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新しい選択肢

 最近、自由と選択について調べて考えている。自由をなぜ息苦しいと感じるのか、なぜ人は自由をみずから放棄して服従するのかという問いを考えざるを得ない場面が日本で増えているからだ。

 安冨歩の『生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却』では、自由とは選択肢が増えることだと指摘していたが、週末に通読したバリー・シュワルツの『なぜ選ぶたびに後悔するのか オプション過剰時代の賢い選択術』でも、それを再確認できる。

 政治の分野において意思決定(選択)の実証データを集めることは非日常らしく、行動経済学や社会心理学の業界のほうがデータや書物は豊富だろう。ショッピングの場面などが典型事例だが、それゆえ意思決定論は矮小化されて議論されがちになっていまいか。

 いま憲法9条改正やTPPによる規制緩和で、新しい選択肢を作り出そうとしている。政治は不満足を根拠に代案を提示してくるが、短期的な快楽を満たすために服を買うような選択は、長期的には後悔を招きうるのだ。