編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

浜岡原発

 中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)のデータ不正問題をめぐり、勝野哲会長と林欣吾社長、水野明久相談役のトップ3の辞任に加え、再稼働に必要な原子力規制委員会への審査申請の取り下げが報じられています。9月14日午後、同社は記者会見を開いて明らかにしました。

 原発不信は、東京電力福島第一原子力発電所事故(2011年)から15年がたったいまも払拭されたとは言えません。同23日には、本誌もブースを出店する「さようなら原発9・23全国集会」が東京・代々木公園で開かれます。脱原発の声に改めて耳を傾けようと思います。

 一方、沖縄県に原発はありませんが、米軍専用施設の70%が集中しています。9月13日投開票の知事選で県民は辺野古新基地建設を容認する古謝玄太氏を選びました。この選択が急速に進む日米軍事一体化の最前線となる沖縄に与える影響をしっかり報じていきたいと思います。(臺宏士)

9・11で

 米ニューヨークの世界貿易センタービルにハイジャックされた旅客機が突入したことに始まる米同時多発テロから9月11日で25年になります。2977人が犠牲となり、ブッシュ大統領(当時)が「テロとの戦い」を掲げた戦争は泥沼化。アフガニスタン、イラクそしてイランと続きます。

「9・11」の影響は大きく、小泉純一郎政権は翌月、自衛隊法を改正し防衛秘密制度を導入。1985年に廃案になったスパイ防止法案の焼き直しで、日本民間放送連盟は「取材・報道の自由を侵害しかねない」と反対しました。

 本号で舟越美夏氏は「もう一つの被害」を報告しています。米国はテロとは無関係な人々をグアンタナモ収容所で拷問。釈放後も自由な生活の妨害を続けます。手を差し伸べたのはオランダでした。高市早苗首相は、特定秘密保護法に重ねてスパイ防止法の制定を狙っています。日本政府がすべきことの順序は逆ではないでしょうか。(臺宏士)

ICC

 ベネズエラやイランで国際法に反する軍事行動を行なうトランプ米政権が8月18日に戦争犯罪や集団虐殺にかかわった個人を裁く国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長らを制裁対象に追加しました。在京6紙はいずれも批判的な社説を掲げました。

 高市早苗首相は制裁について当初、「大変残念」との表現にとどめていました。『読売新聞』の「法の支配どころか、自国民の職務継続の権利を守るという決意すら示せないのか。失望を禁じ得ない」との強い非難は目を引きました。

 首相が政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相は東京裁判について「連合国側の勝者の判断で断罪がなされた」と2013年に国会で答弁。ならば一層、世界大戦の反省から生まれたICCは重要なはずです。

 本号で出光真子さんは、トランプ氏を「世界中に平和をもたらす」と評価する首相の政策について「男性優位の古いルールに乗っかった時代遅れ」と断じています。(臺宏士)

「通販生活頑張れ」

「ニュースを聞いてすぐにXに『通販生活頑張れ』と書いた。どんなビジネスでも道義性があってしかるべきだと。そういう見識を示したことに非常に僕は感動した」

 思想家の内田樹さんは、8月22日に東京都内であったカタログハウス主催の「憲法9条を考える日」と題したセミナーでそう語っていました。戦力不保持と国の交戦権を否定する9条2項を「人類の次の段階。われわれが目指す方向を明々と照らしている」と強調していました。

 カタログハウスは18日、今年3月に始めた通販サイト「楽天市場」への出店取りやめを発表。理由を「『攻撃型ドローン』の導入支援および国産化を推進すると報道された。企業理念とは相いれない」としています。

 23日亡くなった石川文洋氏の『写真記録ベトナム戦争』(金曜日)には数々の残虐な場面も収められています。高市早苗首相こそ手に取ってほしい写真集です。(臺宏士)

反省

「反省なんかしていないし、反省を求められるいわれもない」。新進党所属だった高市早苗首相は1995年、栗山尚一駐米大使(当時)が記者会見でした「第二次世界大戦の反省のうえに立って戦後の日本がある」との発言を取り上げた国会質問に絡んで、自らの歴史認識を開陳しました。

 首相は8月15日にあった全国戦没者追悼式の式辞に反省の言葉を用いませんでした。94年に村山富市首相(同)が使い、歴代首相は引き継ぎました。安倍晋三首相(同)は取りやめ、石破茂首相(同)が13年ぶりに昨夏、復活させましたが、再び戻りました。

 国旗損壊処罰法の施行が気になり、同15日正午の靖国神社を訪ね、小雨の中でスピーカーから流れる式辞を拝殿近くで聞きました。昨年と同じく静謐で、やはり同法は不要です。心配は希薄化する新聞界の反省。式辞を批判的に論評した在京6紙の16日社説は『朝日』『東京』『毎日』の3紙のみでした。(臺宏士)

