編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

耳が痛い情報ほど

 先週、人間魚雷回天を巡る漫画『特攻の島』(佐藤秀峰著)を読んだ。回天戦は米軍に対して有力な戦果を与えたと報告され、皇軍は前のめりになった。しかし米国側にはそれを裏付ける記録は存在しないという。

 さて経済紙誌では連日生保や銀行など金融系エコノミストが登場し、さまざまな分析を披露している。彼ら彼女らは生の企業情報を持ち、ネガポジ両面の見解も出す。しかしながら、小誌に登場するエコノミストたちのような辛辣な発言はまずお目にかからない。

 イケイケムードに水を差す発言や政権批判には臆病になるものだ。無論そのような情報を送り出すメディアとの共同作業だ。しかし現実は、実質賃金はマイナス、10年以上叫ばれ続ける「デフレ脱却」ももはや鳴りを潜めた。

 株高を成果にしていた首相も「日々の株価に一喜一憂しない」と言いだす始末。今回のマイナス金利では住宅バブルと投資家の破綻も懸念されている。本来、情報と分析に色はない。むしろ耳が痛くなる情報と分析ほど為政者は歓迎すべきだ。