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「医療過誤訴訟百年」に思う。“赤ひげ先生”探しは木によって魚を求めるがごとしか

 今年は「医療過誤訴訟百年」にあたる。その特集を組みつつ思い浮かべた、医師や医療関係者の言葉あれこれ。

「著名な歌手が自殺未遂で救急に運び込まれた。蘇生はとても無理に思えたが、必死で治療した。何しろ有名人だからね。できればうちの病院で死なせたくない。結果として命だけは救った。同じ状態のホームレスがかつぎ込まれたら、何もせず数分後には霊安室に運んでいただろう。私は心臓移植手術には一貫して反対している。医師の仕事をしていると、科学では割り切れない、絶対的な命の尊厳を感じるときがあるからだ。だから命に差をつけるのがおかしいことはわかっている。でも仕方ないな、うん、仕方ない」

「北村さん、なるべく国立病院にはいかないほうがいいよ。ホームドクターをもたなければだめだ。大病院は検査に頼って、数字ばかりみている。機械が正常に機能しなければ、即誤診だ。実は、私の妻が頭が痛いというので、国立病院に連れていったら『なんともない』との見立て。でもいつまでも治らない。そこで近くの個人医院で診察してもらったら、顔を見ただけで『すぐにきちんと検査しなくては大変だ』と言われた。あわてて別の総合病院で精密検査をしたら脳の梗塞が見つかり、危うく一命をとりとめた。立場上、こんなことは絶対に公にできないけどね」

「昔の医者はね、みんな患者の顔色で病名を言い当てたもんだよ。私も近所に住む患者のことは大体、わかる。風邪か、重篤な病気か、それとも二日酔いか。別に医者でなくても、親だってそうじゃない。自分の子どもが本当の病気か、学校に行きたくないための仮病かくらい、すぐにお見通しだ。でも、最近はそんな医者はほとんどいないね。“赤ひげ先生”なんてやってたら、もうからないしね」

「鍼はね、ツボに打ってはだめなの。すぐに治っちゃうじゃない。ツボの周りに打っておけば、患者は1週間、通ってくれる」

「ワクチンも薬も、大量に作っていると、何千本、何万本に1本は不良品ができる。これは避けられないんだよ。誰の責任というわけではない。だから私はなるべく自分の子どもにワクチンは射たない」

「末期がんです。手の施しようがない。確かに定期的に検診はしていました。なぜ発見できなかったのかって? 数値は正常だったんです」(北村肇)