編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

チャンスはある

 今週号が出るころは選挙戦も大詰めだ。経済を立て直した安倍政権という自己評価がいかにおかしいか、今週号の佐々木実さんによる「経済私考」をお読みいただければわかるだろう。「史上最高のGDP(国内総生産)」をめぐるかさ上げ疑惑だ。

 小池百合子希望の党代表から「排除」発言を引き出したのは、今週号に記事を執筆されている横田一さんだ。キャリアが豊富な上に地道な取材をされる謙虚な方だ。都知事の非公式会見で横田さんが「(小池氏が前原氏と)共謀して『リベラル派大量虐殺、公認拒否』とも言われているのですが」と質問を向けると、小池都知事は思わず「(リベラル派を)排除いたします」と答えてしまったのだ。

 安倍政権の復興相を質問攻めにして「出ていけ」と言わしめた西中誠一郎さんも、こまめに集会を取材されていて、行く先々で見かけることが多い(復興相は別件も重なり後に辞任)。政治家の嘘を暴くのはジャーナリストの使命だ。投票日まで、まだチャンスはある。

新しいステージ

 今回の総選挙、289小選挙区中、249区で野党候補の一本化が成立したという。公示日直前、市民連合の集会に野党の3党首がやってくるというので、私も参加した。吉田忠智社民党党首がいうように、今回の総選挙は、安倍政権打倒と憲法改悪阻止が目標だ。枝野幸男立憲民主党代表のスピーチ、「いいな」と思った。「この選挙の主役」のところで、「安倍政権に、ヘンだぞ、おかしいぞと声をあげてきた皆さん」だけでなく、「声をあげられなかった皆さん」にも言及したのだ。

 この選挙で投票権を持つMさんは、今年1月に会った時、都立高生でありながら1日16時間働いていた。卒業後の専門学校の学費を貯めるために。だが、この夏、高校を辞めてしまった。理由はわからない。今回の選挙に立候補した方々は、ぜひ、彼・彼女らの声を聞き、その声を政策に活かしてほしいと思う。この総選挙が広い意味で、志位和夫・日本共産党委員長のいうように「市民と野党の共闘の、新しいステージ」になることを願っている。

選挙報道

 10日の公示を前に、情報が日々入り乱れ、状況が刻々と変わっていく。週刊誌というメディア特性をどう生かして選挙の誌面を作っていくか、本誌編集部もいま汗を流し、頭を悩ませている。

 1日は東京・新宿で行なわれたデモに参加した。市民も政治に声をあげようと企画された。参加者は1500人。枝野幸男議員と山添拓議員も駆けつけた。枝野議員は「社会の軸となるべき基本は守る。もう少しお待ちください」とスピーチ。その言葉通り翌日「立憲民主党」結党を表明。

 デモの途中、右翼の街宣車と鉢合わせし、罵声の連呼を浴びた。すごい騒音なのだ。私の前に1歳のお子さんが抱っこされていたので怖がらないか心配したが、スヤスヤ眠り続けている。「この時間、おやすみタイムだから」と母親は笑っている。大物だ。

 一つ嬉しかったのは、「resist」と大書されたプラカード。そこに添えられていたのが、ドクロではなく、笑っている人の顔だったのだ。

 しばらく選挙報道が続く。

解散・総選挙へ

 解散・総選挙へ。予想通り”エセ改革新党”に有象無象が結集(失礼!)。壊憲阻止へ、本誌も力を注ぎます!

「メディア一撃」は今週号で連載を終了する。2010年からの人気コラムだった。なかでも髙嶋伸欣さんは06年からの「メディアウオッチング」を、浅野健一さん、中嶋啓明さん、山口正紀さんは、1997年からの「人権とメディア」を引き継いだので、本当に長丁場だった。

 たくさんの人が亡くなる事件が起きた時、いたたまれず追悼する会に私は駆けつけた。会は非公開で取材はお断りだったが、本誌関係者が5人その場にいた。「草の根www.」の岩本太郎さんもその1人。会の後、みんなでビールを1杯だけ飲み、話をした。書く、書かないに関係なくフットワークよく動き、議論をする。岩本さんの取材活動の一端をかいまみた気がした。

 砂川浩慶さん、田島泰彦さんにも毎回シャープな批評をいただいた。執筆陣には引き続き協力いただけることと思う。目下、新しいメディア欄を準備中だ。

歴史に向き合う

 アイヌ民族の遺骨問題は度々本誌で取り上げてきたが、今回大きな返還の動きがあったので特集を組んだ。実は沖縄でも研究目的のために琉球民族の遺骨が墓から持ち去られる事態が起きていたことを、平野次郎さんが6月23日号で報じていた。今週号の特集作成が佳境に入った頃、沖縄戦で集団自決の場となったチビチリガマが荒らされたというニュースが入ってきた。

 大田昌秀元沖縄県知事の遺稿『沖縄鉄血勤皇隊』(高文研)を思い起こした。戦場に散った鉄血勤皇隊の遺骨を、戦後学校に戻った大田らが収集しようとしたところ、「不必要に米軍を刺激する」として学校が拒否したのだ。

