編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

『不便なコンビニ』

 韓国で累計150万部を売り上げ、いまでもベストセラーの小説『不便なコンビニ』を、今回ソウルに行った際に購入した。ソウルの下町で亡き夫の遺産で建てたコンビニを営む元教師の女性と、彼女が駅でなくした財布を拾ってくれたことが縁でコンビニの深夜シフトの店員として雇ったホームレスの男性が主人公。記憶を失い言葉はたどたどしいが、誠実で優しい彼によって、さまざまな悩みを抱える人々が救われていく。

 実は物語の舞台となったコンビニを経営するのは、大学院時代の後輩とその夫だ。商売が軌道にのり、昨年2店舗目もオープンさせた。その2店舗目に行った。日本のビールやワイン、肉や野菜類なども売っている。コンビニというよりスーパーといった感じだ。客はひっきりなしに訪れていた。後輩に小説がなぜ人気なのか聞いた。「コロナ前夜を描いたからでは? みんな生きづらくなっていたから」。なるほど。確かに心が癒やされる物語が続く。日本でも最近、翻訳本が小学館から刊行された。(文聖姫)