編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

控訴審

 本誌記事で名誉が毀損されたとして会社経営の男性(以下、原告)が本社と筆者に1億1000万円の損害賠償を求めた裁判の判決言い渡しが先月、京都地裁(増森珠美裁判長)であり、10月2日号本欄で報告しました。判決は本社らに連帯して110万円を支払うよう命じましたが、これを不服とし、原告と筆者は控訴しました。

 当該記事は2018年7月6日号で成田俊一氏が執筆した「警察の闇 暴力団の破門状事件めぐり京都府警が過去を隠した男」。京都府警本部の新築工事の警備業務を、元暴力団組員であったと疑われる原告の経営する警備会社が受注し、そこに府警の幹部警察官が天下りして要職に就いていると指摘。元組員と府警との癒着の可能性を問うものでした。

 記事では原告が組員であったか否かについて、複数の証人の証言をもとにその可能性が高いことを疑惑として指摘、原告は組員ではなかったと争っていました。大阪高裁で行なわれる控訴審では本社も引き続き当事者として争っていきます。

注目したい

 間違ったことをして、それを押し通そうとすると、次々と嘘をつきつづけなければいけない。さすがに公然と嘘をつくことがはばかられる国会答弁で、前政権は「ご飯論法」なるごまかし(「朝ご飯食べた?」「(パンだったから)食べていない」)や論点ずらしに走った。

 今回の日本学術会議の任命拒否問題を巡る政府の答弁をきいていても、まさにそういう事態に陥っていると感ずる。まもなく臨時国会が開かれるが、メディアも追及の手を緩めてはいけない。

 安倍晋三前首相のさまざまな疑惑について、強弁をつき崩し、真相究明に寄与した国会議員の一人が、今週号に登場いただいた小川淳也衆議院議員(立憲民主党)だ。

 インタビューに立ち会わせてもらったが、国会質疑を見て抱いたイメージ通りだった。弱さに向き合える強さを持っている。小川さんの場合は、小選挙区のライバルが平井卓也デジタル大臣なので、よけいに世襲でない政治家の心意気を感ずる。菅首相にどう挑むか。注目したい。

お家芸

 きょう、全国紙の政治部記者の方と話す機会があった。

「菅政権は発足時、なぜあんなに支持率が高かったのでしょう?」と私。記者さん曰く「安倍政権が終わったからではないですか」。菅義偉首相への期待が高いわけではなく、首相交代が歓迎されたということ。健全な反応というべきか。脱力してしまう。

 日本学術会議新会員候補者6人の任命拒否問題は、菅政権が安倍政権とまったく変わらない体質を持っていることを表した。

「国の特別機関として政府の指示を受けず、独立に職務を行なうことを法によって保障され、社会と政府に対して政策提言や助言を行なうことができる機関」。2011年7月~9月、日本学術会議会長を務めた広渡清吾氏が本誌のインタビュー時にしてくださった日本学術会議の説明である。

今回の政府の行為が本来の政府と日本学術会議のあり方から逸脱していることは明白だ。

 前政権の手法がいまも有効と思ったら大間違い。これが菅さんのお家芸であることもバレバレだ。

これでいいのか

「自助・共助・公助」ということばが無情に響く。

 貧しい者から富める者にお金を移転させる経済政策のせいもあって、市民の生活の基盤はがたがた。その上に今年はコロナ禍が襲った。生活保護申請件数も増加、自殺者も増加。にも拘わらず、新政権がこの時期に発するメッセージが「自分でできることはまず自分で」。これでいいのか。

 本誌が掲載した記事をめぐり、会社を経営する男性が名誉毀損にあたるとして、(株)金曜日と筆者を相手取り、1億1000万円の損害賠償などを求めて提訴した裁判の判決の言い渡しが9月28日、京都地裁(増森珠美裁判長)でありました。

 当該の記事はジャーナリストの成田俊一氏が執筆した「警察の闇 暴力団の破門状事件めぐり京都府警が過去を隠した男」(2018年7月6日号掲載)です。

 裁判所は、本社と成田氏に対し、連帯して110万円を支払うよう命じました。

 裁判の詳細と本社の見解は追ってお伝えします。

増ページ

「ええっ? それは……」

 厳しい要請が進行担当の文聖姫から発せられる。そして姉御は、情け容赦なく私たちのお尻を叩く(気がする)。1年に一度だが、今週がまさにその時。通常、発売の週の火曜日にその号の編集作業を終えるのだが(=校了)、今週に限っては月火がお休みなので、前週の金曜日までに作業を終えなければならないのだ。

 前週の火曜日には前週号の校了があるわけで、私など頭がこんがらがってしまう。校閲、デザイナー、組版所らとの連係プレーが特に重要だ。

 今週号から月2回ほど、ぶんか欄の「書評」を増ページする予定だ。出版社はもちろん著者の方、読者の方からもさまざまな本を送って戴く。これがいずれも良書ばかり。スペースの関係でごくごく一部しか紹介できないことに、いつも胸が痛んでいた。

 だから増ページを私自身、素直に喜ぶ。といっても、取りあげる本が月4週とすると、12冊だったのが18冊に変わるだけだが。「書評」に取りあげられなくても、企画の参考にさせていただきます。

