編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

高校授業料の無償化

 日本維新の会が求めている高校授業料の無償化。現在国は年収910万円未満世帯の高校生に上限11万8800円(年間)、私立高校は年収590万円未満世帯に上限39万6000円を支援しているが、この所得制限を私立ともに撤廃し、支援金の上限を引き上げようというものだ。

しかし歓迎の声があがる一方で、実現すれば私立高校や塾が値上げしてかえって教育格差が拡大するのではないかとか、私立に集中して公立の定員割れを招くのではなどと言われ、先行して独自に実施している東京都や大阪府の状況をあえて無視した政策ではないかと反対の声も目立つ。

 なにより気になるのは、カネを出すなら口も出すと、私立学校の中身に国が介入・監視してくるのではないかということ。たとえば3月の卒業式、「日の丸・君が代」が強制されないことを願う。そして、現在排除されている朝鮮学校を対象とせずになにが無償化かと。高校生まで政治の駆け引きの道具にするなということも言っておきたい。(吉田亮子)

故郷は他にない

 今号で取り上げたドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』。ヨルダン川西岸の南端、マサーフェル・ヤッタではイスラエル軍が1週間に1軒の割合で村人の家を壊していく。しかし負けてはいない。村人は夜のうちにまた家を建てる。

 はじめはそんなことを繰り返していたが、そのうち軍は大工道具を取り上げ、学校を壊し、鶏小屋や井戸を壊し、日常を壊して、この地で生きていけなくなるような仕打ちを続ける。先祖代々ここで生きてきた村人たちが、いったい何をしたというのか……。

 映画の出演者で撮影者で監督の若者たちが「もっと撮らなきゃ」「書かなきゃ」と焦る場面がある。報道しなければなかったことにされると。一方で、これ以上活動を続けたら逮捕・拷問されるかもしれないという恐怖とも闘う。

 以前「君が代不起立」で東京都教委に抵抗する都立学校の元教師、根津公子さんが、今の日本で抵抗しても命までとられるわけじゃないから、と言っていたのを思い出す。(吉田亮子)

ノー・アザー・ランド

 今号で取り上げたドキュメンタリー映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』。ヨルダン川西岸の南端、マサーフェル・ヤッタではイスラエル軍が1週間に1軒の割合で村人の家を壊していく。しかし負けてはいない。村人は夜のうちにまた家を建てる。

 はじめはそんなことを繰り返していたが、そのうち軍は大工道具を取り上げ、学校を壊し、鶏小屋や井戸を壊し、日常を壊して、この地で生きていけなくなるような仕打ちを続ける。先祖代々ここで生きてきた村人たちが、いったい何をしたというのか……。

 映画の出演者で撮影者で監督の若者たちが「もっと撮らなきゃ」「書かなきゃ」と焦る場面がある。報道しなければなかったことにされると。一方で、これ以上活動を続けたら逮捕・拷問されるかもしれないという恐怖とも闘う。

 以前「君が代不起立」で東京都教委に抵抗する都立学校の元教師、根津公子さんが、今の日本で抵抗しても命までとられるわけじゃないから、と言っていたのを思い出す。(吉田亮子)

「東京サラダボウル」

 NHKで放送中のドラマ「東京サラダボウル」は多文化が共存する“サラダボウル化”した東京を描く。原作は漫画『クロサギ』の黒丸氏の新作。公式サイトは次のように解説する。「“外国人犯罪・外国人事件”(略)と一括りにせず、外国人居住者の方たちの暮らしや人生に光を当て、そこに向き合う刑事と通訳人の目線で、異国で生きる葛藤に出会っていく物語」。

 このドラマが偏見や差別を生まないようにするためか、セリフがときどき説明的になることが少し気になるが、毎回多文化が反映された食べ物が登場するのがたのしみ。5話では、仕事を奪われるのではないかと、同僚の外国人をいじめる日本人が登場した。その人に通訳人が言う。

「外国人を働かせてやってるんじゃないです。日本は人口が減って子どもが減って、今の社会を維持するための労働力も消費力も足りない。日本人だけじゃ、この国はもうもたないんです。彼らを敵視して排除しようとしても、あなたの居場所は守れない」(吉田亮子)

次から次へと

次々といろいろなことが起きる。1月27日はフジテレビの「やり直し」会見をテレビで流しながら仕事をしていた。最後まですべてを聞いていたわけではないが、500人近い記者が集まれば時間がかかるのは当然だろう。それにしても、壇上に並んだフジテレビ経営陣はすべて男性だった。そのことに疑問をもたずして「再生」はないよねと思う。そして次の日には『週刊文春』が記事を訂正……。次号、この問題を特集する。

 続いて1月29日、旅客機と米軍ヘリコプターが衝突事故。この件で報じられたトランプ米大統領の発言に驚いた人は多かったのではないか。就任演説で「きょうから性別は男女の二つのみとする」と述べ、今回は「DEI」(多様性・公平性・包括性)推進が航空管制官らの人材レベルの低下につながったという批判だ。その米国が深くかかわるというイスラエルとハマースとの間の「停戦合意」の中身はどんなものなのか。今号では早尾貴紀・東京経済大学教授に執筆していただいた。(吉田亮子)