編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

心底言いたい

 安倍晋三首相は巣ごもり中? コロナ感染拡大で政府の対応が求められているのに、野党が要求する臨時国会を開く気配もないし(今週号で53条違反をめぐる裁判を取りあげている)、政府の方針を説明する記者会見もしない。

“舎弟”議員からさえも、「政府は広報を至急改善を」と批判が出ていてちょっと驚いた。「さよなら!アベ政治」と心底言いたい!

 市民生活はコロナ禍に加えて日照不足と多雨のために、野菜が不作で高騰。契約している宅配では2週にわたってジャガイモが欠品。盤石な“ジャガイモネットワーク”が綻びを見せるなんて、よほどのこと。

 コロナが心配でお盆には実家にも行けない。時間ができたのでこの機会に読みたいと思っていた本を読もう。D・エルズバーグの『世界滅亡マシン 核戦争計画者の告白』(岩波書店)をはじめ、法律、詩、さまざまな会報も。

 今週号はこの夏二度目の合併号になるので、来週の刊行はありません。21日号でお会いしましょう。

大先輩のこと

 コロナ禍について、ずっと意見を聞いてみたいと思っていた人がいた。ジャーナリストの伊豆百合子さんだ。本誌では医療過誤や新薬の問題を取材・執筆されてきた。昨年暮れから入院されていたが、6月20日に亡くなったという知らせを先週いただき、正直、力が抜けてしまった。

 読売テレビにアナウンサーとして入社、途中から報道部に異動し、ディレクターとして活躍された。退社後は本も書かれた。731部隊にも詳しく、自身の情報源の一人、医学界の重鎮が隊員だったことを知り、衝撃をうけていた。自分自身そのことにどうけじめをつけるか、拘られていた。

 私が知り合ったのは二十数年前。電話で延々と話し続けてきたが、事情があってお会いしたことがない。「(あなたが)夢の中に出てきたのよ、でも後ろを向いてた」と楽しそうに話されたことも。女が働き続けるのが困難な時代に道を切り拓いた大先輩。ディレクターへの転身はたいへんだったはず。もっと話を聞きたかった。一度でいいからお会いしたかった。

バレバレ

 住んでいる区内の保育園でコロナウイルスのクラスター発生というニュースがあった。以前自分の子どもたちもお世話になっていた施設だから気になる。私の周りでもメールが行き交った。それにしても親密な空間が必要な保育園で、「3密」回避とは、何をどうしたらいいのだろう。

 リーダーズノート編集長の木村浩一郎さんが『PCR検査を巡る攻防』(リーダーズノート出版)という本を緊急発売された。「(PCR)検査拡大派」と「検査拡大に反対派」の主な認識、たとえば検査の精度の問題、医療崩壊の問題などで大きな食い違いはないのに、なぜ大論争になったのかを追っていて、興味深い。そこで行き当たるのは医療界の内部事情とメディアの問題だった。

 ステイホームの次はGo Toって、犬じゃあるまいし、というツイッターに苦笑。私たちは従順な犬になる必要はない(いや、お犬様に失礼!)。Go Toキャンペーンを前倒しする政府の下心、バレバレだものねえ。

他人ごとではない

 まずい。会社に向かう途中、乗っている自転車が突然の強風に煽られた。雨もポツポツ降り出してきた。鈍く光る雨雲を見上げる。

 九州を襲った豪雨は多数の方々の命を奪い、多大な被害を出した。自然災害の破壊力をニュース映像などで見せつけられた。亡くなられた方々にはお悔やみ申し上げ、被災された方々にはお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧を願ってやみません。

 元通りの生活を取り戻すのがどれだけたいへんか、去年、関東を襲った台風で被災した千葉にお住まいの読者の方から、定期的にメールをもらい、教えていただいている。自治体の支援を受けるにしても申請の手続きだけで時間がかかる。一人暮らしのお年寄りの方はきっと歯がゆい思いをされているに違いない。

 しかも、いまはコロナ禍の異常事態。そうでなくとも消耗する避難所生活はたいへんだろう。もともと劣悪な日本の基準をこの機会に見直して予算をつけてほしい。都知事選挙が終わった東京も、他人ごとではない。

文化新聞『土曜日』

 84年前の7月4日、反ファシズムの文化新聞『土曜日』が創刊された。編集兼発行名義人は、大部屋俳優の斎藤雷太郎さんだった。昨年末、ヘウレーカから出版された口伝を今週号で取りあげている。

 斎藤さんについては、「憲法寄席」の主催者で本誌読者でもある高橋省二さんからあるお芝居の台本を見せて貰ったことから関心を抱いた。「冬の蕾 斎藤雷太郎と新聞『土曜日』を生きた人々」だ。グループ演劇工房の木内稔さんが演出し、2001年には上演されている。

 近現代史研究者の井上史さんは、作品をみてはいないが、木内さんが関係者に熱心に取材されたことはご存じだった。治安維持法下でいかに人々が志を抱きながら生きていたかが鮮やかに描写されている。画質は悪いがビデオがあるそうなので、いつか見せて貰おうと思っている。