終わらない

 菅義偉氏が次期首相に就任する。菅氏というと私は、望月衣塑子記者の質問に苛立つ姿と選挙の応援演説で見せる笑みとの落差、そして「ふるさと納税」を思い浮かべる。

 2006年に西川一誠福井県知事(当時)が提案した「故郷寄付金控除」に着想を得て、総務相だった菅氏が主導し、制度化した。返礼品の特典がつくので過熱気味だった。高価な返礼品を咎められた大阪・泉佐野市が国を訴えて勝訴するという事態まで起きた。

 負担なき寄付といわれる一方、寄付者の居住自治体と国庫(地方交付税交付団体の場合は税収減の多くが国の交付税で補填されるので)が実質的な負担をしているという事実が顧みられない点などを本誌では16年、問題にした。

 その取材で関係者から伺った話が本当だったと9月12日付『朝日新聞』で知った。ふるさと納税に異を唱えた官僚が左遷されたという話だ。当該の平嶋彰英さんがインタビューに応えていた。菅氏は「政策反対なら(官僚は)異動」と発言している。アベ政治は終わらない。

悪い予想

 やっぱりそうか。悪い予想は当たる――。次期首相に菅義偉官房長官が選任される可能性が高くなったということではない。「東京五輪、開催経費は史上最大 英オックスフォード大の研究」という共同通信が4日に発したニュースについてだ。

 大会経費だけで約1兆6800億円にのぼり、これには延期の費用が入っていないという。一つの試算にすぎないのだが、「世界一コンパクトな大会」という宣伝文句で勝ち取った大会のツケが回ってくる日は近いということか。

 大会の実施自体疑問だが、コーツIOC副会長はやると語っている。コロナ禍でダメージを受けた社会がさらに巨額の負債を抱え込む。

 たしかに安倍政権下で株価は上がったが、実体経済は違う。「スタート直後は『ロケットスタート』と評されるほど好調だったが、半年後には早くも失速しはじめた」と、今週号「経済私考」で高橋伸彰氏は書く。総裁選の3候補、いずれが首相になってもこの苦境は改善しそうもない。

 この予想、外れてくれたらいいのだが。

「悪夢狩り」

 安倍晋三首相が、辞任を表明。今週号は当初予定していた記事を差し替えて関係記事で特集とした。その後共同通信によると、首相は在任中に敵基地攻撃能力保有の方向性を示す意向を固めたと与党幹部に伝えたとのこと。

 は~?先の会見でも首相はやり残したこととして憲法改正、北方領土、拉致問題を挙げたが、福島原発事故や沖縄の新基地建設に言及していない。拉致問題はともかく、実現せずとも責められない「大いなる課題」に夢中で、目前の危機的課題は終始眼中になかった。

 本誌は懲りもせず、ずっと批判を続けてきた。第一次政権のときは「イデオロギーでなんでもかんでも批判するのはどうか」と言われ、第二次政権当初も「考えすぎ」と言われたが、特定秘密保護法あたりから「安倍さん、ちょっと怖いね」に変わってきた。

 今週号、雨宮編集委員の「悪夢狩り」の被害は、この政権の異様さを如実に表していて心底ぞっとした。トップが変わっても“アベ政治”が変わらなければ、社会の分断と荒廃は進むだけだ。

問題のありか

「あなた、147日間休まず働いてみたことありますか?」(今週号「無責任架空対談」)。連続執務の安倍晋三首相に休息が必要だと主張する麻生太郎副総理が今月17日、いつもの上から目線で発した台詞だ。

“おまえら、口出しするんじゃねえぞ”と言いたげだ。「芸人なら普通にあるんじゃないの」「主婦は365日休みなし」「首相動静で休みだらけなのはバレバレなんだが」とか、議論はおおいに盛り上がった。

 もちろん休養は誰にも必要なものだから、取るなとは言わない。大事なのは執務の中身。憲法に規定された臨時国会の早期召集を野党が求めても、コロナ対策についての会見を求めても、応じない。一義的な責任を果たさないことが問題なのだ。

 またまた今週号からで恐縮ですが、「健康不安説拡大する安倍首相の引き際」で南彰さんが重要な指摘をされている。(体調ばかりに焦点が当たって)「報道のフェーズ(位相)が変わったのは事実です」

 え? まんまと乗せられちゃったわけ?

正直驚いた

 慶應義塾大学病院への検査入院が発表されて、この間くすぶっていた安倍晋三首相の健康不安説が信憑性を増した。ポスト安倍をめぐる動きも一気に活発化するのだろう。

 などと書きながら、一方で、一個人の健康状態にさまざまな思惑が交差し、それがニュースにされてしまう政治家という仕事はつらいものだなあと感じたりする。このタイミングでただの「入院」はありえないということでしょう。

 もっとも安倍さんの場合は、これまで投げかけられたさまざまな疑惑が、自身の降板で一気に解明されてしまうという別種の不安がお強いのかもしれませんが。お察しします。

 モリカケからはじまる一連の疑惑は安倍長期政権のおごりとも言われる。今週号で取り上げた産業遺産情報センターの特集をみると、安倍政権の体質そのものにしか思えない。

 今回“おともだち疑惑”が投げかけられているのは加藤康子センター長だ。加藤氏の月刊誌への執筆記事には正直驚いた。何に驚いたのか──まず、今週号の特集を読んでいただきたい。