憂鬱な夏

 敗戦から81年。高市早苗政権になって初めての夏はこれまでになく憂鬱です。2月の衆院選で自民が大勝すると、殺傷可能な武器輸出解禁をはじめ高市首相のいう、「国論を二分する政策」が次々と実現しているからです。

 本号の敗戦特集は、戦後社会が大切にしてきた平和国家の理想が崩れていく、いまの日本の姿を浮き彫りにする企画にしました。敵基地攻撃という名目で国際法違反の先制攻撃に道を開く長射程ミサイルの実戦配備は、専守防衛ばかりか、武力による威嚇を禁じる憲法を逸脱した政策です。

 防衛ジャーナリストの半田滋氏はミサイル配備の町をルポ(18頁)。神奈川県横須賀市で出会ったのは「憲法9条が自衛官を守っている」と書かれたプラカードを手にした元海上自衛官でした(表紙)。護衛艦の砲術長を経験し、武器に詳しい。「熊本に置いてはダメ。途端に攻撃対象になる」。元自衛官の言葉だけに重みがあります。(臺宏士)

内心の自由

 国家が個人の内心の自由に露骨に踏み込む時代がやってきます。7月17日、国旗損壊罪法が参院本会議で成立しました。高市早苗首相が掲げた「国論を二分する政策」は国家情報局設置法や再審法、皇室典範、個人情報保護法の改正に加え、殺傷武器の輸出解禁など多分野に及びます。高市首相は世論の分断を意図しているようにも見えます。

 マスメディアも二分状態です。特定秘密保護法、安全保障関連法など在京紙の社説が割れた政策は政府・与党の有利に働きやすい傾向があります。国旗損壊罪では同日付『東京新聞』が「市民の自由脅かす悪法」と批判し、『朝日新聞』『毎日新聞』も同様の論調です。一方、『読売新聞』は「罰則を設けるのは妥当」(6月19日付)と評価し、『産経新聞』も支持する立場です。 

 本号では敗戦81年として映画で戦争と平和を考える特集を組みました。「参戦」が二分する政策とならぬよう願いを込めました。(臺宏士)

令状不要の行政傍受

 JNNが実施した世論調査(7月4日〜5日)によると、高市早苗内閣の支持率は65・9%。高市首相が自民党大会で改憲を表明した4月は71・5%で5・6ポイント減とは言え、皇室典範改正案を含む悪法のごり押し国会を考えると、6割を超える高い支持率にため息が出ます。

 時事通信が7月9日、「『令状なし傍受』自民提言へ スパイ防止法制定で焦点」という独自記事を配信しました。世論の反対を押し切って成立した犯罪捜査が対象の盗聴法(通信傍受法)は令状を必要としていますが、「行政傍受」といって安全保障名目に不要にしようというのです。

 同月10日の国会前デモには「めちゃくちゃな政治」に抗議する2万7000人が参加。石破茂前首相は党幹事長だった2013年、特定秘密保護法案に反対するデモを「テロ行為と変わらない」と表現し、非難を受けました。行政傍受の対象は日本人も例外ではありません。(臺宏士)

放送法と個人情報保護法

 法律の解釈を巡り、政府の国会答弁が信用できない典型例の一つが、放送法4条にある政治的公平です。戦前の放送は「政府之ヲ管掌ス」と規定され戦争の道具にまでなった反省から、戦後は「放送による表現の自由の確保」に180度変わりました。政府も政治的公平を根拠に放送局を処分できるかどうかについて、「検閲、監督等は一切行なわない」(1950年)などと法案審議で否定します。

 砂川浩慶氏が本号アンテナ欄で指摘したように条文は同じなのに高市早苗氏が政治的公平違反を繰り返した場合の電波停止に言及するなど法解釈はいまでは正反対です。

 個人情報保護法でも同じことが起こり得ます。制定時、義務規定は報道や政治目的などでの適用を明文で除外し、誰もが対象となる努力規定は削除。一方、参院審議中の罰則新設案の歯止めは個人情報保護委員会事務局長の答弁のみ。四半世紀後の狡猾な後出しジャンケンです。(臺宏士)

国旗損壊処罰法案

 国旗損壊処罰法案が6月26日の衆院内閣委員会で可決されました。与党に加え国民民主、参政、チームみらいの賛成多数。高市早苗首相は「国論を二分する政策」をまた一つ押し切ろうとしています。

 前日、桐野夏生・日本ペンクラブ会長は記者会見し、「アーティストの中にあの旗を使っていろんな表現をなさる方もいらっしゃるでしょう。壊滅とは言わないですけれどもこの国の何か姿が変わってしまうのではないかという危機感を持っている」と反対を表明していました。

 本誌6月12日号に寄稿した園田寿氏も27日、「多数派の不快感を大義名分として市民から表現の自由を奪い、愛国心を強要する窮屈な社会への入り口」と改めて批判。「古くなって捨てたら損壊になるのか」(桐野氏)、「もう、うかつに日の丸を触れない」(園田氏)とも。「日の丸自警団」が「不快だ」と刑事告発するような世の中であってほしくありません。(臺宏士)