編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

学校現場

 友人が最近、東京都の公立学校で講師を務めることになった。自分よりも若い教員ばかりのなか、戸惑うことが多いとぼやく。服装はスーツ以外ではダメなのか? 何をするにも書類にハンコをもらわないとできないのか? 遠距離で不便な場所にあるのに車通勤は許されないのか……。

 東京都教育委員会の傍聴を続ける都立学校の元教員、根津公子さんはブログで「年度途中の自己都合退職者等」は「メンタル面での疾患が多い」と報告があったことに触れ、「都教委はなぜ、そうなるのか、働かせ方を考えるべき」。また、子どもを教職員らの性暴力から守るための相談窓口への相談件数の多さに「学校現場では、その暴力が力の弱い子どもに向かう」「学校が安心して過ごせる場に」と憂えている。

 6月22日投開票の都議会議員選挙。子どもにかかわる公約も多く掲げられているので、中身をしっかり見きわめたい。(??田亮子)

ライシャワー学園

 東京都町田市に手話を使わない私立聾学校がある。この学校法人日本聾話学校が、この4月から学校名を「きこえの学校 ライシャワー学園」に変更した。創立者の名前からとったもので、「聴覚主導の人間教育、心と耳をひらく教育を必要としている人に届けるため」と鈴木実校長。

 つまり障害の早期発見や、補聴器や人工内耳の発達で「きこえの環境」は向上したが、言葉を通してコミュニケーションをとることは軽視されるばかり。そんななか「他者とのかかわりのなかで言葉がひらかれる」(水口洋理事長)という取り組みに専門性を持つ学校の存在意義をみる。

 先日のイベントでは生徒らが歌を披露。「聞き、話し、歌うことを楽しんできた」と中学生があいさつしたように、学校生活を体現する時間だった。「学んだのは聴くこと」と話した卒業生も。「聞き合うことからコミュニケーションは始まる」(水口理事長)。

(吉田亮子)

信仰

 昨年の夏に亡くなった、ある高齢の女性を偲んで、キリスト教会で記念会があった。横浜市・寿地区や神奈川県相模原市での路上生活者支援を長く行なっていた人だった。

 記念会に駆けつけた人からは、炊き出しでは誰よりも早く来て準備をしていたこと、介護保険が始まる前から地域の高齢者のために食事の提供を行なっていたことなど、困っている人を見ると放っておけない彼女の姿が語られた。

 活動団体のニュースレターには「対象者が少なくなっても、私たちの活動は変わる②となく、ホームレスの存在がゼロになる世が来ることを願いつつ続けたい」とあった。

 彼女を突き動かしていたのは正義感であり、キリスト教の信仰だったのだろう。先に亡くなったお連れ合いもそうだが、二人とも希望どおりに献体され、亡くなってもなお人のため尽くしている。夫妻は本誌の定期購読者だったことも付け加えておきたい。(吉田亮子)

コメがなくなる

 米価などの物価高騰が長引き、あちこちから悲鳴が。川崎で生活困窮者支援のため弁当を配っているキリスト教会の牧師は、協力してくれる農家から昨年届いたコメがあるものの、どこまで続けられるか不安だと話す。一方、配食の列に並ぶ人数は増え続けているという。ある小さな学校では給食で出すコメが高すぎて買えなくなり、通常の流通にはのらない粒の小さいコメ(中米)を農家から直接売ってもらい凌いでいるとか。

 ニュースによると、高齢者施設では給食費増加が経営を圧迫し、職員の賃上げができず人材が流出している。「人件費や光熱費も高騰していて施設の維持は限界だ」と話す特養の施設長も。すでに社会の仕組み自体が成り立たなくなっている。この状況がわからない前農水大臣の発言は本当に腹がたつ。私はと言えば、定期購入しているコメの分量が春から減ってしまった。でも、だからと言って食べる量は減らせず……。(吉田亮子)

加藤やすこさん

 今号「香害」の筆者、加藤やすこさんは自身も化学物質過敏症と電磁波過敏症を併発しながら、環境過敏症患者会いのち環境ネットワーク代表として活動するジャーナリストだ。最近も家族の手術の付き添いで病院控室にいたところ体調が悪くなったという。

 消毒剤に反応したのか、まず鼻から喉にかけて粘膜の痺れが広がるのを感じ、さらに動悸がして座っているのが辛く、ソファで横になるしかない状態に。機器への影響から携帯電話は禁止だったが、屋外から侵入するのか、電磁波の測定値は高かったそうだ。

 ふらつきながら帰宅したもののその後、痺れは焼け付くような痛みに変わり、しばらく声が出なかった。化学物質過敏症患者は人口の約8%、電磁波過敏症患者は約6%と言われる。毛が抜けたポメラニアンは人間の将来の姿だ。

「病院の環境を安全に整備することは医療スタッフの健康を守るためにもなる」とは加藤さんの言葉。(吉田亮子)

