編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

オバマ大統領誕生のいま、「対等な日米関係」を求める絶好の機会だ

「米国はジャイアン、日本はスネオ」。本誌編集委員、石坂啓さんの表現だ。さすがに漫画家らしく、ドラえもんの登場人物で見事に日米関係を示している。また進藤榮一江戸川大学教授は「日本は米国にとって唯一の朝貢国」と指摘する。日米は同盟国と市民は思い込まされてきたが、実態はおよそ、かけ離れているのだ。

 米国大統領選挙について興味深い調査結果が、4日付けの東京新聞で報じられていた。米世論調査会社ピュー・リサーチセンターが、世界24カ国で同選挙への関心度を調べた。その結果、83%が「ある」と答えた日本は世界のトップだったというのだ。何しろ、当の米国でも80%だから、異常な数字である。

 ちなみに3位のドイツはぐっと下がって56%。また韓国は47%(8位)、中国にいたっては17%(22位)しか「ある」と答えていない。このデータからも、日本が米国の属国であることがうかがわれる。そしてその事実は、見た目、ジャイアンとは似ても似つかないオバマ氏が大統領になったからといってチェンジするものではない。

 確かに、オバマ氏は母親の出生地であるインドネシアで暮らしたことがあり、ブッシュ氏に比べ、アジアへの関心が強いと言われる。だが、民主党政権になったからといって、突然、アジア外交が根本からひっくり返ることはない。まして、米国にとってアジアで最も重視する国は中国であり、そのことも従前と変わることはない。

 要は、日本が米国に片思いしているにすぎず、あちらは「米軍基地に便宜を図り、自衛隊は米軍の属軍として差し出し、さらにはカネも出す」という、実に使い勝手のいい、名前ばかりの「同盟国」と見ている。にもかかわらず、この国の為政者は米国の顔色をうかがうことに神経を使い、憲法無視、市民そっちのけの国政を行なってきたのだ。
 
 折角、オバマ氏は「チェンジ」を掲げているのだから、日本は「日米関係を対等なものへ変革しましょう」と申し入れるべきだ。絶好の機会である。だが、現状を見ると、スネオそっくりの日本の首相に、米国の従属を解き放ち、自立とすることを期待しても、木によりて魚を求めるごとしか。
 
 本誌今週号は米国大統領選を特集した。巻頭の記事は筑紫哲哉編集委員に頼むことにしていた。73歳での早すぎる死は、いまも信じられない。今週号と12月5日号で追悼の特集を組む。合掌。(北村肇)