編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

日米首脳会談

 ここのところ、日米首脳会談の話題で少し食傷気味。「リラックスした雰囲気の中で、地域情勢や世界の課題について、突っ込んだ意見交換を行うことができました」(首相官邸のフェイスブックより)。

 個人的な信頼関係を築くのは勝手だが、入国禁止の大統領令をめぐって、「内政問題」を口実に”だんまり”というのは、ちょっと情けない。安倍首相の国際社会をめぐる根本的な認識が問われているわけだから、せめてもうちょっとましな対応はできなかったのだろうか。国際社会を敵に回してどうする?

 米国のお隣のカナダでは、入国禁止令が出た翌日に、トルドー首相が難民歓迎のアピールをツイッターに投稿したことが話題になっていた。

 大統領令が法廷闘争になったことで、トランプ大統領は新大統領令を検討しているという。もしかして、「(人権無視で悪名高い)日本の入管政策をモデルに検討している」と大統領に賞賛されていたりして……。安倍さん、国内の問題で”だんまり”は許されませんよ。

オスプレイ

 漂着したオスプレイの飛行マニュアルをめぐる新藤健一さん執筆の2回にわたる記事を、これで無事にお届けできることになった。

 私自身、この記事でいろんなことに合点がいった。乗組員に課せられた水中での脱出訓練のビデオもユーチューブで見た。機内に水が入り込んでくるときの緊張感は見ていても伝わる。脱出訓練は十分な明るさが確保されているが、漆黒の闇のなかだったらどうだろう。

 これほど過酷な任務を乗組員に課すオスプレイが国内を飛び回ることに、あらためて恐怖を覚える。それだけではない。これらを総動員した演習が日本国内で展開されていても、それを私たちが知らないことに愕然とする。

 先日の大学入試センター試験の英語リスニング時、会場の一つ琉球大学付近をオスプレイを含む米軍ヘリが飛行したという。騒音レベルは地下鉄の車内レベル以上とか。

 今月16日19時から、東京・神保町の「ブックカフェ二十世紀」で新藤さんによる緊急報告会が開かれる。興味のある方は是非!

「見せしめ」という「裁量」

 親の経済力が乏しいと、子どもの進路は大きく影響を受ける。親のほうは子どもの教育費用次第で老後の蓄え(設計)が大きく変わる。教育費は、親子の自律した関係をゆがめる日本の社会制度上の大きな問題ではないのか(そう考えるのは、私がダブル受験生を抱える親だから?!)。

 小池百合子都知事は「教育の機会均等」の名目で、年収760万円未満の世帯の、私立高校授業料の実質無償化の方針を公表した。思想信条を超えて、百合子さんガンバレ、と言ってしまいそうになるが、冷静に考えると都知事のむごさが身にしみる。都知事は一方で朝鮮学校への補助金の支給停止を続けているからだ。結果として「差別」を強めているのだ。

 1月28日、大阪の朝鮮学校が補助金不支給の決定取り消しを求めて大阪府・市を訴えた裁判で、大阪地裁は朝鮮学校の請求を斥ける判決を下した。拉致問題の解決と朝鮮学校の子どもらの教育を受ける権利は、まったく関係がない。「見せしめ」という「裁量」を許していいのか。

時代は変わる

 「世界は動いている」「時代は変わる」ことを実感した。韓国の金淇春(キム・ギチュン)元大統領秘書室長が逮捕されたからだ。朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人による国政介入問題に連なり出てきた、“政権に批判的な文化人リスト”の作成に絡んだ職権乱用の容疑だ。

 元室長は、朴正煕(パク・チョンヒ)政権下で維新憲法草案づくりに参画し、その後法務部長官まで務めた人物である。その彼を、娘の朴槿恵大統領は「新維新体制」づくりに重用した。

 金元重(キム・ウォンジュン)千葉商科大学教授は本誌(2015年12月25日号)で彼を「拷問、不法連行、長期拘禁による虚偽自白で多くのスパイでっち上げを指揮してきた」と批判し、そういう人物が大統領に次ぐ位置にあったことを指弾した。元室長は、金教授を含む在日の留学生がスパイ容疑で韓国で一斉に逮捕された1975年の「11・22事件」(再審で無罪判決)の責任者でもあったのだ。

 翻って日本はどうだ。「敗戦」を受け止められず、高度経済成長の成功体験にしがみつく安倍首相が「国創り」を宣言する。時間が止まっていはしまいか。

トランプ大統領と情報合戦

 頭の中が混乱してきた。トランプ大統領の就任式が近づいてくるにしたがって、情報合戦が激しくなり、何がウソで何が本当なのかわからなくなったからだ。国内メディアの情報をみてもだめ、海外メディアの情報をみると……よけいわからなくなる。

 今週号のトランプ関係の記事を読んで、ようやく腑に落ちた。読者の皆さんはいかがでしょう。

 俳優のメリル・ストリープが的確なトランプ大統領批判をしているのをみると、快哉を叫びたくなる。障がいのある記者のまねをして嘲るなんて、本当に信じがたい。

 だが、日本のトップがどうかというと、別の問題がおおありだ。遂にアベノミクスの理論的支柱である浜田宏一氏が白旗をあげたというニュースが国内を走ったのが昨年11月のこと。内閣支持率が大きく落ちるぞ、と密かに喜んだが、多少沈んで浮かんで、1月のNHKの調査では「支持する」が55%(フー!)。

