編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

けっして忘れまい

 きょうは8月6日。広島に原爆が投下された74年前のこの朝を思い、静かに手を合わせる。ちりちりと太陽は照りつけ、気温はぐんぐんあがる。今日も東京は暑い1日になりそうだ。

 この1週間、敗戦特集の追い込みのなか、大きな動きがつづいた。8月1日、臨時国会が開会。2日、日韓関係が悪化する中で、韓国のホワイト国除外を閣議決定。3日、始まったばかりのあいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」が展示中止に。

「表現の~」については、今週号で経過を報告しているが、次号できちんとした検証を予定している。何よりも、テロ予告という卑劣な手段で美術展を中止させたその行為と、その呼び水になった河村たかし名古屋市長らの憲法21条を蔑ろにした発言に、強く抗議をしたい。

 展示室にあった「表現の不自由をめぐる年表」に《2019・8 あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」中止事件》の1行が加えられたことを、けっして忘れまい。

改めてほしい

 8月1日の臨時国会でお二人の新人議員を迎えるにあたっての、国会の改修が進む。大型車椅子を使用されている舩後靖彦さんと木村英子さんのことだ。

 この号が出るころは、二人が晴れて初登院されたというニュースが、メディアで流れていることを願う。ここにきて、就労中の重度障がい者にヘルパー派遣が認められないという問題で躓いているからだ。これまでも繰り返し指摘されてきた制度上の矛盾ではないか。これを契機に制度自体を改めてほしい。

 先週の本欄で舩後さんらの応援演説をした海老原宏美さんに言及したが、海老原さんはALSではなく、脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者さんだ。お詫びして訂正する。一昨年の本誌記念講演会で最後にスピーチされた、あの方だ。

 海老原さんは最近『わたしが障害者じゃなくなる日』(旬報社)を出された。なんといっても韓国での「サバイバルホームステイ」の話が(前作にも書かれていたが)、破天荒で凄い! ルビつきなので、小学生の姪にプレゼントしようと思う。

良識の府

 れいわ新選組の舩後靖彦さんが当選確実を決めた時、開票センターでは割れんばかりの拍手が起こった。私もその場に居合わせた。舩後さんは人工呼吸器を装着したALSの患者さん。立候補の決意の説明のなか、「命がけですから」という言葉が出た。

 その前日、応援演説を務めた同じALSの海老原宏美さんも「命がけ」という言葉を使っていた。海老原さんは〈日本はALSの患者が人工呼吸器を着けて生きていける世界でも恵まれた国。その状況を、自分たちは時に社会の批判を浴びながら、命がけで勝ち取ってきた〉と話された。

 参院では3年前の厚労委員会で、ALSの岡部宏生さんが参考人として口文字で発言された。「コミュニケーションに時間がかかり、議論が深まらない」(『朝日新聞』)と衆院では見送られたが、参院の提案で実現した経緯がある。

 今回当選した、やはり重度の障がいをもつ木村英子さんと舩後さんは、知れば知るほど「良識の府」に相応しい議員だ。その主張にじっくり耳を傾けたい。

あかりちゃん

 この週末、参院選の不在者投票に行ってきた。総務省の調べでは今回の期日前投票は3年前とほぼ同ペースという。これから終盤戦がどうなるか。

 最近は全国にいる各候補者の演説をツイッターで比較して見られるのがいい。私は応援演説に注目。大阪では岡野八代さん、香山リカさんの真摯な言葉に惹きつけられた。小林節さん、島田雅彦さんの熱い支持も驚きだった。

 一方、自民の杉田水脈議員が応援演説に立ったのは私のよく知るアノ議員だった。さらに三ツ矢憲生議員が三重選挙区の女性候補者の応援演説で「(候補者の)一番大きな功績は子どもをつくったこと」と語ったというのは報道の通り。もうこの手の発言には驚かない。ただ、こういう議員には政治の場から退場いただきたいと願うばかりだ。

 米国ではFIFA女子W杯で優勝した同国チームの凱旋パレードで、「多様性」を訴えるミーガン・ラピーノー選手のスピーチが話題になった。その映像を使った@oshieteakariの投票呼びかけは秀逸だ。

参院選

 今も多くの人が繰り返しその映像を見ている6月10日参院決算委員会での小池晃議員(共産党)と安倍晋三首相のやりとり。年金の財源をめぐり、小池議員から裏付けのある代替案が示されたにもかかわらず、安倍首相は切って捨てたばかりか、「ちなみに民主党政権下の3年間は(経済成長が)1回もプラスになっていない」とトンチンカンな付け足しをし、「民主党じゃないですから、私は」「無意味な反論をしないでくださいよ」と小池議員からいなされていた。

 自民党が下野した時代の「悪夢の民主党」が安倍首相はお気に入り。参院選のまっただ中、今度は立憲民主党の枝野幸男代表のことを「民主党の枝野さん」と故意に言い間違いをして聴衆から笑いをとっているという。党名が「ころころ変わっ」ていることを揶揄しているようだ。その幼児性、驚くばかりではないか。寒気がする。参院選は政権交代選挙ではないが、この政権にレッドカードを突きつけるのは私たちしかいないことを肝に銘じたい。

