編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

桜とメディア

 2013年4月20日【午前】8時14分、東京・内藤町の新宿御苑。同15分、西村泰彦警視総監ら警視庁幹部、地元の後援会関係者らと写真撮影。9時1分、昭恵夫人とともに首相主催の「桜を見る会」(13年4月21日付『読売新聞』[安倍首相の一日]から)

 13年は安倍晋三首相が返り咲いて初の「桜を見る会」。「大切なのは(中略)また咲くということ。私ももう一度、花を咲かせることができた」と首相本人が政財界関係者や芸能人を前にして挨拶を述べたことが同紙前日の夕刊にある。

 晴れ舞台の喜びを後援会関係者と分かち合う姿が印象的だったから特筆したのだろう。だが、これを書いた記者は変に思わなかったのだろうか。税金で賄われる「桜を見る会」の会場に、首相の後援会関係者が現れ、時間前に首相と記念撮影をしていることを。会が始まったらいなくなるとでも思ったのかな。

 ひょっとしてメディア関係者も招待客に含まれていはしまいか。その可能性が1ミリもないメディア関係者は穿ったことを考える。

たっぷり親睦?

 在韓米軍の来年以降の駐留費負担の交渉で、今年の予算の5倍の提示が米政府からあったという共同の報道を先日目にした。GSOMIA破棄が影響しているのだろうか、日本もふっかけられるの? と心配していたら、2021年3月に期限を迎える日米協定の更新交渉で、現行予算の4・5倍の提示が米側から示されたとの報道が一部であった。やっぱり? 真偽の確認が先決だが、増額どころじゃないだろう。

 日米貿易協定の承認案が15日、衆院の外務委員会を通過、まもなく衆院本会議にかけられる。日本政府はウィン・ウィンの関係を強調するが、独自の試算で「負けが際立つ」との報道も(『朝日』11月17日付)。「ホルモン剤使用の危険な米国産牛肉が関税引き下げで日本に押し寄せる」と本誌は「くらし」欄で指摘(10月11日号)。生活の安全に直結する問題でもある。

 安倍晋三首相はトランプ米大統領とこの間たっぷり親睦を深めてきたようだが(?)、一体何の弱みを握られているのか。

身近な問題から

 この週末、中央アジア出身で、日本にしばらく滞在している女性と話す機会があった。おしゃべりな彼女が特に熱をいれて話したのが、日本の女性の職場での服装規定の問題だ。

 ネットやSNSで最近話題になっている眼鏡着用禁止を知り、驚いたようだ。「ダテ眼鏡じゃないんだから。私は眼鏡がないと何もできない」と訴える。実際コンタクトレンズは条件があわないと使えない。さらにハイヒール着用を強制しているところもある。

 これは、このページ「金曜日から」で宮本が書いているように、石川優実さんが#Ku Tooで異議申し立てをし、社会問題化した。「日本は先進国で民主的な国のはずなのに、なぜ女性だけ?」。それは私も聞きたいところ。

 彼女の国でもジェンダー差別の問題があるという。「ジェンダー問題が今世界で最も重要」、と明快だ。なぜハイヒールのことがこれまで問題にされてこなかったのか、いまとなっては不思議だ。「身近な問題から勇気を出して」。賛成だ。

「一件落着」とはならない

「結果としてはよかった」
 英語民間検定試験導入延期の件である。現場は混乱の極みと想像する。子どもが通う高校ではどんな反応かきいたところ、教員は前述の意見を述べたというのでほっとした。だが、制度導入の際の議事録が非公開、さらに国語・数学の採点についても問題があるので、「一件落着」とはならない。各地の高校生が集会などで、文科大臣よりも本質を捉えた説得力のある意見を述べていたことが心強かった。

 11月1日号の記事「米国LA市警の訓練に携わる俳優が語る事件現場とメディア」について補足説明をしたい。当該の俳優が訓練で演ずる”犯人役”は、精神疾患があるという設定になっているが、精神疾患をもつ人も、健常者と同様の生活を送っており、ハンディキャップの有無にかかわらず人はだれでも犯罪を行なう可能性がある。さらにこれは訓練全体の一部にすぎず、訓練は現実をそのまま反映したものではない。編集部でそのむね注釈を付けるべきだった。みなさまにお詫び申し上げる。

忘れないために

 安倍内閣には驚かされることばかりだ。「天皇陛下万歳、万歳、万歳」の首相本人を筆頭に、「カニ、メロン、香典」の菅原一秀経産相、「身の丈」発言で格差容認の萩生田光一文科相(腹わたが煮えくりかえるじゃないか)。元閣僚で参院自民党幹事長の世耕弘成氏はツイッターへ投稿した大学教授をいきなり訴えた(こちらはしみじみ怖い)。トンデモ言動は1週間も間をおかずに発生するので、週刊誌では追いつけない(これは困る)。日本社会の劣化を考えれば驚くに値しないのかも。

 スペイン発のニュースを聞いた。国立慰霊施設に埋葬されていた独裁者フランコ総統の棺を掘り返し移送したというではないか。そこまでやるか……。いや、大事なことをいとも簡単に忘れる我々のほうが驚きの対象かも。忘れるから繰り返す。忘れないためには記録する。本誌も頑張って大事なことを伝えていく。

 お蔭さまで本誌は創刊26周年を迎えることができました。引き続きご愛読をよろしくお願いいたします。