編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

「憲法違反」をしてきた自分が「憲法を守る」ためにできること

「日本国民」の多くは憲法違反をしている。主権在民が何たるかもわからないような安倍晋三首相は論外として、99条で憲法遵守義務を定めているにもかかわらず、平然として無視し、都合のいい解釈改憲を続けてきた国会議員や官僚。ここまでは誰でも理解できるところ。だが、それだけではない。

 前文には「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」とある。日本において「平和主義や基本的人権擁護」を実現するだけではなく、「専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去」「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する」ことも理想であり、目的である。

 そして、日本で生まれ育った私たちは一人残らず、「崇高な理想と目的を達成」する責務を負っているのだ。

 12条は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と謳う。確かに憲法は「自由及び権利を保障している」が、国民は、自由や権利を空気のように受け止めてはならない。ここでも、自らの「不断の努力」で保持することを求められている。憲法は権力者を縛るものだが、その実効を図るのは国民の責務なのだ。
 
 しかし、現実はどうか。際限を知らない解釈改憲により、自衛隊は「合憲化」している。「日の丸・君が代」の押しつけは進み、イラク派兵反対のチラシを配っただけで逮捕・起訴される。憲法を蹂躙する為政者たちにより、「崇高な理想」はズタズタにされている。その動きを「国民」が抑止できていないのが実態だ。

 どこまで、日本国憲法の意義を認識してきたのか。自らを省みたとき愕然とする。思えば、憲法をしっかり読み込んだことすらなかった。戦争放棄がいかに「崇高な理想」か、突き詰めたことがなかった。大体、自由や権利のために日々、どこまで闘ってきたのか。まずは主権者として、憲法への裏切り行為を自省することから始めたい。

 本誌今週号は「憲法特集」。「9条に命を吹き込む人々」と「軍隊にサヨナラした国々」を柱にした。「9条」という日本酒をつくった蔵元、着物で憲法の重要性を訴える若者。憲法の要請にしっかりと応えている人々がいる。自分でできることはなんだろう。素朴な問いかけが、自省の次のステップになる。(北村肇)