 井上さんによると斎藤雷太郎さんに取材をしたドキュメンタリーもあるという。制作者の青柳正さんを探して調査されているので報告を待ちたいと思う。

疑問にこたえる

〈元「慰安婦」を支援する“日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯”(「正義連」)の不正問題をなぜ、取りあげないのか〉という問い合わせを読者から複数いただいていた。〈自分たちに都合の悪いニュースだから扱わないのか〉とも。

 もちろんそんなことはない。5月22日号のアンテナ欄で1頁を使って第一報は載せている。ただ、韓国内での出来事でもあり、自分たちで自由に取材ができないために、慎重に事態の推移をみてきたことは事実だ。

 今週号でようやく、韓国在住の研究者、吉方べきさんの執筆記事を載せることができた。ナヌムの家の支援金問題は、提携している韓国の『時事イン』の記事を転載した。

 戦後補償に関わる問題になると、国内でお目にかかるのは首をかしげたくなる記事ばかりだ。そんな中、一連の報道に胸を痛め、事態をどう考えたらいいのか、困惑している方も多いと思う。吉方さんの記事は、その疑問に十分にこたえる内容になっていると思う。

目から鱗

「アベノマスク」受注でにわかに注目された福島市のユースビオ。その社長宅が契約当時競売中だったことがジャーナリスト・三宅勝久さんの取材で明らかになった。

 厚生労働省との巨額の契約が成立。ユースビオに入金後、競売は取り下げられたという。そもそもユースビオは「役員は社長1人。実績不明、看板も電話番号の届けもない」会社。なぜそこにタイミングよくアベノマスクの仕事が舞い込んだのだろう。謎は深まるばかりだ。詳しくは今週号のアンテナ欄をご覧下さい。

 持続化給付金事業の委託や外注事業をめぐる疑惑は、先週号に引き続いて片岡伸行さんの「追及!政権腐敗」シリーズで取りあげている。あまりにお粗末で怒りを通り越してあきれるばかりだ。なぜこんなひどいことがまかり通っていたのか、今週号、佐々木実さんの「経済私考」を読むと理解できる。また、公的サービスを「民」に委ねることについてずっと言われ続けてきたこと、ある通念に、佐々木さんは疑問をはさむ。”目から鱗”だった。

編集部へのエール

 一時期、都内でも朝夕の空気が新鮮に感じられたが、人混みや往来が戻るにつれ、そういった感覚もなくなりつつある。

 だが、行き帰り、自転車通勤の人を以前より多く見かけるようになった。区で貸し出す自転車を利用する人も多い。この動きは一時的なもの? それとも定着するのか、私には想像もつかない。

 コロナ禍で各地にある金曜日の読者会も開催がままならない。だが、可能な形で継続されている会もある。週刊金曜日を応援する会・神奈川の厳しい5月15号への感想、北多摩(東京20区)読者会の変革の意欲に満ちたアピール文(5月22日号に抜粋を掲載)などなど、部内でも問題意識を共有させてもらっている。

 6月4日には、オンラインでの読者会に参加させてもらった。室蘭、東京から東濃へ!、関門・北九州など各読者会の方と繋がった。みなさん各地で現場を持って活動されていて話題が尽きない。読者に阿ることなく「正々堂々と」──編集部へのエールとしてしかと受けとめたい。

時間をかけて

 ピカピカの小学1年生と保護者が何組も手をつないで向こうから歩いてくる。そうか、きょうは入学式。小雨の降る中、校門前では先生が待機し、児童らが間隔をおいて入場できるように取り計らっていた。

 学校が再開すればしたで、コロナウイルスの感染回避のために毎日の生活で気をつけなければいけないことがあってたいへんだ。第2波、第3波の心配もある。

 東京都立高校の場合、夏休みと冬休みが極端に短くなるようだ。それもどうかな、と思う。かりに栄養が不足している期間があったからといって、いきなり多量の栄養を与えられても摂取できるものではない。勉強も同じだ。

 コロナ禍でストレスもたまっているだろうし、不安もある。無理は禁物だ。短期間で解消するのではなく、時間をかけて通常生活にもどれるといい。

「9月入学」をこの機会に、という話もあるが、無理がある。政治家のポイント稼ぎのために現場が犠牲になるのは言語道断と思っていたら「来年度導入断念」。よかった。

許しませんぞ

 緊急事態宣言が解除された東京。わが町で一番人気のイタリア料理店の前に、工事の車が横付けされていた。角材が運び込まれている。宣言が出る少し前から休業を余儀なくされていた。改装開店をめざすのか、それとも……。

 並びにはコロナ禍の直前に閉店した和食屋。入り口には閉店を告げる紙が貼られたまま。そこから100メートル離れたカフェは今日から再開。ピカピカに磨かれたガラスに光が反射してまぶしい

 賑わいが戻ってきたのは嬉しい。だが、東京五輪の延期合意の3月24日まで、小池百合子都知事が感染拡大阻止にむけて何をやったのか、やっていないのか、覚えておきたい。

 一方、独自の休業再要請指標「大阪モデル」をつくり人気をあげた吉村洋文大阪府知事。だが、ここにきて山中伸弥京都大学教授に、基準を政治的に緩めたと批判を受けた。何より大切なのは事実の把握のはず。権力者が都合で歪めるなんて、許しませんぞ(あっちもこっちも、もう)。