編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

疑問にこたえる

〈元「慰安婦」を支援する“日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯”(「正義連」)の不正問題をなぜ、取りあげないのか〉という問い合わせを読者から複数いただいていた。〈自分たちに都合の悪いニュースだから扱わないのか〉とも。

 もちろんそんなことはない。5月22日号のアンテナ欄で1頁を使って第一報は載せている。ただ、韓国内での出来事でもあり、自分たちで自由に取材ができないために、慎重に事態の推移をみてきたことは事実だ。

 今週号でようやく、韓国在住の研究者、吉方べきさんの執筆記事を載せることができた。ナヌムの家の支援金問題は、提携している韓国の『時事イン』の記事を転載した。

 戦後補償に関わる問題になると、国内でお目にかかるのは首をかしげたくなる記事ばかりだ。そんな中、一連の報道に胸を痛め、事態をどう考えたらいいのか、困惑している方も多いと思う。吉方さんの記事は、その疑問に十分にこたえる内容になっていると思う。

目から鱗

「アベノマスク」受注でにわかに注目された福島市のユースビオ。その社長宅が契約当時競売中だったことがジャーナリスト・三宅勝久さんの取材で明らかになった。

 厚生労働省との巨額の契約が成立。ユースビオに入金後、競売は取り下げられたという。そもそもユースビオは「役員は社長1人。実績不明、看板も電話番号の届けもない」会社。なぜそこにタイミングよくアベノマスクの仕事が舞い込んだのだろう。謎は深まるばかりだ。詳しくは今週号のアンテナ欄をご覧下さい。

 持続化給付金事業の委託や外注事業をめぐる疑惑は、先週号に引き続いて片岡伸行さんの「追及!政権腐敗」シリーズで取りあげている。あまりにお粗末で怒りを通り越してあきれるばかりだ。なぜこんなひどいことがまかり通っていたのか、今週号、佐々木実さんの「経済私考」を読むと理解できる。また、公的サービスを「民」に委ねることについてずっと言われ続けてきたこと、ある通念に、佐々木さんは疑問をはさむ。”目から鱗”だった。

編集部へのエール

 一時期、都内でも朝夕の空気が新鮮に感じられたが、人混みや往来が戻るにつれ、そういった感覚もなくなりつつある。

 だが、行き帰り、自転車通勤の人を以前より多く見かけるようになった。区で貸し出す自転車を利用する人も多い。この動きは一時的なもの? それとも定着するのか、私には想像もつかない。

 コロナ禍で各地にある金曜日の読者会も開催がままならない。だが、可能な形で継続されている会もある。週刊金曜日を応援する会・神奈川の厳しい5月15号への感想、北多摩(東京20区)読者会の変革の意欲に満ちたアピール文(5月22日号に抜粋を掲載)などなど、部内でも問題意識を共有させてもらっている。

 6月4日には、オンラインでの読者会に参加させてもらった。室蘭、東京から東濃へ!、関門・北九州など各読者会の方と繋がった。みなさん各地で現場を持って活動されていて話題が尽きない。読者に阿ることなく「正々堂々と」──編集部へのエールとしてしかと受けとめたい。

時間をかけて

 ピカピカの小学1年生と保護者が何組も手をつないで向こうから歩いてくる。そうか、きょうは入学式。小雨の降る中、校門前では先生が待機し、児童らが間隔をおいて入場できるように取り計らっていた。

 学校が再開すればしたで、コロナウイルスの感染回避のために毎日の生活で気をつけなければいけないことがあってたいへんだ。第2波、第3波の心配もある。

 東京都立高校の場合、夏休みと冬休みが極端に短くなるようだ。それもどうかな、と思う。かりに栄養が不足している期間があったからといって、いきなり多量の栄養を与えられても摂取できるものではない。勉強も同じだ。

 コロナ禍でストレスもたまっているだろうし、不安もある。無理は禁物だ。短期間で解消するのではなく、時間をかけて通常生活にもどれるといい。

「9月入学」をこの機会に、という話もあるが、無理がある。政治家のポイント稼ぎのために現場が犠牲になるのは言語道断と思っていたら「来年度導入断念」。よかった。