編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

最近感銘を受けたこと

 最近感銘を受けたこと。

▼「毎号全部読んでいます」
 修学旅行の自由時間で、出版業に興味を持つある県の高校2年生9人が弊社を訪れた。数ある出版社の中で弊社を見学先に推薦してくれたその中の一人の高校生が、明るい声でこう言ったのだ。社員の側からどよめきが。創刊以来、毎号読破されている方もいるが、高校生では珍しい。テレビやネットで情報を簡単に得ることができる時代に、なぜ雑誌なのか、なぜ弊誌なのか。いろんなヒントを戴けた。みなさん、ありがとう。

▼「この弁護士さんは……」
 韓国の元徴用工裁判の判決をうけ、原告の弁護士さんが来日して記者会見をした。その方の名前とお顔に見覚えがあった。『怒りのソウル』で雨宮処凛さんがインタビューをした時、その人はソウル大学の院生だった。兵役拒否をして1年6カ月の懲役刑をうけていた。林宰成さん、あなたではないですか。「9条が作り出した影が韓国の兵役拒否」と語った林さん。日本社会はあなたの問題提起にまだ応答できていない。

命や暮らし

「(与党議員は野党議員に)ルールを守れ、ルールを守れ、必死に叫んでますけど、その元気があるなら、民主主義のルールの根幹である公文書改竄で、民主主義の根幹のルールを壊した安倍政権そのものに対して、ルールを守れというべきではないですか」

 今月10日に閉会した国会。7日の参議院本会議で森ゆうこ議員が農林水産委員長解任決議案の趣旨説明冒頭、力を込めてこう問うていた。まっとうな主張に溜飲が下がる。

 70年ぶりの大改正となる漁業法の改正案について、鈴木宣弘東京大学大学院教授から夏頃、警告を戴いていた。だが、本誌ではなんの注意喚起もできなかった。今週の政治時評欄で佐藤甲一氏が言及されている。

 今国会で矢継ぎ早に出された法案は、命や暮らしに関わる重大な法案であったにもかかわらず、議論が尽くされぬまま、問答無用で次々と可決されていった。「黄色いベスト」さんの指南をいただくまでもなく、攻撃の用意はできている。この怒り、参院選で晴らさぬものか。

大事なのは

 公開が気になっていた『ボヘミアン・ラプソディ』。ふらっと行ったら満員でアウト。先週末ようやく観ることができた。1970~80年代に活躍した英国のロックグループ、クイーンのフレディ・マーキュリーを描いた作品だ。

 地方の中学に通っていた頃、ロックになんか興味がない同級生の女の子が夢中で聴いていた。私の趣味とは違っていたけど、のびのある野生的なフレディの高音が魅力だった。映画ではその歌声が流れる。楽曲の良さを堪能できるシンプルな作りがいい。

 フレディはインド系。民族、宗教、性的指向のマイノリティとして苦悩する姿も。大手と契約したクイーンが最初にツアーでいくのが高度成長を続ける日本だ。当時英国は、自国民が「三流国」と自虐ネタにするほど低成長の時代。でも、音楽はすばらしかった。

 しかし今や日本が三流国の仲間入り。それでも個人的にはオーケーだ。大事なのは、日本に他者を迎え入れる土壌があるかどうか、マイノリティが孤立せずにすむかどうかだ。