野津田公園

 終点でバスを降り、ゆるやかな坂を上って森林を抜けると開けた場所に出る。東京・町田市の野津田公園「上の原広場」だ。奥にはサッカーチームFC町田ゼルビアも使用するコートが見えるが、もとは「広場」の一部だった。4月、自然観察会と向かいの雑木林で映画上映会があった。

 ブラジル在住の映像作家、岡村淳さんが今年来日した際に制作した『里山の冬の華』は、同公園「湿生植物園」で白いガマの穂が一面に飛ぶ様子をとらえた貴重な映像だ。しかしここも「広場」も町田市は潰す計画だと主催者が説明すると参加者から悲鳴が。

 広大な野津田公園にはまだまだ豊かな自然が残るが、ゼルビアのホームスタジアムもあり、「広場」は人を運ぶための大型バスのロータリーになる計画。年間20未満の試合のために、絶滅危惧種の昆虫や植物を犠牲にするのか。

 5月3日、憲法大集会で声をかけていただき感謝! 報告は次号で。(吉田亮子)

今年も憲法大集会に出店

「子ども・男子を産まないことが、これほどまでのバッシングを許すこの天皇制社会を、皇太子夫妻を擁護する立場からではなく、どのようにきちんと批判できるのか」

 当時の騒動に対する桜井大子さんのこの問いは自らの問題としてきたからこそ出てきた言葉だろう。「天皇制」は引き続き次週も取り上げる。

 憲法特集では「前文」を中心に平和的生存権や国際協調主義について植野妙実子さん(中央大学名誉教授)に語っていただいた。その植野さんが登壇する集会がある。

 5月3日(土・休)11時~/パレード14時半~、東京・有明防災公園(りんかい線国際展示場駅4分、ゆりかもめ有明駅2分)で行なわれる「未来は変えられる!戦争ではなく平和なくらし!2025憲法大集会」(平和といのちと人権を!5・3憲法集会実行委員会主催)。今年も金曜日はブースを出店するので、ご来場の際はぜひお立ち寄りください。(吉田亮子)

暉峻淑子さん

「希望を抱けるところは、格差をなくすとか、差別をなくすとか、そういう草の根の動きが社会に広がっていくということでしょうか?」(20頁)との竪場勝司さんの質問に、暉峻淑子さんは「そういうことを仕方なくではなく、本気でやっている人間はちゃんといる」「社会はより良い方向に変えられるという、もう一つの思想の価値体系を事実を通して見つける」と話した。続けて「『週刊金曜日』もそれをめげずにやっている人たち(の集まり)だなと思っています」と。そうありたいと励まされた取材だった。

「もう一つの思想の価値体系」を提示すべく、女性九条の会(https://x.gd/UGHZt)は講演会「尊厳を持って歳を重ねるために 福祉後退社会のなかで」を開催。講師の宮子あずささんは看護師で、『東京新聞』でコラムを担当するなど著述業も。4月28日(月)14時、東京・ココネリホール(西武池袋線・大江戸線「練馬駅」)で。(吉田亮子)

大阪・関西万博

 4月13日、大阪・関西万博が開幕した。前売りチケットが目標に達しない見込みと報道されているが、それもそのはず。東京の私のまわりで万博が肯定的に話題にあがることはない。しかし1970年の大阪万博には、父は東京から行き、幼い私はもらったお土産のことを覚えている。

 高さ15センチほどの三角錐型の赤いからだに目や鼻があり、頭には白いフワフワの毛がついたぬいぐるみ。ネットで調べると、すぐにヒットした。カナダ館のお土産で、「トンガー」という神さまのようだ。おお、モノによっては1万円以上の値がついている。実家にはもうないかな。

 指摘されている問題の一つに、万博を口実に公費でIR(統合型リゾート)への鉄道などのインフラ整備をしたのでは、という批判がある。しかし、ここにカジノができたとしても、カネに余裕のある人が鉄道を使う?と友人が言う。万博後、夢洲はどんな風景になるのか。(吉田亮子)

おめでとう

 この春、朝鮮学校に入園・入学する子どもたちに「おめでとう」を伝えるため、東京都内にある学校に行った。在校生による花のアーチをくぐり会場に入場。緊張している子や恥ずかしそうな子、カラフルな民族服でニコニコの子も。子どもの数は少ないし、学校を一歩出れば辛いこともあるかもしれない。けれども同胞以外にも応援する人はいる。困ったら近くの大人に助けを求めてほしい。それに応えられる社会でありたい。

 一方、2024年度の都立学校卒・入学式総括集会が3月31日にあった。ジャーナリストの永尾俊彦さんによると08年に「日の丸・君が代」に対して不起立の生徒がいたら起立を促すという文言が進行表に入って以来、都教委による強い指導が続く。不起立による処分を理由に再任用を打ち切られて時間講師になったある教員は24年度、不採用の通知を受けた。被処分者に対するあらたな攻撃が起きているという。(吉田亮子)