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米軍再編最終報告により、日本は公然と米国51番目の州になる

 わかったようでわからない。米軍再編最終報告の「最終報告」とは、何を意味するのか。そもそも、だれがだれに報告するのか。取材体験上、あいまいなネーミングがついた公式文書は総じて胡散臭い。これなど、その極めつけだ。中身を読んで初めてわかる。実は、日米安保条約を超えた「軍事条約」であることが。

 世界を軍事力で支配したい。だが財政赤字の折り、軍事費は減らしたい。こうした米国の悩みを解決する方法は、覇権国家にとってそれほど難しくなかった。「同盟国」に負担を押しつければいいのである。中でも、普段から「思いやり予算」という、これもまたわけのわからない形で年間約2600億円ものカネを提供している日本は格好の相手だった。

 かくして米国は「日本の負担は3兆円」とぶちあげた。国民一人あたり2万円以上の血税が米軍に渡ろうとしているのだ。しかも具体的な使い道すらはっきりしない。政府は、少子高齢化社会を迎え、年金や医療費の負担増をはかり、消費税アップさえ避けられないと喧伝している。そんな状況で、米国の都合による「再編」にこれだけ巨額のカネをそそぎ込む余裕がどこにあるのか。

 さすがに、政府関係者からも「金額は米国が言っているだけで、それほどかかるとは思えない」との声が出ているようだが、一方で、「最終的にはやむをえない」との雰囲気も漂っていると言われる。

 問題は「カネ」だけではない。米軍再編成の本質は、「自衛隊を米国のために利用する」ことにほかならない。本誌今週号で特集したように、たとえば座間(神奈川県)に米軍の統合作戦司令部が移駐し、そこに、新設する自衛隊の中央即応集団の司令部が併設される。明らかに、テロ対処や「国際平和協力」のための共同部隊である。

 米国の海外軍事戦略に組み込まれるのは、米軍支援のために自衛隊が積極関与することにほかならない。「日米安保条約のおかげで日本は米軍に守られているのだから、多少の経済的負担は仕方がない」という議論がある。だが、「米軍再編」後の日米関係は本質的に変化する。自衛隊は米軍の傭兵になるのだ。

 当然、集団的自衛権も既成事実化する。米国はかつてのように、「憲法9条を変えろ」と叫ばなくなった。改悪しなくても、憲法無視がまかり通るようになるからだろう。どうやら「日本は米国の51番目の州になる」というのが、最終報告の骨子らしい。(北村肇)