編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

桐野夏生さん

『日没』を読んで以来、桐野夏生さんの本にはまっている。最近読んだのが『路上のX』(朝日文庫)。一家離散や義父の虐待など家庭の事情から東京・渋谷の街をさまよう二人の少女が運命的に出会い、そこからさまざまなストーリーが展開される。小説では、ネグレクト、DV、レイプ、JKリフレなど、少女たちを取り巻く問題が描かれている。自らも中高時代、渋谷の街をさまよっていた経験を持つ仁藤夢乃さん(Colabo代表)は解説で、「私たちの言葉にならない想いや経験を言葉にしてくれた桐野さんに、心から感謝したい」と書いた。仁藤さんから話を聞いた桐野さんは、「現実は小説より残酷ね」と言ったそうだ。

 東電OL殺人事件を扱った『グロテスク』、連合赤軍事件をテーマにした『夜の谷を行く』など、桐野さんの作品には社会問題を鋭くえぐるものが多い。しかも、こうした作品の主人公は女性たちだ。

 今週号では、桐野さんのインタビューを掲載した。いまの言論状況について語ってくれている。(文聖姫)

在日コリアンの参政権について思う

 正直、今回の特集企画は乗り気ではなかった。在日コリアンの編集長が誌面ジャックして自説を大々的に展開しようとしているのではないか――そんな声が聞こえてきそうだからだ。しかも、私自身は今の日本で在日が参政権を得ることがベストかどうか、悩み続けてきたし、今も悩み続けている。決して「参政権絶対必要」派ではない。企画提案者である本田雅和の熱意に根負けした、というのが偽らざるところだ。とはいえ、参議院選挙を前に、投票したくても選挙権がない定住外国人のことを知ってほしいという気持ちもどこかにある。

 在日コリアン社会も大きく変わった。私の父をはじめ1世の多くは亡くなり、おそらく1割を切っているだろう。一方で、すでに6世まで誕生しているという。大部分の在日にとって日本が定住の地だ。だから、日本で税金を払い、日本の法律を守って暮らしている。自分の暮らしを良くしてくれると思う政治家に1票を投じる権利がほしいと思うのは、ごく自然な考えではないだろうか。(文聖姫)

4・3

 2019年夏、両親の故郷、済州島を生まれて初めて訪れ、父のいとこたちに会った。私にとっては従伯父、従伯母にあたる。ある従伯父の家を訪ねた時のこと。家族の近況などを話していたら突然済州4・3事件について語り始めた。幼かった従伯父を守って母親が撃ち殺されたこと、丘の上にたくさんの死体が積まれていたこと。とっさのことで録音機も用意していなかったから、話を記録できなかったのが残念だ。「来年の夏に再訪してじっくり話を聞こう」と思ったのだが、コロナでかなわない状況が続く。

 いつか父の家族のことを本にしたいと思っている。それには従伯父の話は欠かせない。「4・3」を体験した親戚がどんどん鬼籍に入り、彼も高齢だ。気持ちは焦る。

 そんなことを考えたのも、ヤン ヨンヒ監督の『スープとイデオロギー』を観たからだ。「4・3」を体験した母を記録したドキュメンタリー。今号ではヤン監督と俳優のキム ヘリョンさんについて中村富美子さんがルポした。(文聖姫)

FPへの道

 5月22日の日曜日、ファイナンシャルプランナー(FP)2級試験を受けてきた。受検会場は偶然にも出身大学である東京・渋谷の青山学院大学だった。学生時代にときどき礼拝に行った「蔦のからまるチャペル」は、「ガウチャー・メモリアル・ホール」という高層建物に変わっていて、ちょっと残念ではあったが、久しぶりに学生時代にタイムスリップした感じだった。

 ところで、私がFPの勉強を始めたきっかけは、年金や保険、金融、税金などの知識をきちんと身につけ、それを誌面にも生かしたいと考えたからだ。生きていく上でとても大事なことだから、しっかり理解し、今後に役立てていきたい。今号の特集は年金。近々年金をもらう世代や今後もらう若い世代の方々にもためになる情報が中心だ。

 さて、私の試験結果は6月29日に発表される。編集長業務に追われて、なかなか勉強する暇がなかったから(言い訳にすぎないが)、今度は落ちたかな。でも9月に再チャレンジして、絶対合格するぞ~!(文聖姫)