編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

歴史修正主義とナルシシズム

 昨年来の『朝日新聞』バッシングの最大の「燃料」である「従軍慰安婦」問題。1年が過ぎ、安倍首相とおともだち連中の歴史修正主義者の主張は崩壊している。

 これは正常値に戻ったに過ぎないが、単細胞な連中は朝日新聞社が公式に謝罪した瞬間を切り取り、勝った勝ったと凱歌をあげて勉強を止めている。そうして次に民間放送に圧力をかけだした。

 この数年、なぜ歴史修正主義が生じるのか自分なりに考えてきた。現状でのベターな答えは集団のナルシシズムだ。エーリッヒ・フロムは『悪について』で次のように言った。

〈傷つけられたナルチシズムは、傷つけたものが潰滅し、自己のナルチシズムに対する侮辱が償われてはじめて治癒できる。個人と国家をとわず、復讐は傷つけられたナルチシズムと、傷つけたものを抹殺して、その傷を「治癒しよう」とする欲求に基づくことが多いのである〉

 報復が連鎖することへの一つの答えだ。加害者が被害者になり、また加害者になる。これを人の当然の歴史として赦していいのか。