 小者でも(!)しぶとい。粘り強くいくしかないですね。

沖縄差別

 昨年末から沖縄をめぐり慌ただしい動きがあった。最高裁敗訴を受けて辺野古埋め立て承認の取り消し処分を翁長雄志沖縄県知事が取り下げ、政府は辺野古工事を再開。墜落事故で中止されていたオスプレイが飛行再開し、件の空中給油訓練も再開へ。そこに「ニュース女子」の歪曲報道。

 だが、基地建設の抗議行動の関連で昨年10月から名護署に勾留中の山城博治沖縄平和運動センター議長をめぐっては、釈放の兆しがない。拒否されていた靴下の差し入れが認められただけ(1月10日現在)。

『沖縄タイムス』によると、大病を患った山城氏の健康を気遣う支援者から申し出があったが、「自殺予防」で拒否されていた。靴下は交渉の末、3種類の中から短いものだけが(!)認められたという。山城氏の処遇については海外の識者10人が「不当で、理不尽」と批判をしている。国内では元裁判官らが、長期勾留の違法性を指摘し、街頭署名を集めて裁判所に保釈請求をする予定だ。

 今年も本誌は沖縄差別問題を追っていく。

異議申し立て

 12月2日号「風速計」で田中優子編集委員から11月11日号の記事タイトルについて疑問が呈された。

「『”武器見本市”に転進する大学』というタイトルの横に、『早稲田や法政、横浜国立、東海など9校がブース出展』」とあるのは、「これらの大学が防衛省の研究費に応募して軍事研究に『転進』しているかのよう」であり、「筆者と編集部が、読者をそのような『読み』に誘導したかったのであれば、それは大問題」とある。

 筆者、編集部ともにそのような意図はもちろんまったくなく、また、見出しは一義的に編集部の責任に帰するもので、当該の見出しは編集部がつけたことをお断りしたい。

 より的確で、よりふさわしい見出しをつけるべく、編集部として研鑽を積みたい。

 今年は沖縄・高江をはじめ、さまざまな現場で、強権によって理不尽な処遇を押し付けられている人々の異議申し立てがあった。そしてそれは今も続いている。常に市民の側に立ち、一人ひとりの思いを丁寧に追いながら、粘り強い報道を続けたい。

銀行という組織

 地方銀行に勤めている高校の同級生の話を聞く機会があった。マイナス金利が効いてきて経営環境が「とにかく厳しい」という。ファンド投資(?)で稼ぐよう圧力がかかっているようだが、そううまくいくものでもあるまい。地銀がそんな具合なら、地域経済はどうなっているのか。気になったが、地元に残っている人たちからは、なぜか景気の悪い話は出なかった。

ちょっと前になるが、連れ合いが夜ごと悲鳴をあげて眠れない、精神的に参ってしまった、と友人から相談されたことがあった。彼は大手銀行の絵に描いたようなエリート行員。仕事がたいへんなようだが、細かいことは言わないらしい。結局、友人は新興宗教の力を借り、彼は仕事をつづけた。

 その後、銀行という組織の裏面を知るにつけ、その過酷さを少しだけ想像できるようになった。どんな”地獄”にあっても、個人として大切にするものを貫くしかないと、本号に登場している國重惇史さんの著書を読んで思った。

會則道先生

 その音楽家が最初に夢中になったのはマンドリンだった。その後バイオリンに転向して交響楽団に入団。戦前のことだ。生涯でもっとも忘れがたい曲は、「東郷平八郎元帥を送る時に演奏されたべートーベンの『英雄』」。

 戦争には行かなかった。「戦時中は軍の慰問に明け暮れた。戦後はその慰問先がGHQに変わっただけ」という。

 戦争末期はその耳の良さを買われ、近づいてくる戦闘機を、固有のエンジン音で敵機かどうか聞き分け、どの方角からやってくるかも勘案し、防空壕に避難すべきどうかの判断を求められたという。

 一番の思い出は、敗戦後、世界一周演奏旅行に加わったこと。夜ごと見知らぬ場所で、見知らぬ観客からたくさんの拍手を貰ったことは何よりの誇りだ。晩年は子どもたちの指導に携わったが、どんなにひどい音をだしても苦笑するだけだった。戦闘機のエンジン音よりはましだろうと今は思う。逝去されて8年。お世話になった會則道先生の戦争と平和をめぐる話は、いまも私の胸に残る。

カストロ前議長

 キューバのカストロ前国家評議会議長の訃報が世界を駆け巡った。私は革命の指導者としての業績を後の書籍や映画で知るだけだ。しかし反米政権が次々と倒れていくラテン・アメリカにあって、その勢力の重しとなっていたキューバが、トランプ大統領の米国と今後どのような関係をつくっていくのか、気になる。

 安倍首相も二度、前議長に会っている。9月には日本の首相として初のキューバ訪問を行なった。もちろん米国との国交正常化をうけての話で、首相のイニシアティブなんてないだろう。

 安倍首相の外遊も、訪問した国や会談した人物などの実績を考えると、それなりに凄い。向き合った人物や、足を踏み入れた地から何を学ぶか、そこが重要になってくるわけだ(私の偏見か、トランプ氏に面談した時の表情に比して、キューバ訪問時の首相の表情はすぐれない)。

 少なくとも、安倍首相が従来からお持ちの歴史認識を覆すような出会いは、いまのところなさそうだ。残念!