きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

阪急トラベルサポートの横暴(2)

シジフォスの希望(30)

 本誌の取材に応じたことで事実上の解雇処分(3月18日)を受けた塩田卓嗣さんら組合側に委任され、私が阪急トラベルサポート東京支店との団体交渉に出席したのは4月2日夜のことである。東京・港区のある貸し会議室。長いテーブルが中央に固めて並べられ、向き合う形で両サイドに10人ほどが座れる。組合側11人はそこで会社側を待った。私の出席については労働組合法第6条(注)に基づき、事前に組合側から会社側に通知してあったが、会社は文書で「認められない」などと回答していた。

 交渉の場に現れたのは東京支店の田中和男支店長ら4人。席に着くなり、自己紹介するでも名刺交換するでもなく、いきなり「週刊金曜日の出席は認められない。退席を!」などと声を発した無礼な男がいた。「あなたは誰ですか?」と私が問うても、まともに答えもしない。これが会社側代理人の伊藤隆史弁護士であった。以下、やりとりの要旨。

私:「(自己紹介後)こちらは労組法6条に基づいて交渉権限を委任され、出席している。認められないというあなたがたの法的な根拠を明らかにするべきでしょう」
伊藤:「労使慣行に反している」
私:「そんな法的根拠があるのか」
伊藤:「ある。慣行がルールだ。あなた(片岡)は関係ない」
組合側:「関係ないとは何か!委任しているから出席しているんじゃないか!」
私:「あなたは弁護士でしょ。慣行ではなく、労組法6条を拒否できる法的根拠があるなら出したらどうかと言っている」
伊藤:「とにかく退席を!でないと、交渉はできない」(これを繰り返す)
組合側:「それは団交を拒否するということか」
伊藤:「……」(会社側を促して席を立つ)
組合側:「団交拒否だ!不当労働行為ではないか!」

 この間、わずか数分。団交拒否を主導した無礼なこの男に対して、私は翌日(4月3日)に「抗議文および質問書」を出したが、回答拒否。さらに4月7日付で「抗議文および質問書」を出したが、再び回答なし。この男の所属する弁護士事務所は、太田・石井法律事務所(東京都千代田区)で、経営法曹界では有名なところらしい。調べてみると、なんと「みずほフィナンシャルグループ」のコンプライアンス(法令順守)ホットラインを担当している。悪い冗談のようだが、企業側と一体になって労働組合つぶしの法的サポートをする経営法曹界側の弁護士のやり口に対し、「コンプライアンスの徹底」を求めること自体が無理なのか。〈さらにつづく〉

 (注)労働組合法第6条 労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。

 (2009年4月16日・片岡伸行)

阪急トラベルサポートの横暴(1)

シジフォスの希望(29)

 疑問や文句があるのなら、なぜ本誌に言ってこないのだ。『週刊金曜日』2009年2月20日号に掲載した旅行添乗員たちの労働組合結成をめぐる記事に対して、取材に応じた組合支部委員長が事実上の解雇処分を受けた(3月18日)。組合つぶしの不当労働行為の疑いがあるだけでなく、言論の自由への挑戦でもある。

 全国に1万2000人近くいる旅行添乗員の9割ほどが「派遣」だという。社団法人日本添乗サービス協会(東京都港区)作成の冊子によると、1日の労働時間が12時間を超える勤務が大半にもかかわらず、平均年収は約236万円(2005年労働実態調査)で、「厳しい勤務内容と低い給与水準が将来に対する大きな不安に繋がっています」(同冊子)。

 そうした旅行添乗員の労働環境と待遇を改善し、誇りの持てる職業にしたいとの思いで、塩田卓嗣さん(46歳)は労働組合の結成に関わった。阪急交通社の子会社、㈱阪急トラベルサポート東京支店(東京都港区、田中和男支店長)に組合が結成されたのは2007年1月のことである。

 組合は会社側と交渉を重ね、過去2年にさかのぼっての雇用保険の加入などを認めさせた。三田労働基準監督署への「残業代未払い」申告もおこない、これを受けて同労基署は会社に「是正勧告」つまりは「残業代を支払え」と勧告。会社はこれに従わず、東京地裁での労働審判でも同じく「残業代を支払え」との決定が出されたが、これも無視。残業代の支払いをめぐっては現在、裁判になっている(その経緯は前述の本誌2月20日号に掲載)。そしてその本誌が発売された2月20日、会社に対して三田労基署から2度目の「是正勧告」が出された。しかし、会社は現在に至るまで無視したままだ。

 こうして組合側の攻勢が続く中、今回の問題は起きた。阪急トラベルサポート東京支店が、本誌の取材に応じた塩田卓嗣さん(全国一般東京東部労働組合阪急トラベルサポート支部委員長)を、事実上の解雇処分(アサイン〈仕事割り当て〉停止)にしたのだ。本誌4月3日号、同10日号の「アンテナ」欄などで報じ、NPO法人労働相談センターのWebサイトにある「旅行添乗員」コーナーでも紹介しているので、詳しい経過についてはそれらをご覧いただきたい。

 つまり、組合側の主張は行政と司法から認められ、会社側はそれを無視し続けている。追い詰められた会社側は紛争を恣意的に拡大させ、組合側の攻勢に歯止めをかけようという意図があるように見える。組合側は近く、東京都労働委員会に不当労働行為救済申し立てをおこない、解雇の撤回などを求めていく。この闘いには私も直接関わっているが、それについては次に述べる。〈つづく〉                                                                                   

(2009年4月15日・片岡伸行)