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福田康夫氏と小沢一郎氏が手を結んだら――考えるとぞっとする

 日本人は何かというと、信長、秀吉、家康にたとえるのが好きだ。すでに福田康夫氏を家康になぞらえる見方が出始めている。確かに、何度か総裁選に打って出る機会がありながら、じっと存在感を消し、勝てるとわかったら手を挙げるという戦略は、したたかである。麻生太郎氏に比べたら、はるかに老練だ。麻生氏の逆転は、よほどのことがない限り無理だろう。


 
 もし福田氏が家康なら、次の一手は小沢一郎氏との”和睦”だろう。「日本統一のために手を組みませんか」と。そうして大同団結を実現し、最終的には自民党が民主党を飲み込む狙い。むろん、小沢氏も簡単には誘いに乗るまい。こちらもなかなかのタヌキである。逆に自民党を飲み込もうと目論むはずだ。
 
 さて、戦国時代の話はもうやめよう。400年前の時代にあてはめるのは、所詮、お遊びにすぎない。問題は「いまそこにある危機」である。
 
「危機」に触れる前に、今後の推移を少し予測してみる。

 安倍首相があまりも惨めな引っ込み方をしたので、福田氏の支持率はそこそこの高さとなるだろう。記者会見や街頭演説を見ても、「久しぶりに首相らしい首相」との印象を醸し出すことに成功している。「話し合い解散」の可能性を打ち出すなど、民主党を混乱させる手口もなかなかのものだ。

 安倍政権から離れた自民党支持者(消極的支持者も含め)のかなりの部分は、福田自民党に帰ってくるだろう。となると、民主党は今までのような強硬路線がとりにくい。福田氏と対決姿勢を強めることが、必ずしも自党の伸張に結びつかないからだ。このような状況下では、最大の焦点であるテロ特措法は、自民党が新法をつくり、最終的には民主党も「国家のために」と受け入れる可能性が強い。
 
 問題は、このことが両党にとって「成功体験」になることだ。仮に民主党が自民党化し、保守の二大政党が実現したらどうなるのか。何のことはない、自民党の派閥争いと一緒である。政権交代は、実質、党内闘争でしかなくなるのだ。

 改憲論者の小沢氏が、決してリベラルとは思えない福田氏と手を握ったらどうなるのか。自民、民主両党による大政翼賛体制の出現――これこそが「危機」である。  (北村肇)