編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

民主党の新しい党首、つまり新しい総理大臣が月末に決まるが、

編集長後記

 民主党の新しい党首、つまり新しい総理大臣が月末に決まるが、
全く気分が盛り上がらない。

筆頭候補にも挙がっている野田佳彦という人はかねてから首相候補者と取り沙汰されてきた人だが、地味で何を考えているのか今ひとつ見えない。

さらに財務省路線かつ保守的な性向は今ひとつ気に入らないが、この人が繰り返し強調してきた次の点はおおいに支持できた。

〈子どもの貧困は発展途上国や敗戦直後の日本の社会問題ではなく、極めて今日的な問題だと認識しなければなりません。だからこそ、「子ども手当」や「高校の無償化」は断じてバラマキではなく、必要な投資だととらえるべきです。〉
(二〇一〇年二月二一日の野田氏のブログ「かわら版」より)。

 民主党が政権交代をなしえた原点は、見捨てられていた集団への目線が存在したことである。しかし大連立という禁断の果実を横目に、「バラマキ」を廃止する方向で野党と妥協した。

 政府を選べない怒りが、無政府への衝動に変わるのが怖い。
(平井康嗣)

再生可能エネルギー法案も八月中に成立の見込みだ。

編集長後記

 原発と両立することから、もともと成立する可能性があった再生可能エネルギー法案も八月中に成立の見込みだ。成立すれば首相辞任の条件が揃うので菅政権は惰性状態にある。

 一五日の敗戦記念日、靖国神社に、自民党の国会議員などが参拝する中、官邸では原子力安全庁が閣議決定された。四〇〇人もの職員を抱えるとも言われており、原発は依存度を低減させるというが暫く維持されていく。生ぬるい。かつて戦争に突き進んだ日本は男が牛耳り、原発の後始末も男中心で幕引きされた。その菅内閣では、最後には女性閣僚が一人もいなくなっていた。この点においてだけでも首相の鈍感さが、十分ににじみ出ていると思う。

 福島や関東で、原発事故が引き起こした放射能汚染から子どもたちを守ろうと、中心でたたかってきたのは母親ら女性たちであった。この意味を首相は考えたのだろうか。結局、菅首相は国民の未来を見詰めようとしていたのか大きな疑問がふつふつとわくのである。政治は結局、財務省主導で進みはじめている。(平井康嗣)

7月27日の衆議院厚生労働委員会

七月二七日の衆議院厚生労働委員会で、参考人として児玉龍彦・東京大学アイソトープ総合センター長が放射線の健康への影響について意見陳述をしたことが感動をもって話題になっている。歯に衣を着せぬ熱弁だから当然だ。速記録からいくつか引用する。
「まず、熱量からの計算では、広島原爆の二十九・六個分のものが漏出しております」「これまでの知見で原爆による放射線の残存量と原発から放出されたものの放射線の残存量は、一年たって原爆が千分の一程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は十分の一程度にしかならない」「内部被曝というのは、先ほどから一般的に何ミリシーベルトという形で言われていますが、そういうものは全く意味がありません」「緊急に、子供の被曝を減少させるために新しい法律を制定してください。私のやっているのは、すべて法律違反です」
 東大は地元民のために高線量の放射性廃棄物を持って帰っているというのだ。衆議院のwebテレビをぜひ傍聴してほしい。 (平井康嗣)