編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

「『週刊金曜日』は赤雑誌」という激励に応え、安倍政権と闘います

先輩はまじめな表情で言った。「君は赤記者と呼ばれている。気をつけたほうがいいぞ」。30歳そこそこ、地方支局から社会部に異動したばかりだった。労働組合活動を熱心にしていたのが理由だったのだろう。それにしても、新聞社に「赤記者」なる名称が残っていることに唖然とした。思わず、しれっと言ってみた。「えっ、私は毎日、シャワーを浴びていますが」。

 だから「垢記者」ではないという、われながらくだらない洒落。どこまで真意が通じたかわからないが、先輩があきれ顔だったのは言うまでもない。その後も結構、目をかけてもらったので、上司に「北村にクギを刺して置け」と命じられ、しぶしぶ私にアドバイスをしたのかもしれない。
 
 もともと「赤」は共産主義者を指していた。「赤狩り」や「レッドパージ」では、共産党員はもちろん、支持者も弾圧された。それが許し難いのは当たり前だが、「赤」はいつのころからか、「権力に楯突く者」「組織のルールを守らない者」「上司の命令に従わない者」と拡大。いまや「生意気」もその範疇かもしれない。異常に、指し示す範囲が広がってしまったのだ。

 このまま進むと、国家や企業の意向に背いた人間は、すべて「赤」のレッテルを張られる危険さえある。社会全体を覆う、得も言われぬ息苦しい右傾化の風潮を見ると、極端な悲観論も出てくるというものだ。

 ネット上では時折、『週刊金曜日』は「赤雑誌」と評価される。この場合の「赤」は「権力に楯突く」の意だろうから、ありがたいことだ。“期待”に反しないよう、安倍政権も徹底的に追及していく。

 本誌今週号で、安倍晋三氏のブレーンと目される面々を特集した。すぐに「反国家」「非国民」と叫びそうな方々がいる。「日本はアジアの盟主。目指せ、大東亜共栄圏」と拳をあげそうな方々がいる。「女性は良妻賢母が一番。ジェンダーフリーなど葬り去れ」と主張しそうな方々がいる。小泉純一郎政氏もそうだったが、安倍氏は何とも闘いやすい相手だ。こちらが遠慮する必要がまったくないのだから。

 ちなみに私は赤緑色弱で、赤と緑が同じように見えたりする。人や環境に優しい「赤」もあるのだ。(北村肇)