編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

ゴンゾー・ジャーナリズム

 表紙にあるハンター・トンプソンを描いたラルフ・ステッドマンはトンプソンと組んで仕事をすることが多かった。

 GONZOは「ならず者」という意味で、これにはジャーナリストと続くだろうが、略されている。ゴンゾー・ジャーナリズムは客観報道などの正統派ジャーナリズム――たとえば、ウォーターゲートを暴いた『ワシントン・ポスト』、とは一線を画す攻撃的な取材表現方法だ。

 トンプソンは1967年にアウトローのバイカー集団、ヘルズ・エンジェルスに密着取材した作品を発表した。彼らに同化し、本質をえぐり出そうとした。

 私が密かにゴンゾーだと思っている業界人が数人いる。記者と限らないが、嗅覚鋭く、いずれも情熱が先行し、その人が場に関わると取材先の物語が変化していく。

 表紙のVINTAGEは特定の年代の逸品をさす言葉だ。現代ではゴンゾー自体が希少だと、ステッドマンはぼやきたいのだろう。しかし今の時代こそ個人で闘い表現するゴンゾー・ジャーナリズム魂が求められているのだ。(平井康嗣)