編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

国葬

 安倍晋三元首相が銃撃を受け死亡してから3週間が過ぎた。岸田文雄内閣は7月22日、9月27日に国葬を行なうことを閣議決定した。首相経験者の国葬は1967年の吉田茂氏以来、55年ぶりだ。国葬をめぐっては国論が二分されている。22日には、東京・永田町の首相官邸前で市民ら200人以上が集まり、「国葬反対」「安倍政治を美化するな」などと口々に叫んだ。21日には市民約50人が閣議決定と予算支出の差し止めを求める訴えを東京地裁に起こした。国が葬儀の全費用を負担することになれば財源は税金だ。中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬での公費支出は9643万円だったが、国葬なら公費負担はさらに増えるだろう。

 費用のみならず、安倍氏を国葬で見送ることで、「モリ・カケ・桜」やアベノミクス、安全保障法制の整備など、まだ検証すべき問題がなかったことになってしまうことを憂慮する。そして、「安倍氏が果たせなかった憲法改正を成し遂げる」という声が大きくなることも。(文聖姫)