編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

許しませんぞ

 緊急事態宣言が解除された東京。わが町で一番人気のイタリア料理店の前に、工事の車が横付けされていた。角材が運び込まれている。宣言が出る少し前から休業を余儀なくされていた。改装開店をめざすのか、それとも……。

 並びにはコロナ禍の直前に閉店した和食屋。入り口には閉店を告げる紙が貼られたまま。そこから100メートル離れたカフェは今日から再開。ピカピカに磨かれたガラスに光が反射してまぶしい

 賑わいが戻ってきたのは嬉しい。だが、東京五輪の延期合意の3月24日まで、小池百合子都知事が感染拡大阻止にむけて何をやったのか、やっていないのか、覚えておきたい。

 一方、独自の休業再要請指標「大阪モデル」をつくり人気をあげた吉村洋文大阪府知事。だが、ここにきて山中伸弥京都大学教授に、基準を政治的に緩めたと批判を受けた。何より大切なのは事実の把握のはず。権力者が都合で歪めるなんて、許しませんぞ(あっちもこっちも、もう)。

歴史に残る珍答弁

 もりまさこ歌
「専制、専制、それは専制」
#週明けの強行採決に反対します(buuさん)。

 こういうツイートが検察庁法改正案の今国会での採決見送りを引き出したとすれば感慨深いものがある(ただ廃案ではないから安心は禁物!)。

「逃げた」発言に象徴される森雅子法務大臣のこの間の迷走ぶりはすごかった。私は死刑制度に反対の立場だが、法相といえば死刑執行の命令を下す立場にある。

 その人間が「口頭決裁した。口頭でも正式な決裁だ」と発言したというのはいまだ信じがたい。「日本政治史上に残すべき珍答弁」(三宅勝久氏、本誌13頁)に違いない(どれほど追い込まれたか!)。

 だが、その森法相の答弁よりも、法案批判をした俳優の小泉今日子さんのツイートへの批判のほうが、世間的には激しかったように思う(所詮そういうもの?訳わからん)。

 最後に一言付け加えると、“ド昭和”の替え歌なら、本号で刷新した投書欄も負けてない。密かなブームのようだ(by担当部員)。

怒りの可視化

 いよいよ市民の怒りが可視化されてきたということか。

「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートが、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさん(後に削除)、俳優の浅野忠信さんらも巻き込んで世界トレンド入り。しかも途中で意味不明のツイート数減少で情報操作? との疑いも出て、火に油を注いだ。

 本誌では、官邸に近いとされる黒川弘務東京高検検事長の任期延長について「政権腐敗を暴かせない究極の指揮権発動」(海渡雄一、2月14日号)とまず批判。そして今度の検察官の定年を段階的に65歳に引き上げる検察庁法改正案については、「後付けの理屈が破綻したから法律に明記して正当化しようという企み」(望月衣塑子、5月1・8日号)と喝破した。

 それにしても、日本で4月に開催予定だった国連犯罪防止刑事司法会議がコロナ感染拡大のために延期になってよかったね。法務省は「日本における法の支配の浸透」などを「国内外にアピール」する場としているからだ。一連の事態、どう説明する?

安倍首相にこそ

「赤ペンのインクがなくなった」。でも、角の文房具店は閉まっているんだっけ。文庫本を求めようとしたが、一部の書店しか開いていない。いまは非常時だということを思い起こす。この生活は当分つづきそう。

 緊急事態宣言下で迎える憲法記念日。今年は憲法の大切さを特に身近に感じる日になりそうだ。メディアの使命もひしひしと感ずる。

 今週号は合併号。来週は刊行はありません。取りあげたいことはたくさんある。沖縄の普天間基地から発がん性が疑われる有機フッ素化合物を含む泡消火剤が漏出した事件のこと、予定されていたNHK「バリバラ桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~第1部」の再放送が差し替えになったことなど。

 後者は弊誌連載陣の松崎菊也さんと石倉直樹さんも出演していて、「桜を見る会」をめぐる安倍晋三首相の説明不足をチクッとする場面には笑った。いずれの世論調査でも首相の説明に満足している人は少なかったものね。小さな声も丁寧に紹介するこの番組、安倍首相にこそみてほしい。