きんようブログ 社員エッセイを掲載。あの記事の裏話も読めるかも!?

ミサイルと人工衛星

シジフォスの希望(28)

「北のミサイル発射」という誤報が4月4日の午前11時前と午後0時16分ごろの2度にわたり流れた。最初は防衛省から、2度目は日本政府から。いずれも「誤探知」であったことがわかり、直後に訂正された。しかし、以下の事柄は誤報として報じられることはない。

 人工衛星の定義は「地球を最低2周する」ことだという。ミサイルなら大気圏外まで上昇した後、大気圏内に再突入して地上の攻撃目標に向けて落下する。人工衛星の場合は攻撃目標に向けて再突入する必要がないので、大気圏外の地球の周回軌道上に乗ることになる。さて、そこで問題。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が発射したのはミサイル?それとも人工衛星の打ち上げロケット?

 日本政府の発表(4月5日午前11時33分)に基づき、日本の新聞各紙は次のように報じた。北朝鮮は同日午前11時半ごろ、咸鏡北道花台郡舞水端里(ムスダンリ)のミサイル基地から「人工衛星」として準備していた長距離弾道ミサイルを発射。ミサイルからの落下物は同37分ごろ、秋田県の西約280キロの日本海上に1個が落下、もう1個が同43分ごろに日本の東約1270キロの太平洋上に落下したと見られる。ミサイルは同37分ごろに東北地方から太平洋へと通過したと推定している。

 日本政府は発表時「飛翔体」という言葉を使っているが、一方で自衛隊法に基づく「弾道ミサイル破壊措置命令」を初めて発令しているので、日本のマスコミが「北朝鮮ミサイル発射」「北のミサイル発射」などと断じているのは当然と言えば当然だ。

 一方、北朝鮮の国営朝鮮中央通信は同日午後、国家宇宙開発展望計画に従い、運搬ロケット『銀河2号』で人工衛星『光明星2号』を軌道に進入させることに成功したと、初めて公式に報道した。韓国政府も同日午後、打ち上げられたのはミサイルではなく人工衛星の打ち上げロケットであるとの見方を示した。ロシアもまたミサイルではなく「人工衛星ロケットと確認した」と発表している。

 武器としての弾道ミサイルと打ち上げロケットの基本構造は同じだが、先端に搭載するのが衛星か爆薬かの違い。爆薬を積んでいればミサイルだし、衛星を載せていれば打ち上げロケットと表現するのが通常だ。実際、4月5日付『ニューヨークタイムズ』紙も、「North Koreans  Launch  Rocket」(北朝鮮のロケット打ち上げ)と報じた。

 人工衛星の打ち上げロケットなら、日本でもついこの間(1月23日)、「H2A202型」ロケットを種子島宇宙センターから打ち上げたばかりだ。しかし日本政府はこれを「ミサイル」と発表していないし、マスコミも「日本のミサイル発射」などと報じてはいない。確かに、頭の上をロケットが通過するのは不愉快極まりないし、それを「ミサイル」と報じられれば命の危険も感じる。自衛隊が迎撃ミサイルを準備する映像をテレビなどで繰り返し見せられれば、誰だって恐くなる。

 北朝鮮のこれまでの行動を容認や擁護するつもりは毛頭ない。核弾頭を持つと言われるノドンの存在は東アジアの平和にとって脅威である。国連安保理決議1718号のことも承知しており、はるかに高度で膨大な量のミサイルを保持・使用し中東で殺戮を繰り返している大国の行動は規制しないのかなどと、ここで皮肉を言うつもりはない。しかし、打ち上げロケットとミサイルはやはり異なる。

 自衛隊は結局、「飛翔体」への迎撃(破壊措置)はやらなかったが、もしやっていたらどうなったのか。どうせ打ち落とせないだろうという見方もあるが、仮に人工衛星を軍事ミサイルで撃ち落とそうとしたら一方的な戦闘行為になってしまう。

 世界の人工衛星は5800個ほど打ち上げられており、米国とロシア(ソ連時代を含む)でその90%近く、日本は120個ほどで世界第3位だ。2009年2月12日にはロシアの軍事衛星と米国の衛星電話サービス会社の通信衛星が、人工衛星本体同士としては世界で初めての衝突事故を起こした。これはこれでぶっそうな代物だが、この人工衛星打ち上げロケットを迎撃ミサイルで狙った事例など聞いたことがない。

 人工衛星打ち上げロケットとミサイルを国民意識の中で混同させることで、日本政府は自衛隊法に基づく「破壊措置命令」を出しやすい環境を整えた。マスコミと地方自治体はそれに利用された。次の「飛翔体」が何であれ、国民の恐怖を背景に政府は迎撃に打って出るかもしれない。戦争の始まりである。 (2009年4月5日・片岡伸行)

ハレ晴レユカイダンス

4月から、また放映されている、アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」。エンディングテーマ、「ハレ晴レユカイ」ダンスが、YouTubeで、たくさんアップされている。SOS団の5人組が、高校の制服姿で教室で踊るダンス。世界のいろいろな国のいろいろな人たちが、コスプレして、踊っているのは、見ていても楽しい。

息子の友人の中学生の男の子は、NYブルックリンの自称オタクで、カンペキにダンスをマスター。自分で歌いながら、踊っているのをSkypeで見たが、なかなかのもの。

原作小説の版元である角川が、YouTubeで、「涼宮ハルヒの憂鬱」が許可なく流れるのを、黙認したせいだろうか。ハルヒは世界でもアニメファンに知られて、ファンが多いのである。他人の著作権を侵してはいけないけれど、ファンの心理として、自分の好きな面白いものを広く知ってほしいなあとも思うのも無理ない。そこを企業が大目に見たところ、流通して人気に火がついたのが、ハルヒの場合。

しかも、角川は、YouTubeの角川アニメチャンネルで、2006年放映のアニメを第1話から、無料で4月15日から公開するのだそう。いいですね。一般のYouTube放映時間は9分ほどなので、30分の1話を3分割で見ていたけど、やっぱり1話通しで見たいです。

タダで露出してしまうリスクと、流通することで、数え切れない人の目に触れて、宣伝になる効果。「ハルヒ」は、成功した例だと言われています。