編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

抗がん剤

 がんで闘病していた友人が亡くなった。今夏はいっしょに北海道旅行をたのしんだのに、その後体調が急変。病院ではこれ以上治療することがないと言われ、自宅で訪問診療や介護などを受ける体制を整えていた。しかし、さらに具合が悪くなり、最期は別の病院の緩和病棟に入った。

 手芸が好きだったので作りためていた作品を葬儀の参列者に差し上げようと自宅を整理していたら、大量の薬と治療ノートが出てきた。体調が悪いなかで、抗がん剤治療の詳細を自身で記録していた。結局彼女は、長期間にわたる抗がん剤によって肝臓が限界を迎えてしまっていた。

 そんな彼女を見ていると、抗がん剤治療のあり方に疑問を感じざるを得ない。高市早苗氏が自民党総裁になり、首相になる見通しとなった。夫の介護をしていると報道されているが、医療や介護の現実にどう向き合うのか。期待はできないが、見つめたい。(吉田亮子)