衆議院選挙で実施される国民審査

最高裁を裁く

 司法の最高機関である最高裁判所。その判断は、私たち一人ひとりの命と尊厳、暮らしに大きな影響を与えてきた。ごく稀ではあるが国会で制定された法律を「憲法違反」との理由から無効にしたこともある。その最高裁で働く裁判官たちは、私たちのほとんどにとって遠い存在だ。顔どころか名前を思い浮かべることも難しい。

 衆議院選挙にあわせて実施される最高裁裁判官の国民審査は、主権者である私たちが、裁判官をリコールできる制度だ。『週刊金曜日』編集部は今回、形骸化している国民審査制度を少しでも有意義なものにするために審査対象となる11人の裁判官について可能な限り詳しく報じるとともに、日米の研究者の協力を得てブラックボックスとされる裁判官人事や、国際社会の中での日本の最高裁の特異性を明らかにすることを試みた。

 また、今回取り上げる最高裁裁判官の判断は、選択的夫婦別姓を認めない民法や戸籍法は憲法違反だと訴えた家事審判についての大法廷決定(今年6月23日)を対象にした。理由は二つある。一つは国民審査で実質的な対象となる7人の裁判官のうち6人が「補足意見」や「反対意見」などを示し、その考えを詳しく述べていること。もう一つは、大法廷は選択的夫婦別姓制度を導入するかどうかは「国会で論じられ、判断するべきこと」と結論づけているからだ。まさに国会を構成する議員たちが選ばれようとしている。だれが、どのような理由から選択的夫婦別姓制度の導入をはばんでいるのか。本誌26ページからの特集はそれを明らかにしたものだ。あわせてお読みいただきたい。

  • 強制的 夫婦同姓制度は合憲か違憲か
    「個人の尊厳」の軽重が根底に
    佐藤和雄

    今回の国民審査の対象となる最高裁判所裁判官は本誌13ページ表の通り11人だが、そのうち4人は今年7月以降に就任しており、彼らの判断を評価できるような判決・決定はほとんどないため、16ページからの「50年変わらない6:4:5の比率」の記事とともに、表にある経歴をご覧いただくしかない。残りの7人について、夫婦同姓を定めた民法などの規定を「合憲」とした6月23日の大法廷の決定で、どのような判断を下したかを詳しくみたい。

  • 50年変わらない6:4:5の比率
    西川伸一

    最高裁判所裁判官はどのような人たちが、どのような過程を経て選ばれるのか。まもなくある国民審査の前に知っておきたい。不透明な人事を就任者の経歴から解き明かす。

  • 最高裁の違憲立法審査権行使
    何でそんなにヤル気がないの?
    デイビッド・ロー(特別寄稿)

    日本の最高裁判所は世界一保守的だと言われている。それは、違憲立法審査権をほとんど行使しないことに象徴的に現れている。なぜなのか?