 当時、住民の自由な移動を米軍が禁じていたこともあるが、食糧の提供を米軍に止められることを学校側は恐れたのだという。だが、生徒は、そこで諦めたら、自分たちは「人間として腐ってい」るとして折れなかったという。今回の事態、歴史の風化として片づけていいのだろうか。チビチリガマは渡瀬夏彦さんが今週号で記事にしてくれた。

総がかり

〈自民党としては秋の臨時国会で憲法改正について案を提示し、来年の通常国会で発議をめざす〉むね高村正彦同党副総裁が発言。そのニュースが流れた翌日の8日、都内で「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」9・8キック・オフ集会が開かれた。

 今週号で小石勝朗さんのレポートがあるのでお読みいただきたい。私は開始時間ぎりぎりに駆け付けたが、席がない。同じように、ロビーのモニターで発言をきく参加者も多数いらした。いよいよ市民の側も「総がかり」を超える「総がかり」で運動を始めるときがきた。本誌の関連では編集委員、連載コラムニスト、常連執筆者の方々が登壇した。

 集会解散後、I部員は会場外で23日に予定している「添田唖蝉坊イベント」のチラシを配布していたが、「しゅうかんきんようびです!」と道端で本誌を手に声をあげている方がいた。ボランティアで本誌を販売してくれている読者だった。本誌も文字通り「総がかり」。これからさらに安倍改憲阻止に向かって企画を打って行きます。

警戒したい

 来年度の概算要求が8月末日に出された。総額101兆円規模となり、4年続けて100兆円超えだそうだ。

 財務省の査定によってこれを3兆円ほど圧縮するというが……。あまりに大きな数字で実感が湧かない。だが防衛予算が過去最大規模の5・2兆円というのは素直に驚く。今週号、半田滋さんの記事によると、「目玉商品として北朝鮮のミサイル発射に備える新型の地対空迎撃ミサイル『イージス・アショア』の新規導入が盛り込まれた」という。〈この機に乗じて〉、という疑いは拭いがたい。

 また、厚生労働省のほうも31・4兆円ということでこちらも過去最大規模。

 高齢化が進んだことや高額薬剤の増加が影響したという。高額薬剤とは、昨年の財政制度等審議会財政制度分科会で、使用規制や投与条件が議論された抗悪性腫瘍剤などの薬剤のことだろう。費用対効果が吟味される動きが出ているのは当然のことだが、エビデンスがないところで年齢などにより使用抑制する動きは警戒したい。

「横浜・寿町の障がい者はいま」について

 小誌8月18日号42~43ページ「横浜・寿町の障がい者はいま 福祉から排除された人びと」の記事に対して、誤った取材に基づく記事で、差別的な表現もあり、偏見を助長するとのご指摘が、寿町にかかわる複数の方から寄せられました。

 編集部で、筆者、および記事に関係する方数人に確認するなどした結果、全体として、不正確な取材に基づくために、誤った記述や偏見を助長しかねない差別的表現に至っていること、記事中のコメントも、43ページ3段8行目から15行目の越智祥太医師のご発言をはじめ、事実と異なるだけでなく、原稿段階でのご本人の確認をとっていないことも判明しました。

 編集部として、こうした記事を正確にチェックせず、掲載してしまったことを深くお詫び申し上げるとともに、寿町の障がい者福祉施策、および、社会的ネットワークの現状について、当該記事の検証となる記事を改めて掲載する予定です。関係者、および、読者のみなさまにご迷惑をおかけしたことを改めてお詫び申し上げます。

1万筆を超えた

「公正さ」という言葉が安倍晋三首相には理解できていないとしか思えない。佐川宣寿国税庁長官(前財務省理財局長)の罷免を求める要望書が目標の1万筆を超えた署名を添えて21日、財務省と国税庁に提出された。

「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」がネットなどで署名を呼びかけた成果だ。佐川氏に関しては国会での答弁が虚偽であることが、報道などで明らかになっている。罷免を求める主な理由は、日本国憲法15条第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」で謳われている適格性を欠くことだ。

 にもかかわらず、税金を集める役所のトップに収まり恒例の就任会見も開かずじまいというのは、呆れるしかない。

「首相の悪事をかばうことで出世が叶うなら社会正義などなくなってしまう」「税務職員として仕事がしにくいので、早く辞めてくださるようお願いします」などの声が同会には寄せられている。「人の噂も七十五日」、このまま逃げられると考えているとしたら、大間違いだ。

安全の内実

 米領グアム島沖を標的とした朝鮮民主主義人民共和国による“ミサイル発射計画”なるものに対し、日本政府は大掛かりな準備を整えた。本当にミサイルが落ちてくるの?

 一方、米軍の普天間飛行場所属のオスプレイが今月5日、オーストラリア沖で墜落事故を起こした。政府はいったん国内の飛行自粛を要請したものの、事故原因が明らかになったわけでもないのに、11日には飛行を容認した。

 ミサイルとオスプレイ、もともと比較にならない話で、どちらがどれだけ危険性があるのか、正直私にはわからない。前者は集団的自衛権の問題も絡んでいるようだ。だが、少なくともデモンストレーションでなく、住民の安全を第一に考えているのなら、一貫した態度を示すべきだろう。これだけ事故が頻発するオスプレイの飛行に対して、厳然とした態度が、なぜとれないのか。

 安全の内実を軽んずる日本政府、その長たる安倍晋三首相の言動に、私たちは悲しいかな、慣れっこになってしまっている。