編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

「死の商人国家」

 専守防衛の放棄に等しい長射程ミサイルの配備開始や米ロが戦争を仕掛けるなかで迎えた憲法記念日(5月3日)。多くの人々が平和の危機を共有したと感じます。東京の憲法大集会に設けた『週刊金曜日』ブースには昨年よりも多くお立ち寄りいただきましたが、その表れの一つだとすれば複雑な心持ちです。

「武器取引反対ネットワーク」の杉原浩司代表は殺傷可能な武器輸出解禁を巡る寄稿で成長産業として国が後押しすることで「死の商人国家」から後戻りできなくなると警告しています(15ページ)。

「死の商人」といえば子どもの頃に馴染んだ「サイボーグ009」に登場する「黒い幽霊団」が浮かび、「悪」を連想する人も少なくない世代です。一方、今は10代にも広がる総投資家時代。株式市場では「防衛銘柄」と呼び、どの企業が「買い」かが注目されているようですが、投資資金の使われ先にも関心を向けてほしいです。(臺宏士)

一人ひとりの尊厳を保障するために

「人質司法」の非人道性を浮き彫りにした大川原化工機事件を機に裁判官が下した判断の結果責任に厳しい目が注がれるようになっています。そのなかで、水俣病の認定をめぐって福岡高裁の高瀬順久裁判長が4月23日に他の疾患の可能性を理由として訴えを退けたのは残念でした。

 水俣病の行政責任を追及した番組で知られる元NHK記者の大治浩之輔さん(90歳)は、本号の特集「憲法の現場から」で「公害問題では被害者側に立った」(28ページ)と証言。その言を借りれば、同高裁は他の疾患である証明ができていないとして患者認定するのが、幸福追求権や生存権を掲げた私たちの日本国憲法の精神だと思います。

 日本という国に集う一人ひとりの尊厳を保障するために憲法がある。『週刊金曜日』は、多数派にかき消されそうな人々の声に耳を傾けるためにある、との思いで本号から編集長を務めます。(臺宏士)

編集長交代

 トランプ米大統領が自身をキリストになぞらえた画像をSNSに投稿し削除したと思ったら、今度は自分がキリストに抱き寄せられる画像を投稿。ローマ教皇のイラン攻撃批判に腹を立て、自分は神だとか、神に愛されているだとか言いたいのか。SNSではパロディが投稿されている。

 最近もう一つ驚いたのは、自民党大会で陸上自衛隊員が「君が代」を歌ったこと。首相をはじめ、防衛相も陸上幕僚長も自衛隊法が制限する政治的行為には当たらない、私人として参加したなどと言う。ではなぜ制服姿? 鈴木俊一党幹事長も「政治的意味はない」と言うが、特定政党の大会であり、官職も紹介された。説明には無理があるだろう。

 次号からは憲法特集を始める。5月3日の東京・有明防災公園での憲法大集会にもブースを出すので、今号の「表紙」を掲げてぜひ立ち寄ってほしい。次号からは臺宏士に編集長を交代。さらなるご支援を!(吉田亮子)

外国人政策

 米国とイランの停戦協議は合意に至らなかったようだ。だいたいホルムズ海峡を共同管理して船舶から通航料をとるなんて、トランプ米大統領の頭の中は大航海時代だと言うしかない。もう一人、時代錯誤なのは、イスラエルのネタニヤフ首相だ。レバノンへの武力侵攻は、3000年前のダビデ王朝を夢見ているとしか思えない。これらの常軌を逸した行為によって、どれだけの人の命や生活を奪えば気が済むのであろうか。

 今号では日本の原油備蓄について、中東依存から変わっていない実態や、政府が今求められていることを後藤逸郎さんに執筆していただいた。外国人政策については座談会で、「仮放免」に置かれた当事者、エマさん(仮名)に参加いただいた。「不法滞在者」などと学校で言われたのは、高市早苗氏が首相になった後のことだ。短時間審議で今年度予算が成立した。首相が言う、国論を二分する政策の審議が始まるのか。(??田亮子)

伊藤千尋さん

 イランで「革命防衛隊」が巡回監視や情報収集、調理、医療の支援ボランティアを12歳まで引き下げて募集している。すでにイスラエルによる検問所への攻撃で、父親と警戒にあたっていた11歳の少年が死亡したという報道も。

 15歳未満の子どもを国軍や武装勢力が徴募したり戦闘で使用したりすることは戦争犯罪であると、国際条約のローマ規程で定められている。一方、国際社会は国際法違反の米・イスラエルを止められず、戦争の出口は見えない。

 そんな状況に「武力でなく対話」「九条の碑には平和な世界で暮らしたい思いがこもっている」と国際ジャーナリスト・伊藤千尋さん。4月4日、東京・町田市で初めて、全国で79番目となる九条の碑の除幕式で講演した。雨の中、175人が集まった。碑には絵本作家・長谷川知子さんの作品、ほうき(戦争放棄)を持つ少女や「子どもたちの未来に平和を」などの文言。訪ねてほしい。(??田亮子)

