編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

ここ数年で嫌な気配を感じるのは言葉や価値観、歴史などを意図的に書き換えよう、転倒させようとしている大衆の動きだ

編集長後記

 私がここ数年で嫌な気配を感じるのは言葉や価値観、歴史などを意図的に書き換えよう、転倒させようとしている大衆の動きだ。「ヤバイ」「カワイイ」「萌え」などの言葉は、若者中心に本来の趣旨から相当拡大されて使われている場合、これは政治的意図のない自然発生的なものだ。一方、伝統的価値観、つまり正義、自由、平等、民主主義、平和主義などについて「偽善」と憎しみまじりのレッテルを張る行為が「転倒」の典型だろう。

 そもそも言葉で表現される概念は曖昧だが、そこにつけこみ自分の物語に沿うように定義し直す行為は不穏な「地ならし」だ。歴史は同じように繰り返さないが、ハンナ・アレントがナチス・ドイツの初期の動きで重要な役割を果たした「モッブ」(群衆)に関する分析は気になってくる。〈運動への献身や、受難者との連帯や、市民社会に対する侮蔑を断言する彼らの言葉は嘘偽りではない〉(『全体主義の起源』)。奇遇だが日本の若者の間では「モブ」と自虐的に名乗ることが一般化し始めている。 (平井康嗣)

4月5日、翁長雄志沖縄県知事と菅義偉官房長官がようやく会談した。

編集長後記

 4月5日、翁長雄志沖縄県知事と菅義偉官房長官がようやく会談した。昨年12月の翁長県知事誕生以降、政府は話し合いを避け無視をしてきた。異常かつ幼稚な対応である。政府はカネや選挙や法手続きで沖縄を支配しようとしてきたが、いい加減その手が通用しないことを理解すべきだ。会談の公開部分は4月6日付『沖縄タイムス』デジタル版に全文が掲載されているが、〈沖縄は全国の面積のたった0・6%に74%の米軍専用施設が置かれ〉 ている構造的差別を県民が直視し、その解決を求めているからだ。

〈アジアを見据える、あるいは中東を見据えるところまで沖縄の基地が使われるんじゃないかと思ってますけど、この辺の根本的なご説明がないと、新辺野古基地はおそらくは難しい。県民の今日までのいろんな思いは絶対に小さくはなりません。もっと大きくなって、この問題に関して私は話が進んでいくと思っています〉(以上の引用は翁長知事発言)。安倍首相は沖縄にたいしてドアを開き、話し合うべきだろう。 (平井康嗣)

地方議会の選挙戦が各地で始まった

編集長後記

 地方議会の選挙戦が各地で始まったが、中央政府の横暴が各地で再現されるのか気になる。あらためて民主主義、民主制を問いたいのだけど、どうとらえたらよいのか。多数決か。話し合いか。権力が暴走しないようにする民衆によるブレーキ、だろうか。

「劣化する自民党」(2月20日号)という特集を組み、合点したものがある。それは自民党三役会の全会一致方式だ。総務、政調、幹事で法案を全会一致することをもって国会で審議する仕組みだ。もちろんすべての議員が納得するわけではないが(そのようなこともまずない)、十分議論を尽くしたことで反対でありながらも納得するのだ。だから国会で明確な造反が出ない。

 これはおもに小泉政権前の自民党の時代の話だが、民主制がめざすものは全会一致ではないだろうか。はなから多数決をめざすのはただの権力行使。もしくは決断という単なるサイコロ振りだ。十分に議論を尽くしたと実感した上での多数決と、議論の不十分な多数決では同じ民主制でもまったくちがう。 (平井康嗣)