編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

被災経験を教訓に

 大雪で東京近隣では群馬県南牧村、埼玉県秩父などが孤立化していることは新聞やテレビで知ったが、山梨県内の生々しい情報はソーシャルネットワークで知ることになった。

 記者も入れないから情報がとれないのだ。大雪で17日現在、全国で17人が亡くなったという。「観測史上最高」ばかりがニュースだが、現地では食糧不足、避難先やトイレの場所、放置自動車の扱い、などさまざまな「初めて」と情報不足に直面し、今も続いている。

「被災地だ」という声も高まっている。取材や支援に行きづらいとはいえ、テレビ局が一石二鳥だとニュースにかこつけて嬉々として五輪映像を垂れ流していたり、首相がぬくぬくとてんぷらを食べていると腹も立ってくる。

 ふりかえれば週末、都内のスーパーではかつて慢性的に不足していた水が安売りされ、たやすく買えた。地震対策のために常備する家が激減したのだろう。もうすぐ3月11日だ。あの被災の経験は、教訓とはほど遠い、応用力や想像力につながらない知識になりかけている。 (平井康嗣)