編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

千葉選挙区でトップ当選をした石井準一氏の個人演説会を取材していた。

編集長後記

 七月一五日、結果的に千葉選挙区でトップ当選をした石井準一氏の個人演説会を取材していた。二〇〇〇人入る会場は中高年が大部分とはいえ、ほぼ満席だった。

 動員された自民県連、JA、公明党以外の一般参加者のお目当ては急遽てこ入れに入った安倍晋三首相。自民県連の独自調査では共産党候補が猛追していたのだ。演説会で自民の現職や候補者は、「選挙区は○○(自民候補)。比例区は○○(自民候補)と○○(公明候補)に一票をお願いします」と挨拶したが、これはいかにも嘘くさい。自民支持者が自民候補に入れずに公明候補に入れることはまず考えられないからだ。 

 一方、公明の富田茂之衆院議員も立場を入れ替えて同じことを演説。しかし公明は四人区以上でないと候補者を立てなかったから、選挙区の一票はまず自民候補に流れていたはずだ。自公選挙協力体制と小選挙区という複合的集票体制は、若者の政治・選挙離れが続く限り機能する。次の三年間でやることはもう見えているはずだ。 (平井康嗣)

バリバリ働いている中堅官僚と話していたら、自分の老後はこのままでいいのかと考えてしまったと言う。

編集長後記

 霞ヶ関でバリバリ働いている中堅官僚と話していたら、自分の老後はこのままでいいのかと考えてしまったと言う。先日、彼は弟の結婚式に出席するために西日本の実家に帰った。すると郷里で就職し小中学校からの友人たちと付き合い続けている弟の姿が意外にもまぶしく映った。彼は、偏差値の高い学校に次々に進学して官僚になり、国際機関にも出向した。志も高い人物だ。しかし今、仕事関係と家庭しか人間関係がない。おそらく退職後には友のいない寂しい人生が待っているということに直面した。

 彼の話はよくわかる。大人になるほど周辺の人間関係は同質化しがちだ。仕事や趣味や価値観を同じくし自分が受け入れられる人とだけ付き合ってしまう。スクールカーストではないが小中学校の人間関係はたいていきつい。だが、記号でつながる関係は容易だが、心でつながる関係は得難い。過去に戻って友人はつくれない。細々と小学校以来の友人たちと付き合っていることをぼくはあらためてありがたく思った。 (平井康嗣)

投票率が低い場合、組織票を持ち歴史のある政党が有利らしい

編集長後記

 日本の選挙では投票率が低い場合、組織票を持ち歴史のある政党が有利らしい。そのような政党は自民党、公明党、共産党である。中でも自公は選挙協力で見事に国・都道府県・市区町村で候補者の棲み分けを図っている。日本の議会を牛耳る絶妙な布陣であり、同党以外の政治家には絶望的な堅い壁でもある。

 かつては自民党議員が中心となった「四月会」という反公明党・創価学会の有識者組織があった。当時は池田大作名誉会長の国会証人喚問が取り沙汰されていたが、一九九九年、単独過半数獲得がもはや不可能になった自民とそんな公明が連立と選挙協力というパンドラの箱を開け、四月会は姿を消した。参加議員も党を割り、かくして自民党は白血球が病原体を殺食するように異分子を次々に排出した。雇用を流動化させて非正規を生んだのに、終身雇用で会社、あ、ではなく党に忠誠を誓う政治家が「本流」とされ純化と寡占が進んでいる。

 日本の議会選挙を、このあまったパイの奪い合いにしてはいけない。 (平井康嗣)

人類は宇宙植民地へ移住していった――という物語がSFに組み込まれるのは常套だった

編集長後記

 将来、地球の人口が爆発的に増加すると考え、人類は「宇宙移住計画」を実施し宇宙植民地へ移住していった――という物語がガンダム始めSFに組み込まれるのは常套だったが、今の日本では別の意味でフィクションになった。宇宙移住よりも人口増加がフィクションになったからだ。
「人口推計」などによれば、今一億二八〇〇万人ほどの人口は、二〇六〇年には八六七四万人ほどになる。そのうち六五歳以上は三四六〇万人ほどを占める予定だ(米国は一・五倍に増加する試算)。

 その一方、都市部では地方からも流入した「団塊の世代」らが後期高齢者になる二〇二五年から病床も老人ホームが急激に不足し、受け入れ先がないまま溢れ出すとされる。そのため厚労省は在宅医療などに必死に力を入れている。

 それでも最近は定住外国人に差別的な発言が目立ってきている。日本から優秀な人材が流出するということは、優秀な外国人が日本に来たくないという意味でもあろう。その原因は経済的な面ばかりではないはずだ。 (平井康嗣)