編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

今週号はひさびさの本誌編集委員以外による責任編集だ

編集長後記

 今週号はひさびさの本誌編集委員以外による責任編集だ。森達也の「オウム」、佐藤優の「沖縄と差別」以来、三度目か。編集長が編集責任を放棄しているだけじゃないのと言う読者もいるかもしれないが、これも編集のうちであります。

 さて責任編集者は本誌連載「自由と創造のためのレッスン」の廣瀬純。なぜ廣瀬純かと言えば、なにせ文章が、一字一句が真剣だからだ。週刊誌は一読して読めないと悪文と言われるが、彼の連載の二ページはつめこみすぎ、行間がありすぎ。さらっと読めない。しかしその文章にはいつもなぜか明るさや未来への本気の渇望を感じていた。そんな印象で昨年一〇月、初めて廣瀬純と逢った。ぼくが編集長になる前から連載していたし、彼はあまり東京にいないから。廣瀬純は言葉を慎重に選びながら「絶望」や「不可能」を口にした。それは偶然にも石牟礼道子さんや田中優子編集委員のまなざしの先にあるものと同じものらしかった。今、責任編集の原稿を読み、絶望と希望を己に突きつけている。(平井康嗣)