編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

谷川俊太郎さん

「なまくらのれん」で小室等さんが紹介してくれたとおり、滋賀県近江八幡市のボーダレス・アートミュージアムNO—MAは町屋や蔵が立ち並ぶ一角にあった。11月13日に亡くなった詩人、谷川俊太郎さん(享年92)の作品「詩人の墓」が中庭で出迎えてくれる。

 館内に入ると、今度は「死んでから」が目に飛び込んできた。詩には「前には聞こえなかった音が聞こえる」の一節があるが、谷川さんはいま何の音を聞いているのだろうか。2階では「死んだ男の残したものは」が鏡に書かれ、見るものの姿と詩が重なる仕組みになっていておもしろい。

 小室さんがこの歌をうたうのを何度も聞いたことがある。谷川さんとの関係は深く、小室さんにとっての魅力を存分に語ってもらう機会をつくらなければ、と思う。

 階段の壁には「かっぱかっぱらった」とリズムがたのしい「かっぱ」、傍らには古賀翔一さんの「立山蛙」などのフィギュア。妙にマッチした不思議な空間となっていた。企画展は12月15日(日)まで。(吉田亮子)