フリースクール

 2025年の自殺者数が2万人を割って過去最少となるなか、小中高生の自殺者が過去最多の538人となった。厚生労働省が3月27日に発表した。小中高生の自殺の動機は「学校問題」がもっとも多く251件に上る。G7(先進国)における10〜19歳の死因で、自殺が1位なのは日本だけだ。なぜ日本は子どもにとって生きづらい国なのか。

 今号の子どもの安全安心を考える特集では、不登校の子どもが増え、日本に500とも800ともいわれるフリースクールが「第三の居場所」として機能している実態を取り上げた。4月から新学期が始まる。わくわくドキドキの一方、つらい気持ちの子どももいるだろう。子どもたちの声にどう応えるのか、大人が問われている。あわせて紛争下の学校を守る「学校保護宣言」の取り組みを紹介した。18歳未満の5人に1人が紛争地にいるという現実に愕然とする。このままでいいわけがない。(吉田亮子)

国旗損壊罪

 自民党は、国旗損壊罪の新設をめざしてプロジェクトチーム(座長・松野博一元官房長官)を立ち上げる。小林鷹之政調会長が3月19日の会見で発表した。一方、広島弁護士会のように反対表明する団体も。同会は2月、日本国国章損壊罪の法制化に反対する会長声明を発表。米国での違憲判決を引き合いに、国家の名誉的利益は刑罰で維持されるものではない、とした。

 今号で憲法学者の志田陽子さんは、国旗損壊罪が新設されると「言論への萎縮効果が高くなる」と話す。ジャーナリストの永尾俊彦さんは「日の丸」問題にこだわってきた表現者や教員のほか、「日の丸・君が代」不起立の裁判にかかわる弁護士にも取材。その弁護士の言葉「社会全体が学校のようになりますよ」には、はっとさせられた。教員が不起立で処分されていくのを、私たちは対岸の火事のように眺めていたのではないか。教員たちの姿は私たち一人ひとりであった。(??田亮子)

3・11から15年

「ガソリンの値段があがっている」。3月12日、東京郊外では30円以上あがったとつれあいが言う。ペルシャ湾で石油タンカーが攻撃された。イラン情勢が日本の市民生活に影響を及ぼしている。高市早苗首相は新たなガソリン補助金や石油備蓄の放出を表明しているが、どうなることか。

 8日に投開票があった石川県知事選では、高市首相(自民党総裁)が応援に入ったものの、勝ったのは現職の馳浩氏ではなかった。もう一つお伝えしたいニュースは、新潟水俣病第2次行政訴訟で新潟地裁が、原告8人全員の「水俣病認定」を命じたことだ。くわしくは次号以降で。

「3・11から15年」の3回目は、放射能データについて取り上げた。当時の被ばく状況に改めて驚く。崔善愛編集委員の「風速計」や毎月福島へ通う渡辺一枝さんへのインタビュー「歓喜へのフーガ」も合わせてお読みいただければ。「3・11」のシリーズはさらに続く予定。(吉田亮子)

イラン

 東日本大震災から15年を迎え、3月7日に「東電フクシマ原発事故から15年 とめよう原発!」集会があった。本誌3月6日号でも原発回帰を問うべく市民団体に話を聞いたが、同様の危機感が共有された(アンテナで詳細報告)。出店したブースを訪ねてくれた読者に感謝申し上げたい。

 イランへの軍事攻撃から1週間。今号では早尾貴紀さんに解説していただいた。さまざまな情報が飛び交うなか、米国がAI(人工知能)を搭載したとみられる「自爆型ドローン」を使用したとの報道も。専門家によると、自分で対象を見つけ出し攻撃計画を立てるというから恐ろしい。

 こうなると、やはり今号で取り上げた「F—REI」をはじめとする福島イノベーション・コースト構想を思わずにいられない。南相馬市にある「福島ロボットテストフィールド」の公式サイトには、ドローンやAIの文字が並ぶ。学術界と政治は距離をとるべきだろう。(吉田亮子)

訂正

 米国とイスラエルがイランを攻撃、小学生を含む市民に犠牲が出ている。ホルムズ海峡の事実上の封鎖で日本への影響も否定できない。直前に「エプスタイン文書」からトランプ氏の資料が欠落している可能性が報じられ、関心をそらすためとの疑惑もある。イラン、中東情勢は次号で。

 本誌2月13日号「歓喜へのフーガ」30頁、福岡県水巻町にあった炭鉱で戦時中、強制的に働かされた元オランダ人捕虜が町を再訪したのは「20年ほどあと」ではなく「40年以上あとの1986年」でした。訂正してお詫びします。

 また、亡くなった捕虜のための十字架の塔については、〈捕虜の扱いをめぐる連合軍の調査を恐れた日本炭鉱(編注・日炭高松炭鉱)が、一週間でコンクリート製の十字架を作って外観を墓地のように整え、捕虜を埋葬、手厚く葬ったように取り繕った〉(2000年4月19日付『朝日新聞』)。その後、町の人たちが塔を整備した。(吉田亮子)