編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

一九六四年の東京五輪開催の際にも、敗戦の空気が残る東京で大規模な再開発が行なわれた。

編集長後記

 一九六四年の東京五輪開催の際にも、敗戦の空気が残る東京で大規模な再開発が行なわれた。連合国軍に占領されていた代々木には米軍用住宅であるワシントンハイツがあった。しかし五輪ということで占領地は返還され、国立代々木競技場や代々木公園やNHKなどがその場におさまった。目の前から米軍が消えたことで「戦後」は一つの節目を迎えたように見えただろう。しかしそれはあくまでも東京目線の話だ。米軍基地は沖縄に集中することになったにすぎない。「戦争」が東京から見えづらくなっただけだ。

 二〇二〇年に開催される予定の東京五輪は、なにを創造し、なにを破壊するのだろうか。それは容易く想像できる。政治家や大企業が後ろめたさを抱える「震災」や「原発事故」だ。「がんばろう!日本」という文句も、電通がつくった「がんばれ!ニッポン」というコピーへと次第に移り変わっていくのだろう。この大イベントを前に何が見えなくなっていくのかをこれから見ていかなければならないと思っている。 (平井康嗣)