編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

寒さがピークを迎える中、首都圏の猛暑を思い出した。

編集長後記

 寒さがピークを迎える中、首都圏の猛暑を思い出した。2月15日、埼玉県所沢市で小中学校へのエアコン設置の是非をめぐる住民投票があった。航空自衛隊入間基地の騒音対策のため学校は窓を閉めていたいからだ。海のない埼玉は暑い。結果は賛成多数となったが、市長に設置再検討を求め得る投票数には満たなかった。
 設置反対の藤本正人市長は自民党推薦で当選した人物だが、一昨年、反原発運動の最前線にいる野党女性議員の会合でお会いし、立ち話をしたことがある。財政問題も反対の理由としてあるが、藤本氏は福島第一原発事故を経験し、電気利用や便利な生活に疑問を持ったという趣旨の話をしていた。エアコン設置反対がきわめて不人気の政策判断であることも重々承知していた。

 しかし民意は便利で快適な生活を欲する。政治家は票になるからとびつき、マスコミも民意に迎合する。今回、住民投票について原発事故や基地について避けるように報じていたマスコミを見、3・11の通念が風化しつつあることも感じた。 (平井康嗣)