ドタバタ

 九州地方が大雨に見舞われ、避難指示や避難勧告が出されていると聞きます。すでに土砂崩れなどの被害が出ているそうです。被災された方々にはお見舞いを申し上げます。1日も早く日常生活に戻れるよう、祈っております。

 G20が終わったと思ったら、板門店でまさかの米朝会談。軽々と攻撃を仕掛けるのは厳禁だが、軽々と境界を越えることは歓迎だ、たとえパフォーマンスであっても。自分を大きく見せることだけに長けていて、実質が伴わない外交自慢のどこかの国のトップは、歯がみしてこのニュースを聞いたのだろう。五カ国協議? 進めてください。

 という次第で、月曜日の編集部はドタバタ。原稿を書く人、写真を選んでレイアウトを発注する人、目次を変更する人……。今回は記事の入れ替えが多いな。ミスはないか。えっ、校閲のIさんから、奥付の印刷者のお名前が変更になっているはず、と指摘を受ける。業務の町田に確認。本当だ。グッドジョブ、Iさん。

 いよいよ参院選の公示だ。

消費税

 梅雨空を見上げる。雨脚が強い。ダメか……。月曜日から満員のバスと電車で通勤だ。自転車で行き帰りできる日が待ち遠しい。

 1月に始まった通常国会も残りわずか。週末はG20が待っているから、安倍晋三首相は気もそぞろ? いやいや、消化試合でいいはずがない。

 ここにきて注目の年金問題は、財政検証が例年より遅れて選挙後になるということで、議論の材料が揃わない。もちろん政争の具にすることは避けるべきだが、それってないよな。予算委員会はずっと開かれないし、選挙に向けた与党の戦略はわかりやすすぎて呆れるばかり。でも安倍内閣の支持率はほぼ横ばい。

 消費税について安倍政権は10%への増税を打ち出した。小誌は“「5%以下への減税」を求めることに賛成?反対?”というリレー記事を展開してきた。

 今週号の対談で、雨宮処凛、中島岳志両編集委員は減税の必要を強く説いている。だが、野党の合意は、凍結どまりとなっている。今週号でリレー記事は一区切りとします。

知恵を広める

「逃亡犯条例」改正案をめぐる、香港の立て続けのデモには目を奪われた。本誌今週号で報告している。人々の抗議は改正手続きの無期限延期を引き出したが、行政長官の退任を求めるステージに入った。

〈自由は自分たちで守っていく〉という気概、おおいに見倣いたい。東京・渋谷でも、香港の人々を支援する集会が行なわれ、道行く若者、外国人も参加して、これまでにない直接行動になったようだ。

 先週末には「年金2000万円不足問題」に関連したデモも東京・日比谷で行なわれた。こちらも誌面で取り上げたが、このデモ、ホリエモンがツイッターでくさしていた。批判の意味は不明だ。

 国会パブリックビューイング代表の上西充子さんの話題の書『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)を開く。「若者の思考の枠組みを縛」る呪いの言葉に、〈デモなんかで何が変わるの?〉がある。「デモにも行かずに何かが変えられると思うの?」と切り返せるよって言う。そういう知恵を広めること、日本では重要だと思う。

身が引き締まる

 厚生年金受給世帯で平均月5万5000円、30年間で2000万円収入が不足するという金融審議会市場WG報告書の数字が波紋をよんでいる。そんなに貯金できないよ、と個人的にはため息。

 6月10日、テレビ中継された参院決算委員会総括質疑でのやりとりだ。小池晃議員(共産)が問いただすと、背広のボタンをかけながら安倍晋三首相が答弁に立つ。首相:「……平均値を果たして出すことに意味があるのかどうかということも議論しなければいけないわけでございまして……」。苦し紛れに数字自体を陳腐化する。小池議員:「平均の数字を出してきたのは政府ですよ。……だからあなたたちの議論に基づいて私は指摘をしているんですよ」。呆れて問い返す小池議員。その姿を隣席から見上げ、同意するかのように小さく頷いているのは、あの西田昌司議員(自民)じゃないか。

 小池議員によると不足分は教養娯楽費と交際費。平均値で前者は月2万5000円。本誌の毎月の購読料は……。身が引き締まる。

学ぶことばかり

 今週号36頁で登場いただいた駿河敬次郎医師からお電話をいただいたのは連休明けの校了日だった。

「今日、×時から出かけなければいけないので、いらっしゃるのは×時にお願いしたい」。

 駿河先生には休み前、棒ゲラで先生の発言部分の確認をお願いしていた。10連休明けだったので編集部を留守にするのに躊躇した。筆者の村上朝子さんにお任せするつもりだったが、先生の優しいお声を直接聞くと、どうにも参上しないわけにはいかなくなった。

 村上さんと、先生を紹介してくださった永井元さんとドキドキしながら診療所にうかがうと、先生が一つずつ発言について確認をされていく。

〈この表現で、読者に正しく伝わるだろうか、こっちのほうが適切ではないだろうか〉

 丁寧に問うていく。私たちも意見を言う。作業が終わって追加で先生の写真を撮らせて貰う。〈携帯でとれますからね〉。見ると先生の携帯電話がガラケーからスマホに変わっていた。駿河医師は98歳。今回の取材、本当に学ぶことばかりだった。