編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

イラク攻撃

 6月22日、米国がイランの核施設を攻撃した。2003年のイラク侵攻のときでさえ、公式には大量破壊兵器の隠蔽が国連決議違反だとされたが、今回は何の根拠も示されていない。イラクでは結局、大量破壊兵器は確認されなかった。今回も早尾貴紀さんが書いているように、米国の国家情報長官はイランの核兵器製造はないと報告している。

 米国は1964年、共産主義勢力の拡大を恐れ、北ベトナムを挑発して戦争に介入していった(トンキン湾事件)。そして戦争に敗れ、その後米国社会は大きな負の遺産を背負うことになった。この事実を忘れてしまったのか。

 今年も沖縄戦から80年の「慰霊の日」を迎え、早朝から遺族らが祈る様子が報じられた。歴史を忘れるということは同じことをくり返すのだと、米国が示している。なお今号は「2025年参院選」特集もあったため、「沖縄の記憶を継ぐ」後半は次号で掲載する。(吉田亮子)

学校現場

 友人が最近、東京都の公立学校で講師を務めることになった。自分よりも若い教員ばかりのなか、戸惑うことが多いとぼやく。服装はスーツ以外ではダメなのか? 何をするにも書類にハンコをもらわないとできないのか? 遠距離で不便な場所にあるのに車通勤は許されないのか……。

 東京都教育委員会の傍聴を続ける都立学校の元教員、根津公子さんはブログで「年度途中の自己都合退職者等」は「メンタル面での疾患が多い」と報告があったことに触れ、「都教委はなぜ、そうなるのか、働かせ方を考えるべき」。また、子どもを教職員らの性暴力から守るための相談窓口への相談件数の多さに「学校現場では、その暴力が力の弱い子どもに向かう」「学校が安心して過ごせる場に」と憂えている。

 6月22日投開票の都議会議員選挙。子どもにかかわる公約も多く掲げられているので、中身をしっかり見きわめたい。(??田亮子)

ライシャワー学園

 東京都町田市に手話を使わない私立聾学校がある。この学校法人日本聾話学校が、この4月から学校名を「きこえの学校 ライシャワー学園」に変更した。創立者の名前からとったもので、「聴覚主導の人間教育、心と耳をひらく教育を必要としている人に届けるため」と鈴木実校長。

 つまり障害の早期発見や、補聴器や人工内耳の発達で「きこえの環境」は向上したが、言葉を通してコミュニケーションをとることは軽視されるばかり。そんななか「他者とのかかわりのなかで言葉がひらかれる」(水口洋理事長)という取り組みに専門性を持つ学校の存在意義をみる。

 先日のイベントでは生徒らが歌を披露。「聞き、話し、歌うことを楽しんできた」と中学生があいさつしたように、学校生活を体現する時間だった。「学んだのは聴くこと」と話した卒業生も。「聞き合うことからコミュニケーションは始まる」(水口理事長)。

(吉田亮子)

信仰

 昨年の夏に亡くなった、ある高齢の女性を偲んで、キリスト教会で記念会があった。横浜市・寿地区や神奈川県相模原市での路上生活者支援を長く行なっていた人だった。

 記念会に駆けつけた人からは、炊き出しでは誰よりも早く来て準備をしていたこと、介護保険が始まる前から地域の高齢者のために食事の提供を行なっていたことなど、困っている人を見ると放っておけない彼女の姿が語られた。

 活動団体のニュースレターには「対象者が少なくなっても、私たちの活動は変わる②となく、ホームレスの存在がゼロになる世が来ることを願いつつ続けたい」とあった。

 彼女を突き動かしていたのは正義感であり、キリスト教の信仰だったのだろう。先に亡くなったお連れ合いもそうだが、二人とも希望どおりに献体され、亡くなってもなお人のため尽くしている。夫妻は本誌の定期購読者だったことも付け加えておきたい。(吉田亮子)