編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

怒りの矛先を誤るな

 JR恵比寿駅(東京・渋谷区)で一時ロシア語の案内表示の上に紙が貼られ文字が隠されていた一件。利用客からロシア語の表記を疑問視する声があったからだというが、差別を助長するとして、批判の声が寄せられたことで、紙ははがされ元通りになった。当然だ。そもそもロシア語に何の罪があるというのか。

 確かにロシアのウクライナ侵攻は許されるべきではない。ロシア軍が多くの民間人を虐殺したという報道もある中で、プーチン大統領やロシア当局への批判の声があがるのは当然だろう。しかし、ロシア語の案内板を頼りにしている多くの在日ロシア人がいる。彼らが差別されるいわれはない。

 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による日本人拉致が明らかになった後、朝鮮学校生徒のチマ・チョゴリが切られたり、学校の前でレイシストがヘイトスピーチをがなり立てる事態が起きた。拉致が犯罪なのは確かだが、朝鮮学校の生徒に罪はない。怒りの矛先を誤れば、それは差別へとつながる。(文聖姫)