編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

悪法の数々

 衆院で3分の2を超える議席を得たからといって高市早苗政権による悪法制定にもほどがある、と言いたい状況が続いています。国家情報局設置法や国旗損壊罪創設法案。再審法改正案に続き、注目したいのが個人情報保護法改正案です。法案では不適切な方法で個人情報を取得した人は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。

「損害を加える目的」とか「人を欺き」「施設への侵入」といった一見すると納得してしまいそうな条文ですが、要注意です。政治家ら公人の不正を暴くための潜入取材や公益通報に威嚇効果が大きいだけでなく、記者や通報者が逆に告訴される武器にもなります。真相とは無関係に警察に調べられただけで世間のバッシングを浴びるでしょう。

 同法が国会提出された四半世紀前に作家の故・城山三郎氏が「天下の悪法」と喝破し、旧案から削除された基本原則(努力規定)が形を変えて蘇ろうとしています。(臺宏士)

沖縄からの報告

 米・イスラエルによるイラン攻撃を巡り、戦闘終結に向けた覚書が19日に交わされる見通しです(15日現在)。国連憲章や国際法違反が明白な行為で生じた民間への被害は誰が補償するのか。あの小学生らの遺族は悲しみを押し付けられたままなのでしょうか。

 本号では特集「憲法の現場から」の最後として沖縄からの報告です。国境に近い島では自衛隊基地の新設、拡張が進みます。他方から見れば攻撃、占領の標的でもあります。

 高市早苗政権は、長射程ミサイルの全国各地への配備や武器輸出には熱心ですが、武力攻撃事態の巻き添えとなった民間被害への補償を含めた国民保護策は放置状態。先の戦争での空襲被害者救済法案も先延ばしにされたままです。

 平和国家をうたった憲法が今、県民の目にどう映っているのかを元『琉球新報』編集局長の潮平芳和さんに寄稿してもらいました。特集には全国の読者に共有してほしい視点が詰まっています。(臺宏士)

「日の丸」の意味

 1999年の国会では(1)盗聴捜査を合法化する通信傍受法(2)背番号で国民を管理する「住基ネット法」(3)自衛隊の活動範囲を拡大する周辺事態法(4)国旗国歌法といった国論を二分する悪法が相次いで成立したことを思い出します。

 首相答弁という歯止めもあり、「懸念は当たらない」というのが政府・与党の言い分でした。小渕恵三首相は国旗国歌法について「将来においても違反を罰する立法を行なう考えはない」と述べましたが、四半世紀が過ぎ、自民党は処罰する法案を国会提出するようです。小渕答弁との整合性も党内で厳しく指摘してきたのが岩屋毅氏。「国旗に対する感じ方を国が定義したり、強要したりすべきではない」

 前外相であり、元防衛相という「日の丸」の意味について思索する機会の多かったはずの大臣経験者の言葉には説得力がありました。ノンフィクション作家の中澤雄大氏が聞きました。自民議員に読んでほしい記事です。(臺宏士)

「太宰治」の由来

 6月19日。この日は太宰治が生まれた日であり、東京都三鷹市下連雀の玉川上水で入水自殺を図り、ご遺体が見つかった日でもあります。「桜桃忌」と名付けられ、78年となるいまでも墓所のある禅林寺には多くの方々が各地から追悼に訪れます。

 これほど魅了しつづける太宰作品。意外にも青年・津島修治が筆名を決めた理由について詳しく残していませんでした。太宰の生誕地である青森・津軽で由来を調べてきた同郷のフリーライター、野呂法夫氏にその謎について本号で報告していただきました。あの井伏鱒二も解けなかった真相は特集をご覧ください。

 今回、数十年ぶりに読み返した『津軽』に登場する人々は、三十数年前に新聞記者として赴任し、5年を過ごした山形での出会いと重なりました。禅林寺で手を合わせたいと思いますが、地元ではお供え物を控えるなど節度ある参拝を呼びかけています。気をつけたいと思います。(臺宏士)