編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

演劇大賞に明治大学

 台風15号で被災された方々は依然困難な状況にあるという。ブルーシートを留める土嚢上げなど大変な作業がつづく。安全・健康面に十分に注意したい。

 連休が続く9月も残り1週間。22日は都内で行なわれた演劇インターカレッジ、大学生演劇選手権の決勝本戦を観る機会があった。15分の制限時間を7チームがオリジナル脚本で競う。

「演劇大賞」受賞は『ひがいしゃのかい』を演じた明治大学のワラスメントボーイズ。よく練りあげられた台本、それぞれのキャラが立つ熱演で会場は爆笑の渦に。被害がヒステリックに語られる分断された社会に、最後には信頼が取り戻される展開は見事。演劇の醍醐味を味わわせて貰った。

 ただ、作品の中には、周りの若い観客が笑っているのに私はついていけないジョークも。トホホ。

 23日はコンサート・自由な風の歌14合唱団の練習に参加。今年は10月6日(日)14時、都内・杉並公会堂大ホールで開催します。崔善愛編集委員も出演されます。よろしかったどうぞ。

議論より救援

 台風15号の影響で被災された多くの皆様にお見舞いを申し上げます。東京電力の発表によるといまだ6万4800軒が停電しているという。自然災害の怖さをまたしても見せつけられた。エアコンが使えず熱中症で亡くなられた方もいた。

 守れる命を守ることに政府や自治体は全力を挙げてほしい。私どももメディアに関わる者として、被害の状況にもっと敏感であるべきだったと申し訳なく思う。

 この事態に及んでも豪雨災害への対策は迅速かつ適切だったと会見する菅義偉官房長官には唖然とするばかりだ。上西充子法政大学教授は、「豪雨」といいきっているところが、強風による被害が出た今回の台風をずらした「ご飯論法」ではないか、とツイッターで見立てを述べていらした。

 いずれにしても政府は組閣を延ばして対策にあたるべきだった。新聞の「首相動静」をみても危機感はない。安倍晋三首相が必要性を説く緊急事態条項に説得力がないことがまたしても実証されたわけだ。としてもまずは議論より救援だ。

日韓関係

「こういうズルいのがいちばん許せんさ」

 週末、実家に帰って87歳の母と会話をしていて驚いた。韓国の曺国法務大臣(その時は候補者)の子どもの有名大学への不正入学疑惑を罵る言葉を聞いたからだ。先週号の「金曜日から」で渡辺が言っていたのはこういうことだったのか、と納得。

 11時間に及ぶ記者との質疑などすっとんで、追及を逃れて逃げ回る日本の与党政治家と重ねているようにも思える。どうして韓国の一閣僚のことばかりテレビのワイドショーは騒ぎ立てるのか。消費税増税前の混乱や、日露首脳会談の“成果”を吟味することも大切だと思うのだけど。

 家に戻り、韓国のBTS、SEVENTEENらがお気に入りの高校3年の子どもに、その界隈で今回の日韓関係悪化がどう受け止められているかきいた。

「ここしばらくは韓国に行けないね、とか話が出たけど」。ふーん、静観か。ちょっと寂しいけど。あ、でも受験が待ってる君たちが行けるわけないよね、とイヤミが口をついて出そうになるのを私は抑えた。

まだまだ足りない

「竹島も本当に交渉で返ってくるんですかね?戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」。丸山穂高議員のツイッター(8月31日)は呆れるばかりだ。”戦争も辞さない”という同様の過去の発言は、議員辞職を促す「糾弾決議」が衆院全会一致で出されたはずだ。その主張をこのタイミングで繰り返す議員の目論見は想像さえしたくない。強い批判はなされているが、韓国ヘイトは過熱するばかり。『週刊ポスト』の特集記事はやはり一線を越えている。ただ、これまでの同誌の論調とどこが違うのか。

「徴用工」問題について本誌の解説がほしいと多数の読者から要望を戴いていた。今週号でそれに応える企画を組んだが、まだまだ足りない。次週も日韓問題に取り組む。本誌8月2日号のボーダーツーリズムの特集に「常に他者と接触する地域は、ナショナリズムに傾斜したときでさえ、他者を包摂する必要性を忘れない」とある。彼・彼女らの怒りと困惑を今回の騒動中に聞いたが、安倍政権はどう応えるのだろう。