編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

大先輩のこと

 コロナ禍について、ずっと意見を聞いてみたいと思っていた人がいた。ジャーナリストの伊豆百合子さんだ。本誌では医療過誤や新薬の問題を取材・執筆されてきた。昨年暮れから入院されていたが、6月20日に亡くなったという知らせを先週いただき、正直、力が抜けてしまった。

 読売テレビにアナウンサーとして入社、途中から報道部に異動し、ディレクターとして活躍された。退社後は本も書かれた。731部隊にも詳しく、自身の情報源の一人、医学界の重鎮が隊員だったことを知り、衝撃をうけていた。自分自身そのことにどうけじめをつけるか、拘られていた。

 私が知り合ったのは二十数年前。電話で延々と話し続けてきたが、事情があってお会いしたことがない。「(あなたが)夢の中に出てきたのよ、でも後ろを向いてた」と楽しそうに話されたことも。女が働き続けるのが困難な時代に道を切り拓いた大先輩。ディレクターへの転身はたいへんだったはず。もっと話を聞きたかった。一度でいいからお会いしたかった。