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「お友達内閣」と変わらない「おままごと内閣」

 はっきり言って、おままごとだ。「あなたは失格」と宣言されたのに、首相という地位に恋々として居座る。みせかけの“工夫”はこらしつつ、相変わらずお友達で周辺を固める。安倍首相の内閣改造・自民党役員人事は、世間知らずでわがままなお坊ちゃんの、お遊びの世界でしかない。まあ、想定内のことで、いまさら驚きはしないが。

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 舛添要一氏の厚労相や与謝野馨氏の官房長就任で、「お友達内閣」からの脱皮と評価する声もある。だが、舛添氏入閣は、あまりに単純でみえみえのめくらましにすぎない。与謝野氏の件にいたっては、そもそも安倍首相は、盟友の菅義偉前総務相を官房長に起用する気だった。ところが直前になって事務所費問題が発覚。泣く泣く「管官房長」を断念したという経緯がある。

 報道によると、森喜朗元首相は27日の講演で、留任した渡辺喜美行革担当相と、党政調会長に就任した石原伸晃氏の名前をあげ、「『お友達内閣』の年長さんから年中さんが残っている」と批判した。他の閣僚をみても、大半が「親安倍」である。本当に「お友達内閣」から脱却するなら、少なくとも、加藤紘一氏や谷垣禎一氏らを入閣させなくては話にならない。

 しかも、一方で、参院選大敗を踏まえて、「挙党一致」を掲げざるをえなかったために、各派閥の領袖を取り込む形になっている。「重鎮」といえば聞こえはいいが、おままごとを監視するオヤジといった風情で、ますます新内閣を魅力ないものにしている。

 それにしても、自民党の人材枯渇ぶりはすさまじい。お友達でもオヤジでも、とにかく識見や実力があればだれも文句は言わない。だが18人の閣僚の中に、存在感のある人物が見あたらない。ある意味で、これは危険なことだ。彼、彼女らに国の運営を任せられない、というだけではない。信念もビジョンもない政治家は、目立たないがゆえに、監視対象になりにくいのである。

 田中角栄氏や中曽根康弘氏はときに「巨悪」と称され、厳しい批判の目にさらされた。当然、野党やマスコミにもそれなりの覚悟が求められた。相手が大きければ大きいほど、攻める側の力量が問われたし、多くの市民はそこに期待しエールを送った。だが、目立たない「小悪」は、監視の目をするっとすり抜けることがある点で、意外にたちが悪いのだ。もっとも、自民党から人材が払底したのは、野党がだらしないからと言えなくもない。やれやれ。 (北村肇)