編集長コラム「金曜日から」 編集長のコラムを公開しています。

徴用工問題

 今週号では韓国の「徴用工解決策」を特集した。私との対談(14~17ページ参照)で、ジャーナリストの青木理さんが紹介していた『世界』5月号の李鍾元・早稲田大学大学院教授のインタビュー「日韓逆転のなかの徴用工問題“解決策”」を読んだ。いろいろ示唆に富む内容だったが、「今回の尹(錫悦)大統領の動きを見ると、日韓関係を『未来志向』で立て直すと訴えつつ、彼の描く『未来』が『新冷戦的』であるのも気になります」という李教授の言葉が特に印象に残った。

 確かにそうだ。今回の解決策に関しては、まず北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)や中国の軍事的脅威に対抗するため、日韓、日米韓の結束が必要だとの認識が背景にあると思う。しかし、そのような思考に陥れば、最終的には対立しかない。金大中大統領はむしろ、東北アジアの平和地帯化を構想して日韓関係を改善し、南北首脳会談を実現させた。その先には日朝首脳会談もあった。「冷戦」が何ももたらさなかったことは歴史が証明している。(文聖姫)