編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

ポケモンGO

 AR(拡張現実)ゲームのポケモンGOが子どもの夏休みにあわせてリリースされ、大人も巻き込み日本中でニュースになった。夏が終わればブームも一段落するのだろう。

 さて、子どもに人気のある二大アニメはポケモンと妖怪ウォッチだが、両者の違いについて、日本のパブリックリレーションズ(PR)の草分けである井之上喬氏風に分析すると、両者の持っているコンテクスト(文脈)の違いが大きい。

 いずれも子どもを主人公に仲間や友情や勇気を描く世界共通の物語ではあるが、ポケモンは設定から登場キャラまで多国籍かつ無国籍だ。一方、妖怪ウォッチは、小学生を主人公に日本人だけがわかるような文脈の妖怪やギャグをつめこみ共感を誘う。これだと日本人に受けるほど外国人には敷居が高くなる。日本で流行っても世界に通じるわけではない。

 井之上氏によれば、PRとは倫理観を伴い自己修正される双方向の関係構築だそうだ。特集の日中間でも文脈の理解を強要せずにすむ関係構築をしていきたいものだ。

一強支配の意味

 自民党の一強支配が意味するものはなにか。それは組織は割れれば弱くなるということだ。

 立党以来の党是という自主憲法制定も、自民党は一貫して強く主張してきたわけではない。政権与党は日本に住む全住民を相手に政治をせねばならぬから、優先されるのは自ずと大衆の日々の暮らしであった。

 だから55年体制以来の歴史は同党に引き継がれているとはいえ、歴史の内実にズレはある。一方戦後の47年、比較第一党である社会党の内閣が存在したが、連立ゆえに基盤が弱く、産業界の反発や内部分裂もあり、片山哲首相は1年足らずで退陣。その後、社会党は左右に分裂するが護憲と反日米安保で統一し、対抗して自民党も誕生した。そして自民党だけが分裂の危機を乗り越えながら今に至る。

 “永遠の野党”日本共産党も政策を修正しながら2022年で立党100年を迎え、存在感を示す。2人が同調すれば政治は生まれるが、政権政党は大衆を相手にする。野党が未来を見すえるならば、今はふてぶてしいまでの忍耐が必要だ。

五輪と利権

 改憲勢力3分の2という参議院選挙のショックも冷めぬ中、関東圏では東京都知事選に話題が集中している。東京は一地方都市だが、各国のGDPと比較すると世界14位とも言われる巨大都市だ。とうぜん利権も莫大である。

 そのため与党である自民党都議会がもつ権限も巨大だといえる。そんな東京で待ち受けるのが2020年の東京五輪である。私の目からすれば、石原都政から始まった五輪招致は都内を再開発するための大義名分だった。

 それはさておき五輪がワールドカップなどと違うのは、「平和の祭典」であるという点だ。五輪選手村は、選手の下半身問題などネガティブな面ばかりとりあげられるが、主眼は思想信条の違う世界中の若者たちが国境のない選手村で相互理解を深めて国際社会に平和を持ち帰っていくことに意味がある。

 きれい事だがそれがオリンピックの理想であるならば賛同したい。しかし福島原発事故の影響隠しや、利権にまみれた実態を知ると日本に開催国としての資格があるのか問いたくもなる。

イヤな感じ

 今回の参院選は争点隠し選挙とも呼ばれる。自公与党が後出しジャンケンで、野党の政策を取り入れて一見、争点を無くすからだ。

 そうすれば有権者が改革を促すために野党に投票する動機が弱まる。だから安倍首相は改憲や安保法など民共と対立する問題の争点化を避け、改憲について遊説では一切に口にしないという。

 本欄でたびたび繰り返すが、そもそも自民の「保守」は、ある一時代(妄想上の)の体制を護るための反動「保守」だ。その一時代は復古的イデオロギーの時代であり、経済面では大企業を護る「保守」だ。それは立党以来変わらないが、労働法制が改悪され、政府が企業にさせてきた労働者への再分配が崩壊しつつあり、労働者が大企業や政府からも見捨てられつつある中でより顕在化してきた。

 余波は企業労働者の家族にも及び、「子どもの貧困」「一億総下流」という言葉まで出ている。庶民の暮らしに対策しないと不満が広がるのは当たり前だ。しかしそれを渋り続ける自民政治の「貧困さ」が、「イヤな感じ」だ。

空疎な反動と敵視政策

 6月24日の新聞調査による参院選挙予測では、自公ら改憲勢力は改憲発議に必要な3分の2に届くそうだ。その中心にいる自民は常々「わが党の立党以来の党是である自主憲法制定」という言葉を使う。立党の志を大切にしているようだ。そもそも自民は左右の社会党が統一したことを受け、日本民主党と自由党が合同して1955年に誕生。そのときに立党宣言や綱領、党の使命を発表している。

〈わが党は、自由、人権、民主主義、議会政治の擁護を根本の理念とし、独裁を企図する共産主義勢力、階級社会主義勢力と徹底的に闘うとともに、秩序と伝統の中につねに進歩を求め、反省を怠らず、公明なる責任政治を確立〉(「党の使命」)などとある。

 つまり共産党と社会党という革新に対する反動保守として立党された。大企業の支持で生まれた自民党が、いまも労働者を警戒し大企業優遇をするのは当たり前なのだろう。この空疎な反動と敵視政策こそが自民党らしさであり、もっとも体現している人が安倍首相であろう。