編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

いつの時代?

 特集の山本蓮さんの原稿、冒頭の文章を読んで驚いた。いったいいつの時代のことかと思うが、今を生きる20代女性の声だ。ネットを検索すると出てくる出てくる。年末年始に夫の実家に帰省して、数日かけて大掃除→買い出し→お節の仕込み→年越しそばと天ぷら作り。その間、男性は宴会! ある地方では、女性は「年末年始は飯炊きババア」と自虐的だとか。男性は「酒持ってこい。つまみ持ってこい」で、もう帰省したくないと。考えてみれば私は彼女たちの親世代、「家制度」は過去のものと思い生きてきた。これは、反・家制度のバックラッシュなのだろうか。

 今年も新年早々、米トランプ政権によるベネズエラへの大規模攻撃があり、その後島根県東部を震源とする最大震度5強の地震があった。被害に遭われた方にお見舞い申しあげたい。一昨年は能登半島地震、そして思い出すのは1月17日の阪神・淡路大震災。31年を迎える。(吉田亮子)

遺品整理

 遺品整理の業者と話をする機会があった。12月22日で最終回を迎えたテレビドラマ「終幕のロンド」の主人公も遺品整理人の設定。さまざまな思いを抱える遺族に対し、理不尽なことがあっても「私たちは故人の思いを伝える責任がある」と寄り添おうとする姿が胸を打つ。そんな話をしていたら、あんなもんじゃない、ドラマはきれいすぎ、今日は天井までごみがあふれていた現場だった、という。

 亡くなった友人の家は片づいていたがモノが多い。とくに手芸用品があちこちから出てくる。ポーチや手袋などをつくってもらったが、プロ並みの作品の後ろには使わなかった材料がたくさんあるということ。仕事ってそういうもんだよね、としんみりしていたら、私が10代のころの写真が出てきてギャー! なつかしさに手が止まるが、片づけの期限が迫る。ともあれ、この1年の本誌を支えてくれた読者のみなさまに感謝申し上げたい。(吉田亮子)

ガザ

  がれきの中に埋もれるように置かれた赤ちゃんの人形。小さな身体に巻かれた布は白と黒で配色されたパレスチナの伝統的スカーフ、クーフィーヤ。これは2023年のクリスマス、ヨルダン川西岸のキリスト生誕の地とされるベツレヘムの教会でキリスト降誕場面を表現した展示だ。

 ムンター・アイザック(訳によってはムンテル・イサクもあり)牧師は「もしイエスが今日生まれたとしたら、ガザのがれきの下で生まれるだろう」、そう言ってジェノサイドに抗議し、この年も次の年もこの教会はクリスマスを祝うことを中止したという。牧師は、イスラエルはパレスチナが神から与えられた「約束の地」という聖書の時代をいつまで生きるのかと憤る。

 イスラエルによる攻撃は今も続いている。ガザ保健省は11月、23年10月以降の死者数が7万人を超えたと発表。ユニセフによると、停戦発効後も67人の子どもの命が奪われている。(吉田亮子)

小室等さん

 小室等さんの「なまくらのれん」が今号で最終回となった。暖簾をくぐるイラストレーションとともに和田誠さんから引き継いだ連載だった。

 1回目は東日本大震災から2年をたたずして人々の「認識が希薄」だと怒りつつ、小出裕章さんと佐高信さんが対談本『原発と日本人』を出したことや、小出さんが震災後から出演していたラジオ番組が突然打ち切りになってしまったものの新番組が立ち上げられたことなどが綴られる。

 そう、小室さんはいつだって憤っている。だからチェルノブイリ(チョルノービリ)原発事故や能登半島地震などなど、被災地に赴いては人を励まし、情報発信せずにいられないのだろう。13年分の心からの感謝を申しあげたい。

 なお、中山千夏さんの「はまぐりのねごと」も今号で最終回。こちらは新連載を準備中なのでおたのしみに。そろそろ、小室さんが歌う「O HOLY NIGHT」が聴きたくなってきた。(??田亮子)

中村哲さん

 アフガニスタンで活動した中村哲医師の対談集がこのほど出版された。本誌2003年3月14日号で掲載した池澤夏樹さんとの対談「アフガニスタン、そしてイラク 殺す理由は何もない」も収録されている。担当は私だった。帰国中の中村さんは講演で全国を飛び回っていて、どこか地方から福岡に戻る途中に羽田空港で時間をとってもらった記憶がある。今号で佐々木亮さんも書いているように、米軍侵攻後のアフガニスタンの状況をするどく見抜いていた。あらためて中村さんの言葉を読むにつけ、凶弾に倒れたことが残念でならない。

 今号から連載「リトルてんちゃん」がはじまる。イシズマサシさんは本誌01年6月1日号から3年ほど写真企画「ねこじた」を連載。冷めた視線で世の中を写したり、かと思えば絵本を出版したり。最新刊は『ぼくはダンサー』(岩崎書店)。そんなイシズさんによる子育てマンガの世界をどうぞ。(吉田亮子)

