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ブレア氏も小泉元首相も、イラク戦争“戦犯”に時効はない

 赦したい。どんな人でも、たとえ何があっても。赦すことで自分が救われる。うらんだり、なじったりしても、それはとりあえずの頓服薬にしかならない。結局は心の免疫力を低下させ、うらみの閾値が下がっていくだけだ。そして、一旦、負の連鎖にはまりこむと、容易には抜け出せない。その先にあるのは自己嫌悪だけ。

 わがままで気が短く、すぐに泣きわめく。そんな子どもだった。困った祖父母が私の手に何度も墨で「鬼」と書いた。”さわぎの虫”が出て行くおまじない。じっと見ていると、白い糸のようなものが掌から立ち上っていく(気がした)。そのおかげもあってか、随分と我慢強く寛容な大人になった(気がする)。

 しかし、やはり、どうしても赦せないことは赦せない。赦せない人間は赦せない。とりわけ、強い力と影響力をもった人間が、他者を虐げ、踏みつけることは断固として赦せない。

 その顔を見ると、にわかに「寛容な自分」が消え失せる。小泉純一郎元首相がそうだ。米国のイラク侵略をいち早く支持しただけではなく、口先のごまかしで市民・国民を騙し続けた。英国のブレア前首相と同罪である。

 イラク戦争の“正当性”を調査している英国の独立調査委員会は1月29日、ブレア氏を証人喚問した。AFPはこう伝えている。

「公聴会から一夜明けた30日の英各紙は、参戦を後悔していないという前首相の証言に衝撃を受けた様子の論調が目立った。英紙ガーディアンは……『委員らは後悔していないかと質問することで、ブレア氏に『謙遜への招待状』を手渡した。傍聴席にイラクで死亡した兵士の遺族もいたことは彼も知っていたはずだが、ブレア氏はその招待状を吹き飛ばした。これが、ほぼ完璧だったこの日のパフォーマンスのなかで唯一の欠点だった。傍聴者は自制心を失い、会場はブーイングと涙であふれた』(と報じた)」

 ブレア氏同様、何ら反省もない小泉氏は、喚問されることもなく、息子を後継者として国会に送り込んだ。紛れもないイラク戦争の”戦犯”がヘラヘラとした笑顔をみせる姿に虫酸が走る。民主党連立政権は、一刻も早く調査委員会を立ち上げるべきだ。いかなる戦争も、都合のいい大義名分を貼り付けた大量殺人にほかならない。イラクへの侵略から7年。”戦犯”に時効はない。(北村肇)