100年前のろうそくデモ

3・1朝鮮独立運動

今週号の特集は「3・1独立運動」である。表紙の写真は「朝鮮のジャンヌ・ダルク」と言われた10代の少女・柳寛順を先頭にデモする民衆を描いたレリーフだ。ソウルのタプコル公園にある。彼女は当時、梨花学堂(現在の梨花女子高等学校)の生徒だった。

 日本の中学校の歴史教科書『ともに学ぶ人間の歴史』(学び舎)に、こう書かれている。

「1919年4月、京城(ソウル)から約100km離れた並川という町の市場に、およそ3000人の人びとが集まっていました。(中略)柳寛順は、京城で、友だちと3月1日のデモに行こうとしましたが、学校が禁止したため、参加できませんでした。ふるさとの町で、両親といっしょに集会に参加しました。日本の憲兵隊が、集まった人びとに向かって発砲し、両親は殺されました。柳寛順も逮捕されて、裁判にかけられ、翌年10月、刑務所に入れられたまま死亡しました。最後まで、朝鮮独立の意志をすてなかったといわれます」

 当時の朝鮮には無数の「柳寛順」たちがいたことを、日本人は決して忘れてはならない。

 特集では、ジャーナリストの成川彩氏が100周年を迎えるソウルの表情を報告する。運動の世界史的な意義については一橋大学の加藤圭木准教授に、運動の精神が現代のろうそくデモにも引き継がれていることについては恵泉女学園大学の李泳采准教授に、それぞれ寄稿してもらった。

 東京の朝鮮人留学生(当時)たちが、2・8独立宣言を計画し、それが3・1の導火線となった。宣言草案をもって、京城へ潜入した留学生・宋継白について、大学院生の姜明錫氏が取材した。宣言が発表された東京の現場にも焦点を当てた。運動は、上海の臨時政府に引き継がれた。元『ハンギョレ』副社長の任在慶氏にその意義を訊ねた。

 朝鮮民族の叫びに連帯した弁護士の布施辰治、ジャーナリストの石橋湛山 、民芸運動の柳宗悦、政治学者の吉野作造らの言説は、「暗闇の中の光」でもある。改めて、彼らの主張を読み直した。

 外村大東京大学教授の解説付きで、3・1独立宣言の現代語訳を掲載した。宣言は、韓国併合を批判し、こう指摘する。

「二つの民族の間に深い溝を作ってしまい、お互いに反発を強めて、仲良く付き合うことができないようにしている(中略)これまでの間違った政治をやめ、正しい理解と心の触れあいに基づいた、新しい友好の関係をつくりだしていくことが、私たちと彼らとの不幸な関係をなくし、幸せをつかむ近道である」

 この言葉は、いまの日韓関係に、投げかけられているように響く。この「溝」を日本側で深めているのは、過去の問題に向き合ってこなかった歴代政権、とりわけ安倍晋三政権ではないか。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との間では、植民地支配の清算すら終わっていない。だが、政治家の責任にするだけでは、解決しない。この機会に過去に想いをはせ、東アジアの平和のために、私たち市民一人ひとり何ができるのかを問いたいと思う。(本誌発行人 植村隆)

  • ソウルの表情反日感情は直接刺激せず
    メディアも映画も「独立」焦点
    成川彩

    韓国では、多くの3・1独立運動関連イベントが予定されており、メディアや映画でも独立をテーマにしたものが目立つ。韓国在住の日本人ジャーナリストが、100周年を前にしたソウルの表情を伝える。

  • 任在慶・大韓民国臨時政府記念事業会副会長に聞く
    ろうそくデモに受け継がれた「主権者は国民」

    3・1朝鮮独立運動から約1カ月半後の1919年4月11日、独立運動家らが中国・上海で大韓民国臨時政府を樹立した。大韓民国臨時政府記念事業会の任在慶副会長(82歳)に、3・1運動と臨時政府樹立の意義などについて聞いた。

  • 3・1独立宣言
    「ああ、いま目の前には、新たな世界が開かれようとしている」

    「3・1」独立宣言(1919年)は、アメリカ独立宣言(1776年)やフランス革命の人権宣言(1789年)の流れをくみ、自由や平等を冒頭で高らかにうたう。そして排他主義を強く戒める。力強く希望に満ちた全文訳を掲載する。

  • 私たちはなぜ「宣言書」を現代語に訳したのか
    謙虚に史実に向き合うために
    外村大
  • 3・1独立運動の歴史的、今日的意義を探る
    朝鮮民衆の独立への意志世界に明確に示される
    加藤圭木

  • 日本各地で予定される主なイベント

    3・1朝鮮独立運動100周年に際して、日本各地でもさまざまなイベントが予定されている


  • 3・1独立運動からろうそく革命の時代へ
    主権在民に基盤を置いた大衆的実践
    李泳采

    韓国では、3・1独立運動が共和国建設のための国民主権運動の始まりだったという新しい視点が提起されている。それは2年前のろうそく市民革命に影響されたものだ。


  • 真に朝鮮と向かい合った日本人
    成澤宗男

    かつて朝鮮半島が日本の植民地にされていた時代、隣国の人々の苦難に思いを馳せていたごく少数の知識人がいた。言論が制約されていた時代であったからこそ、彼らの残した文章には言いしれぬ良心の力を感じることができる。韓国ヘイトが巷にあふれている今こそ、先人の声に耳を傾けたい。


  • 「2・8独立宣言」の舞台を行く
    アジアの解放促した知られざる朝鮮留学生の物語
    尹史承

    1919年に起きた韓国の3・1独立運動と中国の5・4運動。東アジアで起きた大規模な二つの民衆運動は、同年2月8日、東京でのある運動が一つのきっかけだった。


  • 3・1独立運動の導火線
    2・8宣言案を朝鮮へ伝えた密使・宋継白を追う
    姜明錫

    2・8独立宣言の草案を帽子に隠して、当時のソウルに潜入した早稲田大学留学生。先輩たちに「決起」を伝え、彼らの心を動かした。100年後の韓国人早大留学生が、宋の悲運の人生を報告する。

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次号予告:2019年3月1日号(第1222号)

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