総選挙の争点は選択的夫婦別姓

  • 多様な家族に対応できる国会に
    「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」井田奈穂事務局長インタビュー
    選択的夫婦別姓制度導入は戦後の長い課題で、「国際婦人年」の1975年には民法改正に関する請願が参議院に提出されている。女性差別撤廃条約の批准を経て、96年には法制審議会が選択的夫婦別姓制度導入を含む民法改正案を答申。だがそれから25年経っても実現していない。同姓強制は、信条による差別の禁止や個人の尊厳と両性の平等を謳う憲法に違反すると訴える裁判もこれまで複数提起されてきた。しかし、いずれの裁判も最高裁大法廷の多数意見は「違憲ではない」と判断し、国会で審議せよと議論を預けた。法改正をするには、賛成する国会議員を増やさなければならない。総選挙を控え、これまで全国で陳情・請願の活動をし、議員らに実情を訴えてきた井田奈穂さんに話を聞いた。
  • 意図的にミスリードをさそっているのか
    反対派の主張を家族法研究者が論破 二宮周平
    高市早苗議員ら自民党国会議員50人が、自民党籍を持つ全国42道府県議会の議長あてに「選択的夫婦別氏制度の実現を求める意見書」を採択しないよう求める文書を今年1月30日付で送っていた(議員名一覧は本誌33ページ)。この文書で、制度導入に反対する理由として挙げている主張は一見もっともなようだが、本当にそうなのか。家族法の研究者が解説する。
  • 歓喜へのフーガ(15)今回のお相手 粟津美穂さん IFCAエグゼクティブ・ディレクター
    「日本では声をあげないのはなぜ?」
    当事者参加で社会的養護の改革目指す
    聞き手 崔善愛
  • 決定迫る伊方原発運転差し止め新規仮処分
    誰でも理解できるよう難解な技術論争を回避 伊田浩之
  • たとえば世界でいま
    ドイツ/政権交代へ、焦点は連立交渉 神野直子
    エルサルバドル/なぜビットコインを自国通貨化したのか 石井陽一
  • 【提携連載企画】双葉病院置き去り事件12
    6日間で25人、約3カ月で45人が死亡 Tansa 中川七海
  • メディアウオッチ
    「子どもの安全より利益に走った」と
    フェイスブック批判がマスメディアで続出
    小池モナ

次号予告:2021年10月29日号(第1351号)

【第1特集 投票所で思い出してほしいこと 2021 衆院選】●「『桜を見る会』を追及する法律家の会」世話人、泉澤章氏に聞く●元最高裁判事、浜田邦夫弁護士に聞く●市民活動家、菱山南帆子さんに聞く
【第2特集 3・11から10年〈見えない化〉に抗う】●自公が骨抜きにした子ども・被災者支援法のいま●政治と官僚によって法の理念はどう骨抜きにされたか 制定に関わった福田健治弁護士に聞く|聞き手=本田雅和●支援法が理念通りに機能していたら、もっと多くの人が避難できたはず 北海道に避難した宍戸隆子さんに聞く|聞き手=吉田千亜●国会議員たちよ 立法による権利の確定を/移住の「選択権」を確立したチェルノブイリ法|尾松 亮●命を切り捨てて進んだ原子力開発の歴史 核被災研究者が分析するヒバクの〈見えない化〉と法の理念「骨抜き」化の共振|高橋博子
【お金】●値上げ値上げの秋を乗り越える家計やりくりヒント|内藤眞弓
【国際】●新龍中国 芸能界たたきの裏にある 中国「共同富裕」への意気込み|麻生晴一郎
【提携連載企画】●双葉病院置き去り事件「双葉病院のことは調べるな」|Tansa 中川七海
【メディア】●第3期金曜ジャーナリズム塾(第2講)|安田菜津紀●メディアウオッチ|臺 宏士
【ぶんか】●「演劇のまち」か「コロナ対策」か 平田オリザ氏招いた候補が落選、兵庫県豊岡市長選の番狂わせ|藤澤志穂子
【きんようぶんか・本】●『教育論の新常識 格差・学力・政策・未来』|高原到●『資本主義問題』|永田希●『職業としてのシネマ』|さこうますみ
【きんようぶんか・映画】●『MONOS 猿と呼ばれし者たち』|中村富美子●『我が心の香港 映画監督アン・ホイ』|田沢竜次
【音楽】●「円谷幸吉と人間」|近藤康太郎
【TVドキュメンタリー】●10月29日~放映作品から|ワタナベ=アキラ
【強力連載】●それでもそれでもそれでも|齋藤陽道●風速計|中島岳志●11月の原発裁判|脱原発弁護団全国連絡会●金曜アンテナ●半田滋の新・安全保障論●政治時評|佐藤甲一●経済私考|高橋伸彰●言葉の広場/論考●肯わぬ者からの手紙|山口 泉●櫂未知子の金曜俳句●さらん日記●雨宮処凛のらんきりゅう●猫様|想田和弘●松崎菊也の無責任架空対談●読者会から●きんようびのはらっぱで●ヒラ社長が行く|植村隆

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