チェルノブイリ

「チェルノブイリ子ども基金」から来年の「40周年救援カレンダー」が届いた。もう、そんな季節かと驚く。1986年のチェルノブイリ(チョルノービリ)原発事故で被災したウクライナとべラルーシの子どもたちへの支援を91年から続ける団体で、甲状腺手術後の子どもたちの保養プロジェクトなどを行なってきた。

 2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻がはじまり、原発事故への関心が薄らいでいるのは事実だろう。しかし一方で戦争によるあらたな原発事故の脅威が高まっている。日本では柏崎刈羽原発の再稼働が決まりそうだ。子どもたちの未来を守るために「チェルノブイリ」を忘れてはならないと思う。

 収益はチェルノブイリと福島の原発事故で被災した子どもたちの救援にあてられる。1000円。申し込みはチェルノブイリ子ども基金(電話/FAX03・6767・8808、cherno1986@jcom.zaq.ne.jp)まで。(吉田亮子)

マイナ保険証

「12月2日以降、医療機関等における資格確認については従来の健康保険証を利用することができなくなります」「マイナ保険証利用登録がお済みでない方を対象に、資格確認書を交付いたします」

 こんな文言とともに届いた資格確認書。出版健保からの封筒の中の厚紙に、確認書が張り付いていた。?がすとコーティングされているが、ペラペラだ。今まではプラスチックのカードだったので簡単に折れることはなかったが、これは取り扱い注意。大事なものなのにふざけてる! と憤慨して帰宅したら、つれあいのは薄い紙に印刷されただけで自分で切り抜くタイプ。すぐに使えなくなりそうだと、つれあいも困り顔だった。

 調べると、国民健康保険と後期高齢者医療保険は期限切れの保険証でも来年3月までは使えるとか、スマホ保険証は対応したカードリーダーがなければ使えないとか、いろいろ複雑。くわしくは、誌面であらためて。(吉田亮子)

犬笛

 11月4日の米ニューヨーク市長選でゾーラン・マムダニ氏(34歳)が当選した。「マムダニ旋風」などと報道されているが、本誌ではすでに7月18日号で早尾貴紀・東京経済大学教員が「政界ではまだ『無名』なマムダニが」「勝つ可能性が最も高い候補」で「イスラエル批判」をしているなどと紹介していた。選挙結果を受け、今号でも早尾さんがアンテナで取り上げているので、バックナンバーと併せてお読みいただければ。

 一方、日本の政治家と言えば、まずは日本維新の会の藤田文武共同代表。公設秘書の公金還流疑惑を報じた『赤旗』記者の名刺をX(旧ツイッター)上でさらし、記者に5500通を超える嫌がらせメールや電話が殺到しているという。連立与党の代表自らが「犬笛」を吹いた責任は重たい。

 そして9日、「犬笛」を吹いたN党の立花孝志党首が名誉毀損容疑で逮捕。こうした行為には、社会全体でNOを突きつけたい。(吉田亮子)

新しいメディア

 昨年のちょうど今ごろだったか。兵庫県知事選で当時の齋藤元彦前知事が予想に反して再選した。SNSを駆使した選挙戦の効果には驚いた。そして直近では参院選での参政党の躍進にも効果を発揮。しかしいずれも事実ではない情報を拡散し、それに基づきヘイトをまき散らす始末。そのせいかSNSなどから発信される情報には胡散臭いイメージがあり、受け取っていいものかとつい慎重になる。

 今号ではそんな認識をあらためさせてくれる「新しいメディア」を取り上げた。いずれも既存のメディア出身者が立ち上げたという。その一つ「生活ニュースコモンズ」の吉永磨美さんは「(新旧メディアが)役割分担すれば、社会全体としていい方向になる」と話す。そして「競って奪い合う時代ではなく共有する時代」だとも。メディアのあり方は大きく変わりつつある。創刊32周年を迎えた本誌の未来を考えるヒントになりそうだ。(吉田亮子)

外国人差別

 10月26日に川崎市長選の投開票があり、現職の福田紀彦氏が4選を決めた。落選した候補者の中には被差別部落を動画でさらしたなどと本誌でも取り上げた川崎市の出版社、示現舎の宮部龍彦代表の名前も。報道によると川崎区桜本で街宣を行ない、在日コリアンへの差別をなくすため市が設置した「ふれあい館」を攻撃。最終日までデマと差別扇動を繰り返し、市民による抗議が続いていたという。

高市早苗首相は所信表明演説で「一部の外国人による違法行為やルールの逸脱に対し、国民の皆様が不安や不公平を感じる状況が生じていることも、また事実」と言った。しかし、いろいろな人が何度も指摘しているが、外国人の数はこの20年で2倍近く増えているものの検挙された人数は3割減っている(犯罪白書)。トップの姿勢が差別を助長させることは米国を見ても明らか。不安を煽り、市民を分断させるような政権は放っておけない。(吉田亮子)