に見舞われ、避難指示や避難勧告が出されていると聞きます。すでに土砂崩れなどの被害が出ているそうです。被災された方々にはお見舞いを申し上げます。1日も早く日常生活に戻れるよう、祈っております。

 G20が終わったと思ったら、板門店でまさかの米朝会談。軽々と攻撃を仕掛けるのは厳禁だが、軽々と境界を越えることは歓迎だ、たとえパフォーマンスであっても。自分を大きく見せることだけに長けていて、実質が伴わない外交自慢のどこかの国のトップは、歯がみしてこのニュースを聞いたのだろう。五カ国協議? 進めてください。

 という次第で、月曜日の編集部はドタバタ。原稿を書く人、写真を選んでレイアウトを発注する人、目次を変更する人……。今回は記事の入れ替えが多いな。ミスはないか。えっ、校閲のIさんから、奥付の印刷者のお名前が変更になっているはず、と指摘を受ける。業務の町田に確認。本当だ。グッドジョブ、Iさん。

 いよいよ参院選の公示だ。