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社民党は「現実を理想に引き上げる」与党を目指せ

 政権離脱後、社民党の支持率は若干ながら、上がった。福島みずほさんの決断は正しかったといえる。「ダメなものはダメ」という筋の通し方は、土井たか子さんを彷彿とさせた。「愚直な野党」が甦ったようであり、それへの支持だろう。

 連立政権に入り、大臣に就任した頃の福島さんは精彩がなかった。発言も切れ味が悪く、正直、「テレビには出ない方がいい」と思っていた。だが、今回のインタビュー(本誌今週号に掲載)では別人だった。1時間半、マシンガントークは冴えわたり、目の輝きも、初めてあった当時(20年以上前だが)に戻っていた。いかにもふっきれた感じだった。

党首の立場上もあってか、本人の口から具体的なことは聞けなかったが、社民党内では「連立離脱はすべきではない」という強い声があった。仮に福島さんが鳩山氏のようにふらつけば、土壇場までもめ続けた。その上で政権にとどまるようなことになったら、支持率は下がったはずだ。「党としての決断」と福島さんは強調したが、実態は「福島党首の決断」である。そこに与党としての「政治的妥協」の入る余地はなかった。土井さん同様、福島さんは野党党首が似合っている。

 とはいえ、政党である限り、政権を目指すのが当然だ。55年体制の社会党のように、自民党の補完勢力に甘んじていては、ぬるま湯の中で堕落するばかりだ。かつて自民党と連立を組んだときは、さんざん利用されたあげくポイと捨てられた。今回は違う。自らの意志で決然と政権から離脱した。このことに自信を持ち、8ヶ月とはいえ与党だった経験を生かし、どうやって政権への道筋を描くのか、そのことがこれからの社民党に問われる。

 政治は「理想を現実に引きずり下ろす」ためにあるのではない。「現実を理想に引き上げる」ためにあるのだ。「ダメなものはダメ」は決して野党的スローガンではない。「ダメ」とわかっていることに化粧を施し、受け入れてしまうことが与党の役割でもない。政権政党こそ理想を目指すべきなのだ。

 菅直人政権の閣僚や党幹部をみると、新自由主義論者とおぼしき議員が目立つ。現時点では、鳩山政権以上に社民党との接点は少ないようにみえる。

 この際、社民党は独自に「現実を理想に引き上げる」与党を目指し、共産党や民主党の一部議員、さらにはNGO、NPOとの接着剤になるべきだ。その日がくれば、日本の政治は大きく変わるだろう。(北村肇)