編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

統一教会と北朝鮮

 1991年末、統一教会の文鮮明教祖が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪れ、金日成主席と会見した。当時、朝鮮新報社記者だった私は、このニュースに衝撃を受けた。それまで、『朝鮮新報』、そして日本人向けの『朝鮮時報』では、統一教会の霊感商法を批判する記事を掲載していたし、何より反共を唱えるカルト集団のトップが訪朝し金主席と会うなど考えられなかったからだ。

 87年の民主化を経て、大統領となった盧泰愚氏はソ連や中国など共産圏との国交正常化に乗り出し、北朝鮮との関係改善も進めた。91年には南北が国連に同時加盟した。冷戦崩壊、ソ連・東欧の社会主義崩壊で危機感を感じた北朝鮮にとって、韓国との経済協力は不可欠だった。そうしたなか、訪朝した文氏は、金主席から豆満江地帯の経済特区や金剛山観光開発などの権利を得たとされる。90年代、統一教会の捜査が中断した背景には、こうした政治情勢もあったのかもしれない。詳しくは有田芳生氏と青木理氏の対談で。(文聖姫)