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沖縄基地利権を追う――悪いのは守屋前次官だけなのか?

「うらやましい」と感じることが減ってきた。羨望のまなざしと無様な嫉妬心で固まった若い頃が、ようやく昔話になりつつある。もちろん皆無ではない。無私無欲で暮らしている人に出会うと、「自分もこうなりたい」と、それこそうらやむ。金や名声など浮ついたものに、心が少しざわつかなくなっただけだ。

 嫉妬心、特に出世に汲々とする人間のそれはなかなかに手強い。ライバルの足を引っ張るため、茶坊主を動かし、あらゆる手だてを講じる。まともな人間は、かような連中とことを構えるバカさ加減に絶えられず、時として自らレースを降りる。結果、良貨を駆逐した悪貨は、意気揚々と勝利宣言する。

 外務省の高官人事について、マスコミでは「守屋昌武前次官派の一掃」という論調が目立った。官僚世界はまさに嫉妬のるつぼである。当然、権力闘争が繰り広げられ、派閥が生まれる。そこで若手官僚は考える。次官レースに勝つ上司に従っていれば、自分にも次官の道が開ける――。こうして重用された人間はラインに乗ることができる。だが、今回のように、親ガメがこければ、一緒にこけてしまう、これもまた霞ヶ関の掟である。

 石破茂防衛相は「今度の人事は守屋派云々とは関係ない」としているが、霞ヶ関でそれを信じる人間はゼロだろう。そもそも、もっと本質的な問題は、嫉妬心と野心の塊は守屋氏に限らないということである。同じ穴の狢にすぎない連中に「正義の味方」面されては困る。
 
 小池百合子前防衛相と守屋氏のバトルは「目くそ鼻くそ」の類だと、複数の永田町関係者から聞いていた。小池氏が大臣の椅子を追われたと思ったら、次は守屋氏の逮捕。とりあえずは小池氏に分があったようにみえるが、「沖縄では、守屋はあまり利権にかかわっていない」と断言する消息通もいる。沖縄の基地利権を隠蔽するために、守屋氏が生け贄にされたという構図だ。
 
 むろん、守屋氏を弁護する気はない。ただ、「悪いのは守屋氏だけ」という単純な筋書きにだまされるほどお人好しでもない。かつて所属していた新聞社で防衛利権の闇に迫ったことがある。政治家、官僚、経済界、海外勢力、ヤクザ……文字通り、魑魅魍魎の世界だ。
 
 カネ、地位、名声に群がる面々の生態を暴くため、本誌は、沖縄の基地をめぐる利権構造に切り込む。今週の特集が第一弾(北村肇)